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第37話 私のことをよく知っている知らないおじさん
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あのおじさん(Kさん)に初めて出会ったのはいつのことなのか、私にも分からない。
今思い出せる一番古い出会いは、十数年前、私が地元の半導体工場に勤めていた時のこと。
私にとっては初めましてだったのだが、どうやらKさんは私をよく知っているようだった。
私のことを下の名前にちゃん付けで呼び、親しげにいろいろな話をしてくる。年齢は五十代半ば~後半だろう。気さくでとても雰囲気が良い。工場内で時々会うことがあったので、いろいろお喋りをしたのを覚えている。
私の両親の友人かと思ったのだが、両親に訊いてもKさんのことは知らないと言っていた。
それから何年か経ち、都合でその半導体工場を辞めて職業訓練校に行くと、なんとKさんがいた。
そこにKさんがいたことにも驚いたが、Kさんがあの半導体工場を私と同じタイミングで退職していたことの方が意外だった。
もっとも、あの時は工場の業績が悪化している時期だったので、Kさんも私と同様に先行きが不安になって転職を決意したのかもしれない。
そして職業訓練校を卒業し、職探しのためにハローワークに行くと、またそこでKさんに会った。『この歳になると、なかなか決まらなくてねぇ……』などとぼやいていた。
それからまた何年か経ち、あれは確か六年前だったと思う。伯父が亡くなり、私も手伝いのために母親の実家に行っていたのだが、そこでなんとあのKさんがご焼香にやって来た。
『あれ? 〇〇ちゃん(私のこと)も来てたの?』と訊かれ、『私の伯父なんです』と答えると、『あ~そうだったんだね』とKさんは少し驚いていた。 伯父とはそれなりに付き合いがあったようだ。
それにしても疑問なのはKさんの年齢である。あくまで私の見立てでしかないが、初めて出会った時点で既に五十代半ば~に見えた。
だが、ご焼香に来た時に話をしたら、ある資格を取るために勉強を始めたとかで『まぁ、五十過ぎての手習いだよ』などと笑いながら言っていた。
ただ単に年齢より老けて見えるタイプなのかもしれないが、私が思っていたより実年齢は若かったようだ。
Kさんに会ったのは伯父が亡くなった時で最後だが、また忘れた頃にどこかでばったり再会するのではなかろうか?
好感の持てる人好きな人物だが、神出鬼没でどうにも小気味の悪いおじさんである。
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