不思議小話 ピンキリ

そうすみす

文字の大きさ
上 下
16 / 41

第16話 体感!! NZ怪紀行②

しおりを挟む
 NZニュージーランドの南島で二番目に大きい都市ダニーデンに住んでいた時の体験。

 坂が多かったが、とても住みやすい街で、約半年間滞在していた。

 そこで時々、ちょっと変わった人を見かけることがあった。

 歩きながら、誰に向かってでもなく大声で『Stupid! Damn it!(莫迦野郎! こん畜生!)』と叫ぶKiwiキーウィの中年男性である。

 最初は恐かったが、道でれ違う時は普通に『Hello』と挨拶をしてくれて、襲いかかってくるような気配もなかったので、そのうち罵声ばせいが聞こえても気にしなくなった。

 住んでいたフラット(シェアハウスのようなもの)のオーナーAさんにその話をしたら、『何か鬱憤うっぷんがあるのかしらねぇ? いつもイライラしていたら病気になっちゃうよね』と言っていた。

 Aさんは五十代後半の日本人女性で、オタゴ大学の免疫めんえき学科で研究員として働いている。なので、赤の他人であっても、そういった心配をしてしまうのだ。

 あのStupidおじさん、こんなストレスフリーな国でイライラしているようでは、もし日本の都市部に住んだら、一日も持たずにストレス死するのではなかろうか? 日本に行く予定はないだろうけど。

 ある日、Aさんとスーパーへ買い出しに行った帰り道のこと。

 米や果物や牛乳等の重量物を二人で手分けして持ち、坂を上ってフラットへ向かっていると、前方にStupidおじさんが歩いていた。今のところ静かだ。

 珍しく落ち着いてるなぁと感心していると、背後から『ちょっとごめんよ』と若い男性の声が聞こえた。

 重量物を持って坂道を上っている私達は歩くのが遅いので、『すみません』と言って避け、後ろの男性を先に行かせることにした。

 ―――あれれ?

 Aさんと私は首をかしげた。声がしたはずなのに、後ろからは誰も来ないのだ。

 空耳ではなかったと思う。Aさんにも聞こえたのだから。

 それから間もなくして、前を歩いていたStupidおじさんが何かにつまずいたようだった。

 転びそうになったが持ちこたえると、次は横へよろけた。

 「Stupid! Damn it!」 

 また叫んでいる。でも、何か様子が変だ。まあ、いつも変なのだが、なぜか不自然にバランスを崩しているのである。

 HAHAHA、という小さく短い笑い声の後、Stupidおじさんのバランスが戻った。

 「Stupid! Damn it!」

 Stupidおじさんが前方に向かってまた叫ぶ。

 いつも罵声を飛ばしているのは、正体不明のアレ、、から頻繁ひんぱんに嫌がらせを受けているせい? 姿が見えなかったけど。

 科学者のAさんも、この不可解な現象にはさすがに驚いていた。

 大小含めれば、およそ百メートル置きに教会があるにもかかわらず、ああいう良からぬ何かがうろついているようだ。

 幸い、Aさんも私も謎の透明人間アレにちょっかいを出されたことは一度もなかった。

 
 ●お米はオーストラリア産を食べておりました。日本米のように程良い粘り気があり美味しかったです(⌒∇⌒)b
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

限界集落

宮田 歩
ホラー
下山中、標識を見誤り遭難しかけた芳雄は小さな集落へたどり着く。そこは平家落人の末裔が暮らす隠れ里だと知る。その後芳雄に待ち受ける壮絶な運命とは——。

歩きスマホ

宮田 歩
ホラー
イヤホンしながらの歩きスマホで車に轢かれて亡くなった美咲。あの世で三途の橋を渡ろうとした時、通行料の「六文銭」をモバイルSuicaで支払える現実に——。

だんだんおかしくなった姉の話

暗黒神ゼブラ
ホラー
弟が死んだことでおかしくなった姉の話

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

【⁉】意味がわかると怖い話【解説あり】

絢郷水沙
ホラー
普通に読めばそうでもないけど、よく考えてみたらゾクッとする、そんな怖い話です。基本1ページ完結。 下にスクロールするとヒントと解説があります。何が怖いのか、ぜひ推理しながら読み進めてみてください。 ※全話オリジナル作品です。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

処理中です...