不思議小話 ピンキリ

そうすみす

文字の大きさ
上 下
7 / 41

第7話 禁断の座禅法。

しおりを挟む
 【! 危険ですので、決して真似をしないでください !】 

 月に何度か気功教室に通っている。

 毎回、練習の最後に座禅ざぜんをする。

 これは私の師匠ししょうS先生の方針なのだが、座禅中にイメージするものは何でも良い。神様でも仏様でも、亡くなったご先祖様でも、とにかく宗教等は関係なく、皆が心身共に健康になれれば問題はないとのこと。なので、外国人の弟子も何人かいる。

 毎回言われるのが、丹田たんでん(おへその下辺り)に気(意識)を集中させること。他にもちゅう丹田(胸の間辺り)、じょう丹田(眉間みけんの辺り)とあるが、これらは長時間気を集中させると疲れたり気分が悪くなったりするので、相当な達人以外はやらないようにと言われている。

 しかしながら、私の好奇心は黙っていなかった。中丹田や上丹田に気を集中させるとどうなるのだろう? と。

 ある日、自宅の自分の部屋で試してみた。

 道場でいつもおこなっているように、背筋を伸ばして胡坐あぐらをかき、深くゆっくり腹式呼吸。そして眉間の辺りの上丹田に気を集中させてみた。

 数分程度は何ともなかったが、十五分ぐらいして、少し頭がクラクラしてきた。

 なるほど。確かに気分が悪くなるんだなぁ。でも、もう少し続けてみよう。

 それからさらに十分ぐらい続け、にぶい頭痛がしてきた。

 もうちょっとだけ頑張ってみよう。

 さらに数分後、脳の奥で何かが小刻みに振動しているような感覚が出始めた。

 たぶん、本当に振動しているわけではなく、錯覚さっかくだろう。

 でも、これはそろそろやめた方がいいかもしれない。

 そう思った瞬間、物凄いスピードで、急に身体が真上へ飛び上がった。

 いや、実際には身体は飛んでいない。飛んだのは……私の中身?

 たとえるなら、大根や人参を土から引っこ抜くのと同様に、まるで脳天から凄い力で中身を引っこ抜かれるような、今までに経験したことのない抜飛ばっとび感(?)だった。

 びっくりして『ワッ!』と声を上げると、すぐにまた戻ってきた。

 時間にして一秒未満だったと思うが、確かに私の中身は身体から離脱りだつしていた。

 S先生の忠告の意味を理解した。熟練者以外は、やってはいけない座禅法だったのだ。

              ❁    ❁    ❁ 

 座禅はいやしやストレス解消等の効果もありますので、皆さんにも是非ぜひすすいたします。

 ですが、冒頭ぼうとうでも喚起かんきさせていただいたように、今回のやり方は、決して真似をしないでくださいませ。
 
 正しく行い、現在健康な方も、闘病中の方も、常に良い状態にしようと働き続けているご自身のお体に感謝しましょう。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

歩きスマホ

宮田 歩
ホラー
イヤホンしながらの歩きスマホで車に轢かれて亡くなった美咲。あの世で三途の橋を渡ろうとした時、通行料の「六文銭」をモバイルSuicaで支払える現実に——。

ショートホラーストーリー「帰宅途中に」

『むらさき』
ホラー
短い短編です。帰宅途中などに読んでもらうと幸いです。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

アポリアの林

千年砂漠
ホラー
 中学三年生の久住晴彦は学校でのイジメに耐えかねて家出し、プロフィール完全未公開の小説家の羽崎薫に保護された。  しかし羽崎の家で一ヶ月過した後家に戻った晴彦は重大な事件を起こしてしまう。  晴彦の事件を捜査する井川達夫と小宮俊介は、晴彦を保護した羽崎に滞在中の晴彦の話を聞きに行くが、特に不審な点はない。が、羽崎の家のある林の中で赤いワンピースの少女を見た小宮は、少女に示唆され夢で晴彦が事件を起こすまでの日々の追体験をするようになる。  羽崎の態度に引っかかる物を感じた井川は、晴彦のクラスメートで人の意識や感情が見える共感覚の持ち主の原田詩織の助けを得て小宮と共に、羽崎と少女の謎の解明へと乗り出す。

【完結】本当にあった怖い話 コマラセラレタ

駒良瀬 洋
ホラー
ガチなやつ。私の体験した「本当にあった怖い話」を短編集形式にしたものです。幽霊や呪いの類ではなく、トラブル集みたいなものです。ヌルい目で見守ってください。人が死んだり怖い目にあったり、時には害虫も出てきますので、苦手な方は各話のタイトルでご判断をば。 ---書籍化のため本編の公開を終了いたしました---

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

【完結済】僕の部屋

野花マリオ
ホラー
僕の部屋で起きるギャグホラー小説。 1話から8話まで移植作品ですが9話以降からはオリジナルリメイクホラー作話として展開されます。

お化け団地

宮田 歩
ホラー
「お化け団地」と呼ばれている朽ち果てた1階に住む不気味な老婆。彼女の部屋からは多頭飼育された猫たちがベランダから自由に出入りしていて問題になっていた。警察からの要請を受け、猫の保護活動家を親に持つ少年洋介は共に猫たちを捕獲していくが——。

処理中です...