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第15話 体感!! NZ怪紀行①
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WHでNZに滞在していた頃の話。
一月半ば、NZ南海のスチュアート島を訪れ、民宿に泊まった。
五十歳ぐらいのKiwi(NZ人の愛称)男性の民宿のオーナーが、夕飯後にペンギンを見に行こうと誘ってくれた。
メンバーはその日の宿泊客インド人カップルと、やはりWHで来ていた二十代の日本人女性、私、それにそのオーナーの五人である。
夜の九時頃に出発した。まだ夕暮れ時(日没は十時過ぎ)で、かなり風があった。そして森……というか、ほぼ密林の小径を歩いて行った。
南半球なので季節は真夏。そこそこ南極に近いとあって、日本の真夏のような暑さではないが、少し風が強くても、薄手の長袖で丁度良い程度の気温だった。真冬は相当寒いだろうに、シダ植物が元気良く生い繁っている光景は奇妙である。恐竜が出てきてもおかしくない。
その日は天気が良く、ラッキーだった。と言うのも、スチュアート島は一年の約三分の二は雨だと言われているからである。
しばらく行くとオーナーが立ち止まり、『あそこにいる』と指差した。
斜面下は波が打ち寄せている。その波に揺られて、薄暗くなってきた中、小さな黄色い光がたくさん見えた。ペンギンの目である。イエローアイドペンギンだ。
『もっと近くで見てみよう』と、オーナーはさらに私達を小径の先へと案内する。
砂浜が見えてきた。たくさんの小さなペンギン達がヨチヨチと歩き、海へ入ろうとしているところだった。
ペンギン達を驚かせないように、私達は砂浜へは出ず、シダ植物に隠れながら静かに観察した。この頃にはかなり日も傾いてきたが、ペンギン達のシルエットはよく見えた。
その距離は約十メートル。動物園や水族館ではなく、野生のペンギンをこんなにも間近で見られるのは感動ものだった。
しばし、海へ向かうペンギン達に魅入っていると、その群れの中に、少し大柄の変わった形のペンギンが現れた。
別の種類のペンギンが間違えて紛れたのかな? と思ったが、何かが違う。そのシルエットを見る限り、フォルムも歩き方も、そもそもペンギンではないのだ。
イエローアイドペンギンより少し背が高いので、身長は一メートル弱だろう。長い毛がボサボサと生えた頭と二本の腕、脚があり、やや前屈みだが二足歩行で、ペンギン達と一緒に海へと向かっている。
人間の子供にしても、何となく背格好に違和感がある。
「あれは何ですか?」
私は小声でオーナーに訊いた。
すると、オーナーは軽く肩を竦め、
「さあ……? たまに見かけるけど、まあペンギン達が警戒してないし、悪さはしないだろうから、僕もあまり気にしてないんだ」
いや、気にしろよ、オッサン!!!
……と、ペンギン達が驚くといけないので、大声で突っ込むこともできなかった。
ほんの一部だが大自然の営みと、そしてKiwiの底抜けな度量(?)を全身で体感できた一夜であった。
一月半ば、NZ南海のスチュアート島を訪れ、民宿に泊まった。
五十歳ぐらいのKiwi(NZ人の愛称)男性の民宿のオーナーが、夕飯後にペンギンを見に行こうと誘ってくれた。
メンバーはその日の宿泊客インド人カップルと、やはりWHで来ていた二十代の日本人女性、私、それにそのオーナーの五人である。
夜の九時頃に出発した。まだ夕暮れ時(日没は十時過ぎ)で、かなり風があった。そして森……というか、ほぼ密林の小径を歩いて行った。
南半球なので季節は真夏。そこそこ南極に近いとあって、日本の真夏のような暑さではないが、少し風が強くても、薄手の長袖で丁度良い程度の気温だった。真冬は相当寒いだろうに、シダ植物が元気良く生い繁っている光景は奇妙である。恐竜が出てきてもおかしくない。
その日は天気が良く、ラッキーだった。と言うのも、スチュアート島は一年の約三分の二は雨だと言われているからである。
しばらく行くとオーナーが立ち止まり、『あそこにいる』と指差した。
斜面下は波が打ち寄せている。その波に揺られて、薄暗くなってきた中、小さな黄色い光がたくさん見えた。ペンギンの目である。イエローアイドペンギンだ。
『もっと近くで見てみよう』と、オーナーはさらに私達を小径の先へと案内する。
砂浜が見えてきた。たくさんの小さなペンギン達がヨチヨチと歩き、海へ入ろうとしているところだった。
ペンギン達を驚かせないように、私達は砂浜へは出ず、シダ植物に隠れながら静かに観察した。この頃にはかなり日も傾いてきたが、ペンギン達のシルエットはよく見えた。
その距離は約十メートル。動物園や水族館ではなく、野生のペンギンをこんなにも間近で見られるのは感動ものだった。
しばし、海へ向かうペンギン達に魅入っていると、その群れの中に、少し大柄の変わった形のペンギンが現れた。
別の種類のペンギンが間違えて紛れたのかな? と思ったが、何かが違う。そのシルエットを見る限り、フォルムも歩き方も、そもそもペンギンではないのだ。
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人間の子供にしても、何となく背格好に違和感がある。
「あれは何ですか?」
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すると、オーナーは軽く肩を竦め、
「さあ……? たまに見かけるけど、まあペンギン達が警戒してないし、悪さはしないだろうから、僕もあまり気にしてないんだ」
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……と、ペンギン達が驚くといけないので、大声で突っ込むこともできなかった。
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