不思議小話 ピンキリ

そうすみす

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第31話 寝言

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 何週間か前の夜のこと。

 いつものように、母親が『じゃあ寝るねー。おやすみー』と言って部屋に行った。

 私は『静かに寝てよ』と言った。

 わざわざこんなことを言ったのには理由がある。ほぼ毎晩、母親は寝言を言うのだが、笑っていたと思ったら急に怒り出し、全地を揺るがすような悲鳴や怒鳴り声を上げるからだ。

 ご近所に聞こえたら冗談抜きで通報されてしまいそうだ。そうでなくても、寝ている時にあんな大声を出されれば、父親も私も物凄くびっくりする。はっきり言って心臓に悪い。

 私がそう言ったら、母親は『何言ってんの。あんただってうるさいくせに』と言い返してきた。

 私は寝言は一切言わないとまでは断言できないが、少なくとも、母親のようなあんな大声を出せば自分で気付き、絶対に目が覚める。

 『え? いつも静かに寝てるけど? 猫みたいにスヤスヤと』と私。

 『よく夜中に首を絞められてるみたいに、ウーウー唸ってるでしょ』。

 Σ( ̄□ ̄|||)!!!Σ( ̄□ ̄|||)!!!Σ( ̄□ ̄|||)!!!

 
 
 社会人になって二、三年目の頃、確かに私は週に三~四回の頻度で金縛りに遭っていた。顔を覗き込まれたり、正体不明の小動物の気配がしたり、耳元で何者かに囁かれたり、それに体の中から引っ張り出されて連れて逝かれそうになったことも二回あった。

 元々、あまり気にしない性格のお陰か、深く悩みもしなかったため、それらが原因で精神を病んだことはなかった。自然災害を除けば、幽霊や妖怪より生きている人間の方が何倍も恐ろしいということも知っていたので。

 それはさておき、現在ではほとんど金縛りもない。せいぜい月に一回程度と、物足りなさを感じるほどに少なくなった。彼らは今も元気だろうか? と気になることもある(なんでやねん?)。

 そんな物足りなくも平穏な夜を送っていたはずなのに、私の記憶できない間に、また怪異が襲ってきているようだ。 

 そうは言っても、以前と違い自分で認識できていないので、あの時よりもさらに低ストレスである。今回も特段思い悩むことはないだろう。
 
 けれども、やはり少しは気になる。就寝中、一体全体現在の私は何に苦しめられているのだろう? 寝る時に定点カメラでも仕掛けようかと考えたが、今のところその勇気もない。何か映り込んでしまっても怖いので。

 稀に、これといった病気もない健康な若者が、就寝中に突然死してしまう話を聞くが、もしかしたら霊的なものの仕業なのだろうか?

 私もこれまでに三回肉体から出てしまった経験があるので(うち一回は誤って自分で :;゙゚''ω゚''):用心しようと思う。
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