不思議小話 ピンキリ

そうすみす

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第8話 覚められない夢 ①

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 よく見る夢がある。
 
 よどんだ水場で魚釣りをしている夢、何かから逃げようと空を飛んでいる夢(なぜかいつも高く速く飛べない)、地面を掘るとお金がザクザク出てくる夢(でもなぜか小銭ばかり……)、そしてそれらと同じ頻度ひんどで多いのが、トイレに行く夢である。

 夢にトイレが出てくる場合は、もちろんトイレに行きたい時なのだが、ここに登場するトイレ達、実にことごとく使えないものばかり。

 入ったはいいが真っっっっ暗で手元も足元も見えないのはまだじょの口。人通りの多い道のド真ん中に一つだけ個室が設置されたタイプでドアや鍵が壊れていたり、デパート内の各階にトイレがあるのに、どの階に行っても百人以上の行列ができていたり、大部屋に便器が何十個も並んでいて仕切りもなく男女兼用トイレだったり、それに全面ガラス張りで、どこかの会社の会議室からモロ見え、などという奇天烈きてれつなトイレもあった。

 まあ、夢だから何でもアリだ。少なくとも、こういった使えないトイレしかないからこそ、就寝中にらさずに済んでいるのだろう。人間の脳とは本当に上手くできているものだと感心する。

 ある晩、また夢の中でトイレに行きたくなった。

 いつものように変なトイレをいくつかめぐるうち、途中で夢だと気が付いた。

 普段ふだん、夢だと分かった時点で目覚めるのだが、この時はなぜか目覚めることができなかった。

 そしてこの時、私は広大な牧場のような場所にいた。さくの囲いや納屋なやはあるのだが、見渡みわたす限り人も動物もおらず、牧場にしてはかなり奇妙な所だった。

 ぼうアニメの『ログアウトできない!』のシーンを思い出しながら、どうしようかとさ迷っていると、後ろから誰かに呼び止められた。

 振り返ると、青緑色の人間(以後グリーンマンと呼ぶ)が立っていた。

 怖いとか気持ち悪いとか、一切感じなかった。夢の中で、私はこのグリーンマンを昔からよく知っていた。とても親しい友人だったようだ。

 
 ❁長くなるので、2話に分けます。❁
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