不思議小話 ピンキリ

そうすみす

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第33話 勘違いですよ。絶対に。

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 先日、久々に隣町のN町教会へ行った。

 そこで、毎月初めに出張してくるM町教会のT伝道師でんどうし(牧師見習いのような人)が来ていた。まだ若いが、やはり牧師を目指しているとあって落ち着いている。

 礼拝後、皆とお喋りをするうち、教会員の一人がT伝道師と私を見て、『そう言えば二人、会うの初めてだっけ?』と訊いてきた。

 私は何度かM町教会にも行ったことがあり、また十八年前にも当時小学生だったT伝道師にそこで会ったことがあるので、それも含めれば四~五回は会っている。

 T伝道師が『あちこちで何度かお会いしてますね』と答えた。

 ??? あちこち、、、、で?

 確かにフィールドワークも兼ねてあちこちの教会の礼拝に出没しているのは事実だが、私の記憶が正しければ、T伝道師と顔を合わせた場所はN町とM町の教会の二ヵ所のみである。

 私の記憶違いだろうか? あるいはまさかドッペルさん?

 それから愛餐会あいさんかい(ちょっとした会食)を終え、片付けをした後、少し時間ができて、T伝道師が話しかけてきた。

 「僕、勘違いしてました。あなたが僕のブログにコメントをくださったので、なんかあちこちでお会いしたような感覚になっていたみたいです」

 「ああ……そうですか。それなら安心しました」

 私は引きった笑顔で答えたが、どうも釈然しゃくぜんとしない。少し長めのコメントを二回投稿したことはあるが、そんな勘違いをするものなのだろうか?

 高校生の頃、あるクラスメイトに『この前~で見かけたよ』や、『昨日、そうちゃんと同じ名前の人が殺されたってニュースでやっててびっくりしちゃったぁ』などと言われたことがあったのを思い出した。

 前者はともかくとして、後者の殺人事件に関しては他のクラスメイトも私も誰一人として知らないニュースだったので、おそらく本人の妄想か思い込みだったのだろう。

 そのクラスメイトはどちらかと言うと、私に対して普段から敵対心を抱いていたようなので(理由は不明である)、ひょっとしたら願望的発言だったのかもしれない。よもや殺意まで持たれていたとしたら恐ろしいことだが。

 そんなこともあり、ドッペルさん存在説が浮上するのは私の人生で二度目である。
 
 今回は全く悪意も敵意も殺意もない、むしろ純粋に友好的な人物の発言のため、なおさら恐怖を感じる。

 神聖な教会にドッペルさんが現れたとも思いたくはないので、T伝道師の勘違いであることを願う。

 そう。T伝道師、勘違いですよ。絶対に。
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