乙女ゲームに転生したらしい私の人生は全くの無関係な筈なのに何故か無自覚に巻き込まれる運命らしい〜乙ゲーやった事ないんですが大丈夫でしょうか〜

ひろのひまり

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82.転移魔法でドキドキタイム?

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 中等部2年になって数日経ちましたが、至って平和な日々を過ごしております。

 アディはあの日こそ具合が悪そうだったけど、「リリィはリリィのままでいてね……」と手を握り締めて真剣に話してきたので「勿論!!」と約束をしました。

 何かは分からなかったけどアディがあんな風に言ってくる事なんてないし、アディを安心させたかったから深くは何も聞かずにいます。
 その内話してくれればいいかな?って。


 そして今日は授業も終わって、魔法訓練スペースでレオに転移魔法のコツを教えてもらおうとお願いしていたら、マティ様が通りかかって自分も教えてほしいと言われたので3人分の申請を出しました。それが通ったので今から向かいます!!

 魔法訓練スペースは中高関係なく利用できます。なので利用したい人が多いので申請を通すのが難しかったのですが、最近まで大幅拡張工事を行っていて今までの倍以上の人数が利用できるようになりました。メンテナンスも終了して今日から使えるようになったのです。


 やったね!


 「レオ!マティ様!こっち!!」
 「リリィ。お待たせ」
 

 申請を出した時の書類の控えを魔法訓練スペースの扉横のパネルに読み取らせると、番号が現れてロックが解除されます。
 その番号の部屋に向かいパネルに入室する人、全員の魔力を流してから入ります。
 申請と違う場合は入室出来なくなるので要注意。申請時より人を増やしたい場合は当日までに申請し直さないと入れないといった感じで結構厳しくなったようです。

 魔力をパネルに流すことでどこに誰がいるかがきちんと判るようになっているのは仮想ダンジョンと同じですね。


 さて、それでは早速レオに教えて貰いたいと思います。


 「転移魔法は、そうだな……イメージが一番大事かな。まずはココからあそこの印まで飛んでみるね」

 レオは呪文を詠唱し「トランジション」と唱えました。

 すると、レオの身体が一瞬消えて数メートル先の印の所にフワリと現れました。

 「おー!!スゴイ!!」
 「レオ、この魔法は行く場所によって魔力量変えてますか?それとも勝手に持っていかれる?」
 「うーん、勝手に持っていかれる感じだね。距離でもだろうし、場所でも変わると思う。人を目的地にする時が一番持っていかれるかな」

 「成る程……そしてイメージですね」

 
 ふむふむ。とりあえず私は無詠唱で行きたいと思います!!

 あそこの場所をイメージ、とりあえず呪文を頭で詠唱して……

 『トランジション』

 ……。
 …………。

 ですよねぇ……。
 ふう、そんなちょっとやったくらいで出来るわけないって分かってますよ!!

 
 「トランジション」

 
 ──あ!マティ様が消えて数メートル先の印の手前にフワリと現れました。

 
 「──少しズレましたか……」
 「流石マティだね。コツを掴んだら早いや」
 「マティ様!!凄い!!てかズルイ!!」
 「ズルイって……リリィもイメージですよ」

 
 うーんうーん。
 『トランジション』

 ……………。
 まだ……だめですね。


 練習をしていると、一瞬ビーッビーッとアラーム音か鳴ってすぐに止まりました。

 
 「え?何今の……」

 『えー、魔法訓練スペースご利用中の皆様、只今鳴りましたアラーム音についてご説明させて頂きます。アラーム音は申請外の生徒が無理に入ろうとしてしまった為に鳴った物です。特に脅威はありません。そしてトラブルではございませんのでご安心下さい。引き続きご利用可能ですので宜しくお願いします』

 放送が流れて説明が終わると、元の静寂が戻ってきました。


 「ビックリしましたね……」
 「そんな無理に入ろうとする人がいるなんて新入生……とかかな?」
 
 
 何となく何となーくだけど、あのピンク頭の編入生の姿が頭に浮かんでしまったので少し申し訳ない気になってしまいました。


 「リリィ?」
 「あ、うん。びっくりしたね」
 「大丈夫という事なので続けましょうか」
 

 ヨシ、気を取り直して……

 ……。
 ……………。


 プハッ!やっぱりダメだ……。

 マティ様を見ると印まで確実に飛べるようになっていました。

 「……マティ様も天才……」
 「フフ。マティはコツを掴むのが早いからね」
 「えーん。コツとか分かんない……」
 「そうだなぁ……イメージが難しいのかな……うーん、そうだちょっと待っててね」

 
 そう言ってレオはテクテクと印の辺りまで移動しました。

 
 「リリィ、そこからオレの所に飛ぶってイメージして念じて呪文唱えてみて」

 
 なる程!そういう事ね!空間だと分かりづらいけど、人の所だったらイメージしやすい!!

 ヨシ。
 レオの所に、レオの所に……
 『トランジション』

 グネッと視界が歪んだかと思ったら、目の前が暗い!!何!?何!?

 「フフ、やったね!リリィ成功だよ?」
 「え?」

 顔を上げたらレオのドアップ!!

 「え!?え!!??」

 足がフワフワ浮いていてレオにお姫様抱っこしてもらっちゃってる状態でした……。

 「あ、レオ!ヤッタわ!!あれ?でもえと…恥ずかしい……ので降ろして……」

 「えー?仕方ないなぁ」
 
 渋々といった感じでレオはそっと降ろしてくれた。
 
 「じゃあもう一回あの印の所までチャレンジしてみるわ!」

 
 ヨシ、さっきのイメージよ!
 あそこの印に飛ぶの。

 ……。
 …………。

 ……ダメだ……飛べそうな感じ無い……。
 
 令嬢にあるまじき行為ですがガクリと膝をついて手までついてしまいました……。
  
 マティを見ると部屋の中をシュンシュン飛び回っています……。

 
 「マティはもう基本は大丈夫そうだね、知ってると思うけど転移魔法は制限もあるから気を付けて使わないと捕まっちゃうから要注意だよ」

 「制限って?」
 
 「あれですよね。人の家、部屋、他国へは許可無しでは飛べない、飛んでしまったら弾かれて騎士団の所に飛ばされるというやつですよね?」

 「そう、マティはよっぽど大丈夫だと思うけどね。リリィは……」

 「だ、大丈夫よ!きっと!!も、もう一度レオの所に飛んでみるわっ!!いい?レオ!!」
 「フフいつでもどうぞ」


 一度レオから離れて……と。

 ヨシ。
 レオの所、レオの所よ!!

 『トランジション』

 
 グネッと視界が歪んで目の前がやっぱり暗くなった。
 
 ハッと顔を上げたら嬉しそうなレオのドアップ……。

 「フフ、リリィ成功だよ」
 「あ、ありがとうレオ……えと、降ろして?」
 「えー?だってリリィが飛び込んで来るんだよ?」
 「ご、ごめんね。でも…恥ずかしい……から」
 「もう、仕方ないなぁ」
 「──ふぅ、私は何を見せられているのでしょうね」
 「マ、マティ様!!あ、今度はマティ様の所まで飛んでみるわ!!」

 
 レオに降ろしてもらって、今度はマティ様の所へチャレンジしてみる事にしました。


 マティ様の所、マティ様の所に……
 『トランジション』

 
 視界がグネッと歪んでフワリとマティ様の姿が隣にあります。

 「あ!成功した!」
 「本当ですね、おめでとうございます」
 
 マティ様が隣で微笑んでくれます。
 
 「リリィ、もう一回オレの方に飛んでみて?」

 レオがそう言うので、レオの所レオの所……
 グネッと視界が歪んでやっぱり目の前が暗くなりました……。

 「フフ、リリィ。バッチリだね」
 
 またしても目の前には優しく微笑むレオの顔!!
 
 なんででしょうか……マティ様の所へは普通に飛べたのに……レオの所へは何故か毎回お姫様抱っこ……。


 「リリィは人を思い浮かべたほうが飛べるのかもしれないね。ただ、そうなると……」
 「そうなると?」
 「飛ぶ前にまずその人に連絡を入れないといけないね。いきなり飛んでも許可が無いと弾かれる可能性が高いから」
 「え!?じゃあ……」
 「うーん、通信魔法は?使える?」
 「一応使えるけど……」
 「じゃあ、まず人を思い浮かべて飛ぶ時はその前に通信魔法で行く事を伝えて許可出してもらってからじゃ無いと、ダメだね」
 
 
 えー!それはかなり面倒くさいかも……。


 「まあ、人の所には飛べるんだから練習すればできるようになるよ」
 「そっか!そうだよね!がんばるわ!」

 「……じゃあ、私はお邪魔のようなので帰りますね。レオありがとうございました」

 「──えっ!?あ、やだ……レオ降ろして……」
 「ん?そうだマティ、自分の部屋だったら許可関係ないから飛べると思うよ?」
 「確かにそうですね。では、転移魔法で私は部屋に戻りますので後は宜しくお願いします。……トランジション」

 マティ様が室内パネルに魔力を流し退室処理をしてからフワリと消えました。
 
 部屋の中はレオと2人きりになってしまいました。

 
 「レオ?降ろして?」
 「フフ、残念」

 そう言いながらレオはそっと降ろしてくれました。

 「レディと2人きりはよくないから、仕方ないね今日はもう終わろうか?」

 レオは降ろしてくれたけど、腰に手が回ったままです……髪をクルクル弄んでからキスを落として離れて行きました。


  ───っっ!!

  顔から火が出そうです……。

 
 
 
──────────────────────


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