14 / 19
14.オレの婚約者様
しおりを挟むフレディ視点です
────────────────────
オレの婚約者ルイーズ・メルベルクの朝は早い。
太陽が上がり始め鳥の囀りが聞こえ始める頃には既に身支度を整えて屋敷の周辺を見回りがてら走る。
息も乱さずに10周程すると、次は大きな木の枝にぶら下がり懸垂。そして腹筋、腕立てと筋トレを続けた後、木刀を振る。
簡単に木刀を振ると言ったがその木刀かなり重い。
オレも一度持たせてもらって振ってみたが5回程で息が上がった。
朝から一通り身体を動かすと軽く汗を流して朝食を摂り学園に向かう。
品行方正で美人なルーは皆の憧れの的そしてオレの自慢。
学園でもオレ達は憧れのカップルとして皆に羨ましがられている。
いいだろ? 羨ましいだろ? オレとルーは相思相愛!!
そんなルーとオレの出会いは生まれる前にまで遡る。オレの母親とルーの母親(王女様)とベスの母親は幼馴染みで親友だった。
親友三人が同時期に子供を授かった。
男女だったら結婚させれたらいいよね~程度にマタニティライフを楽しんでいたようだ。
そして出産。
オレ、ルー、ベスの三人は赤ん坊の頃から家を行き来し(王都にある屋敷が近所だった)三人まとめて一緒に育ったワケだ。
小さい頃のオレは身体が少し弱くて他の同年代の子よりも小さかった。ルーは健康優良児で走り回るのが大好きで一番背も大きかった。ベスは大人しかったが本が好きで頭も良かった。
ルーがオレを連れて走り回って、ベスは木陰で本を読んでそれを見ているという図が普通だった。それは王都でもそうだったし、それぞれの領地でもそうだった。
ある日いつものように母達がテラスでお茶をしていて、オレ達はコロコロ走り回っていたんだ。
喉が渇いたオレはお茶を貰おうと母達の元へ行った、その時の会話がこうだ。
「ルーちゃんは相変わらず元気ね~」
「元気すぎて困ってるわよ、コーエンがお嬢はは剣技の才能がある! 鍛えさせて欲しい! なんて言ってくるの」
「コーエン団長? ふふ、すごいわね! フレディなんてまだまだ弱くてね……」
「あら、ベスなんて本の虫よ? 元気に走り回ってるのっていいわよね」
「あ、そういえばジェイムス殿下の婚約者選びが始まるって?」
「そうね、そうなるとそろそろルーも考えないといけないわね」
ルーの母上の言葉にオレは焦りを覚えたんだ。ルーが取られちゃうって!
急いでルーに結婚を申し込まなくちゃって。
そのまま走ってルーの所に戻って近くに咲いてた赤いバラを摘んでルーに言ったんだ。
「ルー! オレとけっこんしてずっといっしょにいよう!」
そしたら、少し考えたような顔をしたルーはフフッと綺麗に笑って花を受け取ってくれた。
「フレディわたしのおむこさんになりたいの?」
「うん! なりたい! いっしょうしあわせにする!」
「うーん、いいよ! フレディのことすきだし!」
やった! って思ったらルーはオレの顎をクイッとするとチューッとキスをしてくれた。
ベスはそれを見て急いで母達を呼ぶと「わたしがしょうにんです!」と鼻息も荒く二人の婚約を祝福してくれたんだ。
いつでも白紙に戻せるような内容で婚約を交わすと(オレはそんなモノ必要ないって言ったんだけどね)ルーと毎日楽しく過ごしていた。
ルーの家は辺境だから年に数回辺境へ帰るんだ。その時は必ずついて帰った。
オレ達が中等部に入る頃ルーの実家に行ったら、新しく兵士団に入団した男の一人がコーエン団長の知り合いの息子でシリル・エイトルだった。
この男、ルーが兵士団の訓練に参加すると知って「ここはお嬢ちゃんのおままごとの場所じゃないぜ?」と鼻で笑ったんだ。
オレはルーの凄さを知っていたから言い返そうとしたんだけど、ルーはそれを制してとりあえず共に訓練しましょうと話を進めたんだ。
結果は、走ってはシリルよりも長距離を走り、懸垂はルーの勝利、腹筋は引き分け、最後の手合わせでは引き分けだった。
中等部の女の子に惨敗だったシリルは顔を青ざめてクッと悔しそうだったが、ルーの使っていた木刀を手にした瞬間膝を着いて騎士の誓をたてていたんだ。
ルーの使っていた木刀はコーエン団長の物で特別性。重い。通常の木刀の10倍の重さだった。
さすが、オレの愛する人は素晴らしい。
シリルが惚れるのだってわかる。
ルーは天然の人タラシで……懐が深いから受け入れるととにかく心を砕いてくれる。
屈託のない笑顔とかたわいもない会話、ここ辺境では王都では見せない普段のルーの姿を見せてくれる。
だけどさ、オレとしては少し面白くないんだよね。ルーが愛してると言ってくれるのはオレにだけ。それは分かっているんだ、だけどその笑顔をオレ以外に見せないで欲しい、オレ以外の男と楽しそうにしないで欲しい。
そんな事は言えないけどね……
ルーが辺境に行く時に一緒に帰るのは王都でじっと待ってなんていられないからだ。今誰と何をしているのか気になって、嫉妬で気が狂いそうになるからだ。
そんなオレの心を分かっているのかルーはオレが付いて来るのを断ってきた事は一度だってない。
「フレディ?」
「ルー!! 終わった?」
「ええ。フレディも手合わせする?」
「じゃあ、お願いします!!」
オレも成長して今ではルーよりも背は高いし筋肉だってルーより付いてる。
スラリと引き締まった体は誰よりも美しいと噂されているのは知ってるんだ。
ガスッ、ボコッ、ドスッ……
「参りました……」
ルーには秒で負けるんだよなぁ……。シリルには3勝7敗くらい。団長にも勝てた事は無いけど、兵士達には勝てるくらいには強くなったんだけどね……。
ルーには勝てないよ。
だってルーだからね。
今日もオレの婚約者様は朝から走って鍛錬して汗を流して学園へ向かう。
「フレディおはよう」
ニッコリ笑うこの顔がだいすきだ。
0
お気に入りに追加
2,133
あなたにおすすめの小説
私が愛する王子様は、幼馴染を側妃に迎えるそうです
こことっと
恋愛
それは奇跡のような告白でした。
まさか王子様が、社交会から逃げ出した私を探しだし妃に選んでくれたのです。
幸せな結婚生活を迎え3年、私は幸せなのに不安から逃れられずにいました。
「子供が欲しいの」
「ごめんね。 もう少しだけ待って。 今は仕事が凄く楽しいんだ」
それから間もなく……彼は、彼の幼馴染を側妃に迎えると告げたのです。
最愛の側妃だけを愛する旦那様、あなたの愛は要りません
abang
恋愛
私の旦那様は七人の側妃を持つ、巷でも噂の好色王。
後宮はいつでも女の戦いが絶えない。
安心して眠ることもできない後宮に、他の妃の所にばかり通う皇帝である夫。
「どうして、この人を愛していたのかしら?」
ずっと静観していた皇后の心は冷めてしまいう。
それなのに皇帝は急に皇后に興味を向けて……!?
「あの人に興味はありません。勝手になさい!」
アリシアの恋は終わったのです。
ことりちゃん
恋愛
昼休みの廊下で、アリシアはずっとずっと大好きだったマークから、いきなり頬を引っ叩かれた。
その瞬間、アリシアの恋は終わりを迎えた。
そこから長年の虚しい片想いに別れを告げ、新しい道へと歩き出すアリシア。
反対に、後になってアリシアの想いに触れ、遅すぎる行動に出るマーク。
案外吹っ切れて楽しく過ごす女子と、どうしようもなく後悔する残念な男子のお話です。
ーーーーー
12話で完結します。
よろしくお願いします(´∀`)
【完結】皇太子の愛人が懐妊した事を、お妃様は結婚式の一週間後に知りました。皇太子様はお妃様を愛するつもりは無いようです。
五月ふう
恋愛
リックストン国皇太子ポール・リックストンの部屋。
「マティア。僕は一生、君を愛するつもりはない。」
今日は結婚式前夜。婚約者のポールの声が部屋に響き渡る。
「そう……。」
マティアは小さく笑みを浮かべ、ゆっくりとソファーに身を預けた。
明日、ポールの花嫁になるはずの彼女の名前はマティア・ドントール。ドントール国第一王女。21歳。
リッカルド国とドントール国の和平のために、マティアはこの国に嫁いできた。ポールとの結婚は政略的なもの。彼らの意志は一切介入していない。
「どんなことがあっても、僕は君を王妃とは認めない。」
ポールはマティアを憎しみを込めた目でマティアを見つめる。美しい黒髪に青い瞳。ドントール国の宝石と評されるマティア。
「私が……ずっと貴方を好きだったと知っても、妻として認めてくれないの……?」
「ちっ……」
ポールは顔をしかめて舌打ちをした。
「……だからどうした。幼いころのくだらない感情に……今更意味はない。」
ポールは険しい顔でマティアを睨みつける。銀色の髪に赤い瞳のポール。マティアにとってポールは大切な初恋の相手。
だが、ポールにはマティアを愛することはできない理由があった。
二人の結婚式が行われた一週間後、マティアは衝撃の事実を知ることになる。
「サラが懐妊したですって‥‥‥!?」
王妃から夜伽を命じられたメイドのささやかな復讐
当麻月菜
恋愛
没落した貴族令嬢という過去を隠して、ロッタは王宮でメイドとして日々業務に勤しむ毎日。
でもある日、子宝に恵まれない王妃のマルガリータから国王との夜伽を命じられてしまう。
その理由は、ロッタとマルガリータの髪と目の色が同じという至極単純なもの。
ただし、夜伽を務めてもらうが側室として召し上げることは無い。所謂、使い捨ての世継ぎ製造機になれと言われたのだ。
馬鹿馬鹿しい話であるが、これは王命─── 断れば即、極刑。逃げても、極刑。
途方に暮れたロッタだけれど、そこに友人のアサギが現れて、この危機を切り抜けるとんでもない策を教えてくれるのだが……。
目を覚ましたら、婚約者に子供が出来ていました。
霙アルカ。
恋愛
目を覚ましたら、婚約者は私の幼馴染との間に子供を作っていました。
「でも、愛してるのは、ダリア君だけなんだ。」
いやいや、そんな事言われてもこれ以上一緒にいれるわけないでしょ。
※こちらは更新ゆっくりかもです。
わたしのことはお気になさらず、どうぞ、元の恋人とよりを戻してください。
ふまさ
恋愛
「あたし、気付いたの。やっぱりリッキーしかいないって。リッキーだけを愛しているって」
人気のない校舎裏。熱っぽい双眸で訴えかけたのは、子爵令嬢のパティだ。正面には、伯爵令息のリッキーがいる。
「学園に通いはじめてすぐに他の令息に熱をあげて、ぼくを捨てたのは、きみじゃないか」
「捨てたなんて……だって、子爵令嬢のあたしが、侯爵令息様に逆らえるはずないじゃない……だから、あたし」
一歩近付くパティに、リッキーが一歩、後退る。明らかな動揺が見えた。
「そ、そんな顔しても無駄だよ。きみから侯爵令息に言い寄っていたことも、その侯爵令息に最近婚約者ができたことも、ぼくだってちゃんと知ってるんだからな。あてがはずれて、仕方なくぼくのところに戻って来たんだろ?!」
「……そんな、ひどい」
しくしくと、パティは泣き出した。リッキーが、うっと怯む。
「ど、どちらにせよ、もう遅いよ。ぼくには婚約者がいる。きみだって知ってるだろ?」
「あたしが好きなら、そんなもの、解消すればいいじゃない!」
パティが叫ぶ。無茶苦茶だわ、と胸中で呟いたのは、二人からは死角になるところで聞き耳を立てていた伯爵令嬢のシャノン──リッキーの婚約者だった。
昔からパティが大好きだったリッキーもさすがに呆れているのでは、と考えていたシャノンだったが──。
「……そんなにぼくのこと、好きなの?」
予想もしないリッキーの質問に、シャノンは目を丸くした。対してパティは、目を輝かせた。
「好き! 大好き!」
リッキーは「そ、そっか……」と、満更でもない様子だ。それは、パティも感じたのだろう。
「リッキー。ねえ、どうなの? 返事は?」
パティが詰め寄る。悩んだすえのリッキーの答えは、
「……少し、考える時間がほしい」
だった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる