不思議小話 ピンキリ

そうすみす

文字の大きさ
上 下
29 / 41

第29話 死刑囚の火葬場

しおりを挟む
 前話で紹介したゴミ処理施設の近所に、死刑囚専用の火葬場があるらしい。

 そんな話を、何年か前に両親から聞いたことがあった。両親に話した人物もまた聞きだったようで、どこの誰が最初にそんなことを言い出したのかは分からないが、私の住む田舎の山中なら、何があっても不思議ではなかった。

 人家の無い山林に、悪質な業者が産業廃棄物等を不法投棄している、などという話もよく聞くので、そういった世から好まれない施設が置かれている可能性も十分にあるのだ。

 母親が子供の頃など、少し林の中に入ると、木の枝に焦げ茶色の干乾ひからびた物体がれ下がっていることもあったらしい。

 その頃はまだ水洗よりみ取り式のトイレが多かったので、おそらくは汲み取り業者が処理コスト削減のために、集めた排泄はいせつ物を田舎の山林にブチけた成れの果てだったと思われる。垂れ下がっていた物体はトイレットペーパー(あるいは新聞紙?)だったのだろう。

 それはさておき、火葬場の件は気になったので、ある日そのゴミ処理施設周辺を探し回ってみた。

 雑木林や草地や工事現場、それに某企業が所有するサーキット場はあったが、火葬場と思しき建物はどこにも見当たらなかった。

 私が思うに、やはり都市伝説的な話なのだろう。そもそも、死刑囚の遺体をわざわざこんな辺境の地に運ぶ手間と時間とコストを考えると、かなり効率が悪い。それよりは最寄りの火葬場に依頼した方が遥かに簡単である。

 しかしながら、丸っきり何もない状況から噂は生じまい。何かしら元となる出来事等があったのではなかろうか?

 例えば、そのゴミ処理施設。よもや、人知れず誰かが死刑囚の遺体を運び込んで、ゴミもろとも焼却場に投げ込んでいたりとか……( ゚Д゚)

 あくまで私個人の勝手な想像である。いくら死刑囚でも、遺体をそんなぞんざいに扱うことはさすがにないと思いたい。

 それにしても、そのゴミ処理施設の近くのポルノビデオ(今はDVD?)の自販機が未だに設置されていることには驚きである。私が知る限りでは、もう二十年以上そこにある。

 何でもネットで視聴できるこのご時世に流行らないのでは? とも思ったが、ポルノサイトにはおかしなウイルスが仕込まれていたり、高額な請求を吹っ掛ける悪質なものもあると聞く。

 これに関しては、オフラインで鑑賞した方が安全なのかもしれない。

 ……と、死刑囚の火葬場から、少し話が飛んでしまったが。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

限界集落

宮田 歩
ホラー
下山中、標識を見誤り遭難しかけた芳雄は小さな集落へたどり着く。そこは平家落人の末裔が暮らす隠れ里だと知る。その後芳雄に待ち受ける壮絶な運命とは——。

歩きスマホ

宮田 歩
ホラー
イヤホンしながらの歩きスマホで車に轢かれて亡くなった美咲。あの世で三途の橋を渡ろうとした時、通行料の「六文銭」をモバイルSuicaで支払える現実に——。

だんだんおかしくなった姉の話

暗黒神ゼブラ
ホラー
弟が死んだことでおかしくなった姉の話

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

【⁉】意味がわかると怖い話【解説あり】

絢郷水沙
ホラー
普通に読めばそうでもないけど、よく考えてみたらゾクッとする、そんな怖い話です。基本1ページ完結。 下にスクロールするとヒントと解説があります。何が怖いのか、ぜひ推理しながら読み進めてみてください。 ※全話オリジナル作品です。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

処理中です...