不思議小話 ピンキリ

そうすみす

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第29話 死刑囚の火葬場

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 前話で紹介したゴミ処理施設の近所に、死刑囚専用の火葬場があるらしい。

 そんな話を、何年か前に両親から聞いたことがあった。両親に話した人物もまた聞きだったようで、どこの誰が最初にそんなことを言い出したのかは分からないが、私の住む田舎の山中なら、何があっても不思議ではなかった。

 人家の無い山林に、悪質な業者が産業廃棄物等を不法投棄している、などという話もよく聞くので、そういった世から好まれない施設が置かれている可能性も十分にあるのだ。

 母親が子供の頃など、少し林の中に入ると、木の枝に焦げ茶色の干乾ひからびた物体がれ下がっていることもあったらしい。

 その頃はまだ水洗よりみ取り式のトイレが多かったので、おそらくは汲み取り業者が処理コスト削減のために、集めた排泄はいせつ物を田舎の山林にブチけた成れの果てだったと思われる。垂れ下がっていた物体はトイレットペーパー(あるいは新聞紙?)だったのだろう。

 それはさておき、火葬場の件は気になったので、ある日そのゴミ処理施設周辺を探し回ってみた。

 雑木林や草地や工事現場、それに某企業が所有するサーキット場はあったが、火葬場と思しき建物はどこにも見当たらなかった。

 私が思うに、やはり都市伝説的な話なのだろう。そもそも、死刑囚の遺体をわざわざこんな辺境の地に運ぶ手間と時間とコストを考えると、かなり効率が悪い。それよりは最寄りの火葬場に依頼した方が遥かに簡単である。

 しかしながら、丸っきり何もない状況から噂は生じまい。何かしら元となる出来事等があったのではなかろうか?

 例えば、そのゴミ処理施設。よもや、人知れず誰かが死刑囚の遺体を運び込んで、ゴミもろとも焼却場に投げ込んでいたりとか……( ゚Д゚)

 あくまで私個人の勝手な想像である。いくら死刑囚でも、遺体をそんなぞんざいに扱うことはさすがにないと思いたい。

 それにしても、そのゴミ処理施設の近くのポルノビデオ(今はDVD?)の自販機が未だに設置されていることには驚きである。私が知る限りでは、もう二十年以上そこにある。

 何でもネットで視聴できるこのご時世に流行らないのでは? とも思ったが、ポルノサイトにはおかしなウイルスが仕込まれていたり、高額な請求を吹っ掛ける悪質なものもあると聞く。

 これに関しては、オフラインで鑑賞した方が安全なのかもしれない。

 ……と、死刑囚の火葬場から、少し話が飛んでしまったが。
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