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暴飲暴食団との戦い(適当展開)

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「暴飲暴食!見つけ次第抹殺!」「暴飲暴食!見つけ次第抹殺!」

数千人規模の集団が叫んでいる。
彼らは暴飲暴食をこの世から無くすために暗躍する組織
、その名も『世界アルコール撲滅団』である。
彼らにとって酒は悪魔の飲み物であり、決して許される事のない悪行だったのだ………… -------
組織の構成員には様々な事情の者たちがいるが、多くが暴飲暴食により親しい人間を亡くしている者達である。
やがてリーダーのゼロの演説が始まった。

「我々は暴飲暴食を許さない」
静まり返った会場に彼の声だけが響き渡る。
「許してはならないものがあるからだ!それは金でも権力でもない!!それは愛だ!!!お前達の家族や友人を奪ったものは何だ?ただ酒を飲みたいからとお前達の家族を殺したものは何だ?」
そう言って彼は聴衆を見渡す。皆その目を見て背筋を伸ばす。彼らの目は真剣そのものなのだ。
「我々が憎むべき存在とは、自らの欲望のために他者の命を奪う悪魔どもの事ではないのか!?違うか!!」
(そうだー!!!そうだーっ!!!)(違いないぜ兄貴ぃいいい!!!)
拳を振り上げて叫ぶ者もいれば、涙ながらに訴えかける者もいる。
彼らの言葉はこの国において最も力を持つ者に届いていた。
しかしまだ足りない。もっと多くの力が必要だ。
(我々の力が足りぬばかりに今まで何人もの仲間達が死んでいった……だがもうそれも終わりだ!!私は誓ったのだ!必ず私の命に変えても彼らを根絶すると!!!)
そんなことを考えていたその時であった。
ドゴォオオオンッ!!という轟音と共に建物が大きく揺れた。そして何かが崩れ落ちるような音が聞こえる。
(なんだ一体?)
そう思った時、外から悲鳴のような叫び声が上がった。
慌てて外を見るとそこには信じ難い光景が広がっていた。
なんと街の中心部で巨大な竜巻が発生しており、それが街の建物を次々に破壊していたのだ。

「暴飲暴食!暴飲暴食!暴飲暴食!」

竜巻を従えながら行進しているのは『暴飲暴食団』の連中だった。
奴らは世界に暴飲暴食を広め、世界を征服することが目的の組織だ。『暴飲暴食団』の武力は凄まじく、すでに政府、警察、軍は壊滅させられている。
そしてその行進の先頭に立つのが『暴飲暴食団』のリーダーであるベラル師だ。

彼はあらゆるものを食い尽くすことでエネルギーに変える能力を持っており、自身の体重を増やし続けていた。まさに歩くブラックホールと言うにふさわしい人物である。
また、彼が身に纏うローブの奥深くでは無数の目が光っていた。これは彼が開発した『吸魔眼帯』と呼ばれるアイテムであり、身につけると周囲から魔力を吸収して自身の体を大きくすることができるというものだった。つまり今目の前にいる男は膨大な魔力を持っていることになる。
(なんてことだ……こんな時に……。まさか敵が現れるなど考えていなかったぞ)
『世界アルコール撲滅団』は総勢数百人ほどのメンバーしかおらず、『暴飲暴食団』の数に比べると圧倒的に戦力差があった。ゼロたちは自分たち以外の仲間がいないことに気づかなかったのだ。さらに言えば『世界アルコール撲滅団』も普段は一般人として生活しているため武装しておらず非戦闘員が多かったのだ。
一方『暴飲暴食団』は非情にも魔法を使って街を破壊しつつ進んでいる。彼らが手にする杖の中には魔物を倒した際に得られる結晶と同じものが埋め込まれているが故に強力な攻撃力を持っていたのも非常に厄介な点であると言えるだろう。さらに恐ろしいのはそれら一つ一つが全く連携することなく、勝手に暴れまわっているという事実にあった。
現在この混乱した状況の中で動かせる兵力はほとんど存在しないと言ってよい状態であったし、この場にたまたまいた少数の人員をもって立ち向かったところで被害が増えるだけだということは分かりきったことなのだ。
そんなゼロたちの想いを踏み躙るようにして状況は悪化の一途を辿っていく………… 暴風によって屋根に上がらされる者が続出し、建物に押し潰された者も続出した。

「あわわ…どうしよう?どうしよう?」
慌てるゼロにさっきまでの威厳はなかった。
またゼロと同じようにメンバー達も慌てふためき、もはや収拾がつかないように思われた。

その時メンバーとしては新入りであるアンドリューが叫ぶ。


「おい!誰かいないのか!?誰でもいいから戦えるやつは!?」
(確かにこのままだと私達は全滅してしまいますね…………それにしても人任せすぎではないですかゼロさん…………)
彼は戦闘部隊ではなく補給班にいたのだが、今は仕方ない。ゼロの指示を仰ごうとした。「誰かいませんか?誰かお願いします……」
(おいっ、なんか来たぜ~)
(あれってもしかして、さっき話題になってた女じゃないか?)
(俺より前に配属になったっていうあの子がリーダーじゃないのかよ……)
先程までとは違うざわつきを見せる人々。
なぜか注目されているのはリザの方だった。しかし彼女の場合注目を集めるにはある理由があるのだ。
「みんな落ち着いてください!!」
(((ひゃっ…….かわいい!)))彼女はその幼顔によく似合う可愛らしい服装をしていた。しかし服自体はかなり無残な姿を晒していた。元々ボロ布同然の衣装だったが暴飲暴食の効果により完全に千切れてしまっていたのだ。そのような状態で大声を出したものだから周囲の男性は鼻血を吹き出し失神する者や、「お母さん!ああいう小さい子に乱暴することはよくないことだって思うんだけど実は興奮しちゃうの……ねえ助けてもらえないかしら~」とつぶやく女性が現れたり、色々な意味で混乱が広がっている状態となっているわけである。
その間にも『暴飲暴食団』の行進が迫って来ている。
リザは意を決して叫んだ。

「私は『世界アルコール撲滅団』のリーダーリディアです!!皆さんのことは聞いています。今動ける方は少ないとは思いますけど私が命に代えてでも時間稼ぎをしますので少しでも逃げた方がいいと思います!」


それを聞いた途端ゼロは一目散に逃げ出していった。
呆気に取られたメンバー達であったが、間もなくほとんどのメンバーがゼロの後を追い逃亡した。
会場に残ったのはリザとその他数人のリザ信奉者のみであった。

「ここに残ったということは覚悟はいいわね?」
「当然です」

そしてついに『暴飲暴食団』の行進を率いるベラル師が会場にたどりつき、リザ達の目の前に立った。

「お前らが今回の獲物だ。今日は本当に運が良い日だよ。俺はつい最近この街に来たばかりで今までずっとこの辺りで活動を続けていたんだが、ようやくこの辺一帯を支配しようと思ってきたところなんだ。だからそこの女どもは俺たちへの捧げ物にしてくれってことで先に殺さずにここまで連れてきたんだよ。まあもう殺すことになると思うがな」
そう言いながらベラルは杖を構える。
リザも剣を構え直す。
「あなたたちのような下衆な連中に私の大切な人達を傷つけさせるつもりはないわ」
「ほぉ~、威勢の良いガキじゃねぇか。気に入ったぞ。だがすぐに泣き喚くようになるだろうなぁ。」こうして戦いが始まった。
魔法による風圧攻撃、重力操作など様々な技を駆使してくるベラルに対してリザは剣術のみで対抗していく。一見互角の戦いに見える両者であるが、徐々に追い詰められていくのはやはり実戦経験の少ないリザであった。
「ほう。なかなか頑張るがそろそろ限界みたいだな?」
「えぇ……あなたの魔法も強力だけど……私にはまだ奥の手が残っているわ……」
「へーそりゃ楽しみだなァ!ならこっちからも行くぜッ!!」
ベラルは自身の杖を地面に叩きつけると強烈な衝撃波が発生した。
「きゃあっ!!!」
まともに喰らい吹き飛ばされてしまうリザ。
壁に激突する寸前に何とか受け身を取ったもののかなりのダメージを受けてしまったようだ。
そこに追い討ちをかけるようにしてベラルの攻撃が続く。
今度は杖を振り回し巨大な竜巻を発生させ始めた。

「これで終わりにしてやるぜ!死ねェエエッ!!!」
「…………させない……まだ諦めない…………私にはやるべきことがある……」
「無駄だ!何度やっても同じこと…………ん?」
「私にも守りたいものがある!負けられないのよォオオオッ!」
リザが手を振り上げると彼女を中心に凄まじい光が溢れ出し、やがてその光が巨大な刃となり実体を帯びていく。
「こ、これは光の究極奥義セイバーオブライティング⁉︎こ、こんなもを食らってしまったら…」
「あなたの野望もここまでよ…ベラル!」
リザが手を振り下ろすと光の刃が飛びベラル師に突き刺さった…

かに見えたがベラル師はなんとその刃を食べている!バリバリと音を鳴らして光の刃を完食すると、ベラル師の体からこれまでとは比べ物にならないほどの力が溢れ出していた。

「こんなものを食らってしまったらますます最強になってしまうなあ」
「し、信じられない」
リザはあまりの絶望に地面に崩れ落ちていた。
「これが暴飲暴食の力だ!大変美味かったぞ!」
(お父さん、お母さん、ごめんなさい…)
ベラル師はゆっくりとリザの方へ迫っていた…


その時だった。突然ベラルの動きが止まる。
ベラルの首筋から血が流れ始める。
「ぐっ…….一体誰が……?お前たちは逃げなかったのか……?」
そこには『世界アルコール撲滅団』のメンバーがいた。
「残念でしたねお兄さん。私たちも『世界アルコール撲滅団』の一員ですよ。リディア様をみすみす殺されてなるものですか。私たちはあなたのような悪逆非道な人間を許さないのです」
「ふむ、よくやった。後は我々に任せて下がっていろ」
「しかし……あいつはとんでもない力を持っています!気をつけてください!」
「大丈夫だ。我々は強い」
リーダーらしき男は静かに答えた。
「あんたらは……?」
「我らは『世界アルコール撲滅団』、その名は聞いたことはあるはずだ」
「『世界アルコール撲滅団』だと……?まさかそんな組織がどうしてここにいるんだ?そもそもどうやって俺の位置を知ったんだ?」
「我々の組織は世界中のあらゆる情報に精通しておりましてね。今回たまたまあの酒場での事件を聞き付けたわけなのですが、どうせならば直接介入してしまおうと思い参上したという訳ですね」
「ふざけるなああ!!俺はこの街を支配して全てを手に入れる男なんだあ!!!」
ベラルは怒り狂いながら暴れるが、既に満腹状態の彼にはもう戦う力は残っていなかった。
「では、行きますか」
「そうだな」
そして二人の男が同時に動き出した。

「ぬうぅッ……貴様らはいったい何者なんだあァアアッ!!!」
二人は全く同じタイミングでベラルに飛びかかった。
「そういえば自己紹介がまだでしたね。私はイリスと言います」
「我輩の名はギル。この世で一番の剣士である」「二人とも偽名ですけどね。でもまぁいいでしょう。目的は果たしましたので、さようなら。」
イリスは手刀を放ち、ベラルの首を落とした。
「少しやりすぎたか……?」

「いえ、大丈夫ですよ。それより早く撤収しますよ。このままじゃまた憲兵に追われてしまいますからね」
こうして謎の二人組によりベラル・ベラルディ兄弟は倒された。


—————————————————————

その後…

ベラル師が倒されてから早2ヶ月。今なお世界には暴飲暴食の傷跡が残っていた。しかしながら人々は力を合わせて世界の復興に尽力し、まだまだ先の見えない状況ではあるが、彼らの顔には笑顔が溢れていた。そんな彼らの様子を見てゼロはあらためて自分が成し遂げたことの大きさを実感し、これまで犠牲になった仲間達のことを胸に留めながら未来へ歩んで行くことを決めたのであった。

fin.
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