不思議小話 ピンキリ

そうすみす

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第23話 血塗られた通学路

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 毎年、この暑い季節になると、思い出すことがある。

 実際、あまり記憶がさだかではないが、小学校低学年の頃だったと思う。

 小学校の周囲が杉林で、その中のせまくてデコボコな舗装ほそう道路が通学路だった。

 ある朝、いつも通りそこを歩いていると、異臭がしてきた。

 牧場があるので、よく肥やしのにおいがすることはあったが、この時は違っていた。

 何か生モノが腐ったような、いわゆる腐敗臭だったのだ。

 同級生の何人かが騒ぎながら、杉林の中をのぞき込んでいた。

 私も彼らと一緒に見てみたが、何があるのか分からない。

 そのうち、同級生の男子二人が、悲鳴のような声を上げながら(半分楽しんでいた?)、杉林からダッシュで飛び出してきた。

 「あっちに、デカい犬の死骸しがいがある!」

 飛び出してきた男子の一人が言った。

 すると何人かが、行って見てみようと言い出した。臭いのであまり気が進まなかったが、私も同級生数人と一緒に杉林に入り、ガサガサと道なき道を歩いて行った。

 それほど奥ではなかった。通学路から十数メートル程度入ると、大量のはえがブンブンと飛び回っている場所に辿たどり着いた。

 形容しがたいほどの悪臭。それでも我慢して近付くと、確かに大きな黒い動物の死骸があった。

 かなり腐乱していたが、多分、犬だったと思う。

 その日だけでなく、この通学路はしばしば腐敗臭がしていた。

 酷い時は、臓物ぞうもつか何かよく分からない赤黒い肉塊にくかいが、道路のあちこちにぶちまけられていたことも何度かあった。

 少し気持ち悪いなとは感じていたものの、私はまだ十歳にもなっていない子供だったので、それほど深く考えてはいなかった。(←単なるおバカ?(;^_^A)

 
 最近になって、その話を友人にしたら、売れ残ったり繁殖能力のなくなった犬や猫が遺棄いきされていたのではないか、と言った。

 夜中に人目をしのんで悪質ブリーダーか誰かがやって来て、動物や謎の肉塊を遺棄していく。想像すると不気味である。
 
 まさか人間の死体までてられたりはしていなかったと信じているが、何かと不都合な物を処分するには、昼間でもあまり車も通らないあの杉林はおあつらえだったのかもしれない。
 
 あの道が通学路だと知ってか知らずかは分からないが、どちらにしても許し難い行為だ。

 現在では、あの杉林があった場所は住宅街になっており、小学校の校舎こうしゃも新しく建て直され、小中一貫いっかん校となっている。

 あの得体えたいの知れない気持ち悪い光景を、今の子ども達が目にする心配がなくなったのは幸いである。
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