15 / 41
第15話 体感!! NZ怪紀行①
しおりを挟む
WHでNZに滞在していた頃の話。
一月半ば、NZ南海のスチュアート島を訪れ、民宿に泊まった。
五十歳ぐらいのKiwi(NZ人の愛称)男性の民宿のオーナーが、夕飯後にペンギンを見に行こうと誘ってくれた。
メンバーはその日の宿泊客インド人カップルと、やはりWHで来ていた二十代の日本人女性、私、それにそのオーナーの五人である。
夜の九時頃に出発した。まだ夕暮れ時(日没は十時過ぎ)で、かなり風があった。そして森……というか、ほぼ密林の小径を歩いて行った。
南半球なので季節は真夏。そこそこ南極に近いとあって、日本の真夏のような暑さではないが、少し風が強くても、薄手の長袖で丁度良い程度の気温だった。真冬は相当寒いだろうに、シダ植物が元気良く生い繁っている光景は奇妙である。恐竜が出てきてもおかしくない。
その日は天気が良く、ラッキーだった。と言うのも、スチュアート島は一年の約三分の二は雨だと言われているからである。
しばらく行くとオーナーが立ち止まり、『あそこにいる』と指差した。
斜面下は波が打ち寄せている。その波に揺られて、薄暗くなってきた中、小さな黄色い光がたくさん見えた。ペンギンの目である。イエローアイドペンギンだ。
『もっと近くで見てみよう』と、オーナーはさらに私達を小径の先へと案内する。
砂浜が見えてきた。たくさんの小さなペンギン達がヨチヨチと歩き、海へ入ろうとしているところだった。
ペンギン達を驚かせないように、私達は砂浜へは出ず、シダ植物に隠れながら静かに観察した。この頃にはかなり日も傾いてきたが、ペンギン達のシルエットはよく見えた。
その距離は約十メートル。動物園や水族館ではなく、野生のペンギンをこんなにも間近で見られるのは感動ものだった。
しばし、海へ向かうペンギン達に魅入っていると、その群れの中に、少し大柄の変わった形のペンギンが現れた。
別の種類のペンギンが間違えて紛れたのかな? と思ったが、何かが違う。そのシルエットを見る限り、フォルムも歩き方も、そもそもペンギンではないのだ。
イエローアイドペンギンより少し背が高いので、身長は一メートル弱だろう。長い毛がボサボサと生えた頭と二本の腕、脚があり、やや前屈みだが二足歩行で、ペンギン達と一緒に海へと向かっている。
人間の子供にしても、何となく背格好に違和感がある。
「あれは何ですか?」
私は小声でオーナーに訊いた。
すると、オーナーは軽く肩を竦め、
「さあ……? たまに見かけるけど、まあペンギン達が警戒してないし、悪さはしないだろうから、僕もあまり気にしてないんだ」
いや、気にしろよ、オッサン!!!
……と、ペンギン達が驚くといけないので、大声で突っ込むこともできなかった。
ほんの一部だが大自然の営みと、そしてKiwiの底抜けな度量(?)を全身で体感できた一夜であった。
一月半ば、NZ南海のスチュアート島を訪れ、民宿に泊まった。
五十歳ぐらいのKiwi(NZ人の愛称)男性の民宿のオーナーが、夕飯後にペンギンを見に行こうと誘ってくれた。
メンバーはその日の宿泊客インド人カップルと、やはりWHで来ていた二十代の日本人女性、私、それにそのオーナーの五人である。
夜の九時頃に出発した。まだ夕暮れ時(日没は十時過ぎ)で、かなり風があった。そして森……というか、ほぼ密林の小径を歩いて行った。
南半球なので季節は真夏。そこそこ南極に近いとあって、日本の真夏のような暑さではないが、少し風が強くても、薄手の長袖で丁度良い程度の気温だった。真冬は相当寒いだろうに、シダ植物が元気良く生い繁っている光景は奇妙である。恐竜が出てきてもおかしくない。
その日は天気が良く、ラッキーだった。と言うのも、スチュアート島は一年の約三分の二は雨だと言われているからである。
しばらく行くとオーナーが立ち止まり、『あそこにいる』と指差した。
斜面下は波が打ち寄せている。その波に揺られて、薄暗くなってきた中、小さな黄色い光がたくさん見えた。ペンギンの目である。イエローアイドペンギンだ。
『もっと近くで見てみよう』と、オーナーはさらに私達を小径の先へと案内する。
砂浜が見えてきた。たくさんの小さなペンギン達がヨチヨチと歩き、海へ入ろうとしているところだった。
ペンギン達を驚かせないように、私達は砂浜へは出ず、シダ植物に隠れながら静かに観察した。この頃にはかなり日も傾いてきたが、ペンギン達のシルエットはよく見えた。
その距離は約十メートル。動物園や水族館ではなく、野生のペンギンをこんなにも間近で見られるのは感動ものだった。
しばし、海へ向かうペンギン達に魅入っていると、その群れの中に、少し大柄の変わった形のペンギンが現れた。
別の種類のペンギンが間違えて紛れたのかな? と思ったが、何かが違う。そのシルエットを見る限り、フォルムも歩き方も、そもそもペンギンではないのだ。
イエローアイドペンギンより少し背が高いので、身長は一メートル弱だろう。長い毛がボサボサと生えた頭と二本の腕、脚があり、やや前屈みだが二足歩行で、ペンギン達と一緒に海へと向かっている。
人間の子供にしても、何となく背格好に違和感がある。
「あれは何ですか?」
私は小声でオーナーに訊いた。
すると、オーナーは軽く肩を竦め、
「さあ……? たまに見かけるけど、まあペンギン達が警戒してないし、悪さはしないだろうから、僕もあまり気にしてないんだ」
いや、気にしろよ、オッサン!!!
……と、ペンギン達が驚くといけないので、大声で突っ込むこともできなかった。
ほんの一部だが大自然の営みと、そしてKiwiの底抜けな度量(?)を全身で体感できた一夜であった。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
アポリアの林
千年砂漠
ホラー
中学三年生の久住晴彦は学校でのイジメに耐えかねて家出し、プロフィール完全未公開の小説家の羽崎薫に保護された。
しかし羽崎の家で一ヶ月過した後家に戻った晴彦は重大な事件を起こしてしまう。
晴彦の事件を捜査する井川達夫と小宮俊介は、晴彦を保護した羽崎に滞在中の晴彦の話を聞きに行くが、特に不審な点はない。が、羽崎の家のある林の中で赤いワンピースの少女を見た小宮は、少女に示唆され夢で晴彦が事件を起こすまでの日々の追体験をするようになる。
羽崎の態度に引っかかる物を感じた井川は、晴彦のクラスメートで人の意識や感情が見える共感覚の持ち主の原田詩織の助けを得て小宮と共に、羽崎と少女の謎の解明へと乗り出す。
【完結】本当にあった怖い話 コマラセラレタ
駒良瀬 洋
ホラー
ガチなやつ。私の体験した「本当にあった怖い話」を短編集形式にしたものです。幽霊や呪いの類ではなく、トラブル集みたいなものです。ヌルい目で見守ってください。人が死んだり怖い目にあったり、時には害虫も出てきますので、苦手な方は各話のタイトルでご判断をば。
---書籍化のため本編の公開を終了いたしました---
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
お化け団地
宮田 歩
ホラー
「お化け団地」と呼ばれている朽ち果てた1階に住む不気味な老婆。彼女の部屋からは多頭飼育された猫たちがベランダから自由に出入りしていて問題になっていた。警察からの要請を受け、猫の保護活動家を親に持つ少年洋介は共に猫たちを捕獲していくが——。
怪奇蒐集帳(短編集)
naomikoryo
ホラー
【★◆毎朝6時30分更新◆★】この世には、知ってはいけない話がある。
怪談、都市伝説、語り継がれる呪い——
どれもがただの作り話かもしれない。
だが、それでも時々、**「本物」**が紛れ込むことがある。
本書は、そんな“見つけてしまった”怪異を集めた一冊である。
最後のページを閉じるとき、あなたは“何か”に気づくことになるだろう——。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる