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第21話 シカバネの行方
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確か五、六年前の、五月中旬のこと。
父親が、福島県某所の土地へ草刈りに行った。
その土地は、将来この一帯は拓けて街になるだろうと期待して、両親がお店を経営していた場所なのだが、残念ながら予想は外れ、途中で経営が厳しくなったためにやめてしまった。
お店として使用していた建物はそのまま残っているが、最寄りのコンビニまで車でも一時間以上はかかるほど辺鄙な場所にある。某秘境駅からは徒歩でも行けるが。
荒れるとイタズラ等をされる可能性もあるので、父親が時々行って手入れをしているのだ。
その日の午前中、父親が行くと、店の前に鹿の死骸があった。
標高が高い場所とはいえ、昼間はそこそこ気温が上がるはず。それでも、まだ腐敗していないフレッシュな状態だったので、おそらく前の晩にでも車にはねられたばかりなのだろう。
道路には、その鹿のものらしい内臓も少し飛び散っていた。
まったく……よりにもよって、なんでうちの土地で死んでるんだろう。
道路上であれば、道路管理者か誰かが片付けてくれるが、個人の敷地内となると、そうも行かない。
それでも、さすがにまた道路へぶん投げてやれとは思わず(重かったということもあり)、仕方なく店の敷地内に穴を掘って埋めることにした。放置して腐敗でもしたら、もっと悲惨なことになるので。
スコップがなかったので、つるはしで固い地面を地道に掘り、かなり苦労した末、なんとか鹿一頭が収まりそうな穴になった。
ズルズルと引きずり、どうにか鹿を穴の中に落とし込む。……が、死んで硬直していたため、脚がピーン! と突っ張り、穴から飛び出してしまった。
鹿の体の向きをあっちへ変えこっちへ変え、これまたかなり苦労した末、やっと脚がはみ出すことなく埋めることができた。
思いのほか重労働だった。一人で鹿一頭を埋めるとは、こんなにも大変な作業だったのだ。
草刈りをする予定だったが、あまりにも疲れたので、この日はそのまま帰ることにした。
翌日また行ってみると、なんと鹿を埋めた部分が掘り返されており、死骸がなくなっていた。
引きずった跡があり、それは店の裏山の急斜面へと続いている。
熊か何かが臭いを嗅ぎ付けて、掘り起こして持って行ったのだろうと思ったが、それにしては変だった。
昨日、間違いなく軒下に戻したはずのつるはしが、掘り起こされた穴の横に置いてあったのである。
野生動物ならば道具は使わない。そうなると、これは一体何者の仕業なのだろう?
裏山の斜面を見上げてみたが、猿が何頭かいただけで、その猿達もこちらに驚いて、奥へと逃げていってしまった。
不気味さはあったものの、今日こそは、と草刈りを終えてから、もう一度裏山の方を見たが、やはり変わった動物はいなかった。
この話の後に、父親はこう言っていた。
あんなに苦労して埋めたのに……どうせなら、埋める前に持って行ってほしかった、と。
父親が、福島県某所の土地へ草刈りに行った。
その土地は、将来この一帯は拓けて街になるだろうと期待して、両親がお店を経営していた場所なのだが、残念ながら予想は外れ、途中で経営が厳しくなったためにやめてしまった。
お店として使用していた建物はそのまま残っているが、最寄りのコンビニまで車でも一時間以上はかかるほど辺鄙な場所にある。某秘境駅からは徒歩でも行けるが。
荒れるとイタズラ等をされる可能性もあるので、父親が時々行って手入れをしているのだ。
その日の午前中、父親が行くと、店の前に鹿の死骸があった。
標高が高い場所とはいえ、昼間はそこそこ気温が上がるはず。それでも、まだ腐敗していないフレッシュな状態だったので、おそらく前の晩にでも車にはねられたばかりなのだろう。
道路には、その鹿のものらしい内臓も少し飛び散っていた。
まったく……よりにもよって、なんでうちの土地で死んでるんだろう。
道路上であれば、道路管理者か誰かが片付けてくれるが、個人の敷地内となると、そうも行かない。
それでも、さすがにまた道路へぶん投げてやれとは思わず(重かったということもあり)、仕方なく店の敷地内に穴を掘って埋めることにした。放置して腐敗でもしたら、もっと悲惨なことになるので。
スコップがなかったので、つるはしで固い地面を地道に掘り、かなり苦労した末、なんとか鹿一頭が収まりそうな穴になった。
ズルズルと引きずり、どうにか鹿を穴の中に落とし込む。……が、死んで硬直していたため、脚がピーン! と突っ張り、穴から飛び出してしまった。
鹿の体の向きをあっちへ変えこっちへ変え、これまたかなり苦労した末、やっと脚がはみ出すことなく埋めることができた。
思いのほか重労働だった。一人で鹿一頭を埋めるとは、こんなにも大変な作業だったのだ。
草刈りをする予定だったが、あまりにも疲れたので、この日はそのまま帰ることにした。
翌日また行ってみると、なんと鹿を埋めた部分が掘り返されており、死骸がなくなっていた。
引きずった跡があり、それは店の裏山の急斜面へと続いている。
熊か何かが臭いを嗅ぎ付けて、掘り起こして持って行ったのだろうと思ったが、それにしては変だった。
昨日、間違いなく軒下に戻したはずのつるはしが、掘り起こされた穴の横に置いてあったのである。
野生動物ならば道具は使わない。そうなると、これは一体何者の仕業なのだろう?
裏山の斜面を見上げてみたが、猿が何頭かいただけで、その猿達もこちらに驚いて、奥へと逃げていってしまった。
不気味さはあったものの、今日こそは、と草刈りを終えてから、もう一度裏山の方を見たが、やはり変わった動物はいなかった。
この話の後に、父親はこう言っていた。
あんなに苦労して埋めたのに……どうせなら、埋める前に持って行ってほしかった、と。
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