上 下
17 / 34
気付かないままの恋

気付いてしまった恋

しおりを挟む
 ドニが、レミファの国にいたのは、二日間だけだった。
 レミファが、勤める店の他の商人に話をつけて、西の方へ連れて行ってもらえることになった。


「顔も、名前も知らないDomドムに、ラシを寝取られるのは、まだ我慢できるんだ。でも、顔も、名前も知ってるDomに、寝取られたら、俺、どうなってしまうか、わからない…」
 家から出る時、扉の前で、いきなりレミファが言い出した。

「『寝取られる』?」
 無邪気にドニは、聞いたこともない言葉を、レミファの広い背中に聞き返した。

 レミファは、ドニを振り返って、笑った。笑ってるのに、濃い緑の瞳は、今にも泣き出しそうに見えた。
「ごめんな。お前を、あの国から連れ出すべきじゃなかった」

 何も知らないまま、山と森しかない小さな国で、変わらない毎日に不平不満を言いながらも、しあわせな人生を送っただろう。


 ドニは、頭を振った。
「そんなこと言わないでください。俺、めっちゃ、レミファさんに感謝してます。これから、西の方へ行けるのも、楽しみです。それで、あの、えっと、あの~、」
 もごもご、言いながら、どんどん、顔が真っ赤っかになってゆく。
「俺っ、レミファさんに、聞きたいことがあるんですけどっ」

 レミファは首を傾げて、聞いた。
「何だ?」

 もごもご、ドニは聞いた。
「男の、ちんぽ入れられる穴って、どこですか?」
「は?」
 レミファは聞き返した。ドニは下を向き、もごもご、続ける。
「自分で探してみたんですけど、見付けられなくって…」
「――……お前、本当は男が、好きなのか?」
「いやっ、『男が好き』じゃなくてっ、好きなのが『男』だった、好き?好きなのかは、わかんないです…」


 、ドニは駆け出して、廊下を戻り、行き止まりで座り込んでしまった。

 「気持ちよかった?」と聞いて来るラシのろけた表情かおに、ウェリスの顔をドニは重ねてしまった。
 考えてみれば、Domとしての欲求不満が解消されたのも、ウェリスに見まちがったラシに命令したからだ。

 俺は、ウェリスと、あんなことしたいのか?ウェリスに命令したいのか?


 ドニは、わからなかった。――そう想うのは、「ウェリスを好き」だからなのか、「支配したい」というDomとしての本能の欲求でしかないのか。


「ごめんな、ドニ。付いていてやれば、よかったな。だいじょうぶか?」
 振り返ると、心配顔のレミファがいた。


 ドニは、「穴」のことを聞けば、見ていたことがバレる!と思って、レミファに聞けなかった。しかし、西の方へ行くことになって、レミファに聞かないままではいられなかった。


 レミファは、ドニの両肩に両手を置いた。
「ドニ。話を聞いてやりたいんだが、これからお前が世話になるヤツは、とっても時間に厳しい。出発の時間に遅れると、俺まで、とんでもなく怒られる。もう行こう」
「えええっ」
 真っ赤っかな顔を、ドニは上げた。

「半年くらいで戻れるだろ。その時、ゆっくり話そう」
 レミファに、ぽんぽんと、痛いほど両肩をドニは叩かれる。

 ドニは、レミファの両腕を掴んで、必死に聞いた。
「穴!穴は、どこですか?!それだけは教えて下さいっ!!」


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

おだやかDomは一途なSubの腕の中

phyr
BL
リユネルヴェニア王国北の砦で働く魔術師レーネは、ぽやぽやした性格で魔術以外は今ひとつ頼りない。世話をするよりもされるほうが得意なのだが、ある日所属する小隊に新人が配属され、そのうち一人を受け持つことになった。 担当することになった新人騎士ティノールトは、書類上のダイナミクスはNormalだがどうやらSubらしい。Domに頼れず倒れかけたティノールトのためのPlay をきっかけに、レーネも徐々にDomとしての性質を目覚めさせ、二人は惹かれ合っていく。 しかしティノールトの異動によって離れ離れになってしまい、またぼんやりと日々を過ごしていたレーネのもとに、一通の書類が届く。 『貴殿を、西方将軍補佐官に任命する』 ------------------------ ※10/5-10/27, 11/1-11/23の間、毎日更新です。 ※この作品はDom/Subユニバースの設定に基づいて創作しています。一部独自の解釈、設定があります。 表紙は祭崎飯代様に描いていただきました。ありがとうございました。 第11回BL小説大賞にエントリーしております。

お客様と商品

あかまロケ
BL
馬鹿で、不細工で、性格最悪…なオレが、衣食住提供と引き換えに体を売る相手は高校時代一度も面識の無かったエリートモテモテイケメン御曹司で。オレは商品で、相手はお客様。そう思って毎日せっせとお客様に尽くす涙ぐましい努力のオレの物語。(*ムーンライトノベルズ・pixivにも投稿してます。)

塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。 そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。

鬼上司と秘密の同居

なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳 幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ… そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた… いったい?…どうして?…こうなった? 「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」 スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか… 性描写には※を付けております。

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

見ぃつけた。

茉莉花 香乃
BL
小学生の時、意地悪されて転校した。高校一年生の途中までは穏やかな生活だったのに、全寮制の学校に転入しなければならなくなった。そこで、出会ったのは… 他サイトにも公開しています

家事代行サービスにdomの溺愛は必要ありません!

灯璃
BL
家事代行サービスで働く鏑木(かぶらぎ) 慧(けい)はある日、高級マンションの一室に仕事に向かった。だが、住人の男性は入る事すら拒否し、何故かなかなか中に入れてくれない。 何度かの押し問答の後、なんとか慧は中に入れてもらえる事になった。だが、男性からは冷たくオレの部屋には入るなと言われてしまう。 仕方ないと気にせず仕事をし、気が重いまま次の日も訪れると、昨日とは打って変わって男性、秋水(しゅうすい) 龍士郎(りゅうしろう)は慧の料理を褒めた。 思ったより悪い人ではないのかもと慧が思った時、彼がdom、支配する側の人間だという事に気づいてしまう。subである慧は彼と一定の距離を置こうとするがーー。 みたいな、ゆるいdom/subユニバース。ふんわり過ぎてdom/subユニバースにする必要あったのかとか疑問に思ってはいけない。 ※完結しました!ありがとうございました!

処理中です...