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61.もう少しお勉強が必要ですか?
しおりを挟むニナを部屋のパネルに登録して自由に出入り出来るようにして部屋に入ります。
「……で、ニナはお母様から派遣されてきたのね?」
「そうでございますよ!あーん!ドレスで着飾れるなんて久しぶりすぎて…気合い入りまくりですよ!」
何故か手をワキワキと動かすニナの目は獲物を狩る獣のように鋭く光っているように見える…。
コワイ…。
大荷物からフワサッとドレスを取り出したニナはクローゼットから出してきたトルソーに着せるとシワや汚れがないかのチェックを始めました。
「リリィ様、バスタブにお湯を張っておきますので湯あみの支度が整いましたら磨き上げますからね!」
「このドレスは…?」
美しい光沢感のあるブルーにシルバーの刺繍が施されていて、横に並べてあるアクセサリーも同色で揃えてあり、どう見ても……
「レオポルト様からの贈り物ですよー!さすが抜かりがないですよね!!自分の色を着てくださいって…キャー!!」
やっぱり…こんな素敵なドレス送ってくれていたのに、私が制服で出るって言ったら何も言わずに…。
イケメンすぎるわ……。
「さ、お湯の準備ができましたので…磨かせていただきます!!」
「あ、待って…私、さっきレオに制服で出るって言ってあるのよ…だから」
「大丈夫です。すでにドレスで行くことをお伝えしてありますので」
いつの間に…この女も抜かり無しだわ…
とにかく磨かれ、磨かれ、しっとりもちもち肌になり、髪の毛もサラッサラのツヤッツヤになりました。
この磨かれている間もニナの独り言はすごくて…本人目の前に言うセリフじゃないわ…という事ばかり。
「髪はハーフアップにして…サイドこの菫色の花飾りと一緒に編み込みます…。はぁ…この後毛…ふんわりとカールしたゆるふわ感…そのままでも十分ですけど…」
ブツブツと何か言いながら手際良く素晴らしい仕上がりにいつもしてくれるので、ニナに全てお任せしているけど…たまに本気で怖いです。
そういえば昔一度だけ準備にニナが全く関わらなかった事があったけど…まあ出来はそれはそれで素晴らしかったけど、ニナの落ち込みと一週間経っても二週間経ってもグチグチブツブツ言ってくるのに疲れて、どうしてもの時以外は必ずニナにやってもらう事にしたんだったわ。
ニナ曰く、自分が一番私の事を分かっているのだから自分が全身全霊を込めて準備させてもらいたい!だって。
そういう物なのかな?
お腹が空いてくる頃には手軽につまめるサンドイッチやお菓子が用意されてるのもニクイわ…。
「さて、このイヤリングをして……完成です」
「ニナありがとう…」
ニナは鏡越しにニヤニヤニマニマしてからホゥッとため息を吐きました。
「リリィ様はどこの誰よりも美しいです…」
「もう、ニナったらお世辞はいらないわよ。皆私の事見て残念って顔するもの…」
そりゃあ、自分で言うのも何ですが前も言いましたがDNAはいいのですから!
自分でも見た目は素晴らしいと思うの。
問題は中身なのよね。
「…リリィ様は分かってらっしゃらないです、あまり謙遜しすぎても嫌味なだけですからね!」
「ーーえ?そんなつもりはないけど…」
「いーえ!もう毎回言っておりますけどね!リリィ様はお美しいのですよ!あのミシェル様とマリア様のお子ですよ!!」
「そ…そうね…ニナ落ち着いて?」
「私は落ち着いております!!リリィ様はご自身の評価が低すぎです!!皆が羨んでると言うのに…誰が残念なんですか!ご両親に失礼ですよ!」
「あ…そうね…」
「それに、残念って思ってるのはリリィ様の事ではなくて、リリィ様に絶対に勝てない自分に対しての残念って事ですよ!!」
「ニナ…。分かったわよ…私は残念なんかじゃないわ。そうよね?」
ニナの思い込みも激しいから…コッチが折れないと終わらないのよね…。
「はぁ……リリィ様は分かってらっしゃらない…」
「ニナ…そんなため息吐かないで…」
「あ、すみません…。リリィ様は、美しいのですからね!分かりましたか!?」
「は、はい…」
『おー、なんだ?着飾ってんなー』
「セル」
『本当だな、似合っているぞ』
「ロウ」
『リリィがそういう格好すると別人だなー』
「ネスル……」
『うわぁ、すげえ美人じゃん…』
「ラスクまで…ていうか、なんで皆人型なのよ!」
あ、ニナは?驚いてない??
ん?あれ?特に驚きもせずに片付けしてる…
「……ニナは知ってた?ロウ達が人型になれるの」
「存じ上げておりますよ?というかですね、上位聖獣や上位精霊は人化できるっていうのは子供でも知ってる話ですよ?実際に見たのは今が初めてですけどね」
「…ニナって本当に……ブレないわね」
ロウ達の人化した姿って破壊力抜群だと思うのだけど…流石だわ。
こういう動じなさは羨ましい所よね。
「ロウ達は何していたの?」
『…特に何もだな』
『そーだなー、特に何もだなー』
『右に同じだな』
『ん?全校生徒の召喚獣集めて脅してたじゃん』
「え?」
『バカヤロ…』
『何でもないぜぇ?まあ、強いて言えばちょっかい出すなよ?ってくらいかな』
もう!何やってるのよ!!
皆で仲良くしてよ?
『大丈夫だよ、おかしな奴がいないかチェックしただけだからな』
『それを脅しという…』
『『『ラタトスク!!』』』
『お前はまた…』
『ひぇ~すみませんでした~』
ポンッと煙みたいな物が出たと思ったらラスクは消えていた。
『ちぃっ!逃げやがった…』
「…何でも良いけど他の契約獣の方達ともちゃんと仲良くさせてもらわなくてはダメよ?」
『仲良く…ね』
「そうよ、この学園寮では私達は新参者なのだからね。先輩方には色々教えてもらわないと…」
「リリィ様?そろそろお時間だと思いますので出られますか?」
「ん?あ、そうね。ニナおかしい所ない?」
「誰が仕上げたとお思いですか?ニナですよ!!おかしい所がある筈がないではないですか!?」
「…はい。すみませんでした。行くわ。ロウ達も大人しくしておくのよ?」
『何言ってんだ?契約獣も一緒に参加だぜぇ?』
「え!?セル?何言って…」
『我等のこの格好が目に入ってないのか?ニナに言って揃えて貰ったんだが?』
確かに…シンプルなスーツだけど皆にぴったりと合っていて凄く似合ってる…けど。
皆の胸元にあるチーフは菫色。
「ロウ…ていうか人型で行く必要は?」
『そうだな特には無いが誰がトップかを知らしめる為かな?』
「ネスル、それって必要?」
『必要か不必要かで言えば、必要だな』
「ふぅん?そういうもの?」
『そうだ』
召喚獣とか聖獣とか精霊とか…勉強不足だな。
もう少し皆の事をちゃんと知る努力をしよう…。
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