10 / 11
第十話
しおりを挟む
私はあの事件のあと、顔の腫れが治るまで学園を休んで、自宅療養をしていた。
と言っても、別に病気でもないし、顔の腫れも大分ひいている。
明日にでも学園にいけそうなのだが、アルベルト様がまだ許可を出してくれないのだ。
そしてアルベルト様は、毎日うちに見舞いに来てくれる。
「ジル。お見舞いに来たよ。調子はどうかな?」
「アルベルト様、ありがとうございます。
お陰様ですっかり良くなりましたのよ。明日にでも学園に戻れそうですわ」
私がそう言うも、なかなか首を縦に振らない。
「もう少し安静にした方がいいよ。脳震盪を起こしたんだから、油断は禁物だよ」
この会話も数日は繰り返している。
「犯人は捕まえたのですよね? 目的は何だったのです?」
ずっと気になっていたので、聞いてみた。
アルベルト様はニッコリ笑って、
「ジルは気にしなくていいよ。もうこんな事は起きないからね」
と、教えてくれない。
犯人の事を聞いても同じだった。
暫くして、ようやくアルベルト様から学園に行く許可がおりて、久しぶりに学園に通うと、いつもと少し雰囲気が変わっていた。
何だろう? やけに静かだわ
そう思っていた時に気付いた。
あ、いつも絡んでくるフェリス侯爵令嬢がいないんだ。
どうしたんだろうと思っていた時に、前方からフェリス侯爵令嬢の取り巻きをしていた令嬢の1人が、こちらに向かって歩いてきた。
「ごきげんよう。あの、少しお伺いしたいのですが、フェリス侯爵令嬢はどちらにいらっしゃるのか、ご存知?」
私に気付き、質問を聞いた途端、身体を震わせながら、
「ご、ごめんなさい。わたくし知りません。申し訳ございません!」
そう言って、慌てて去っていく。
何? その反応。
今までそんな反応してなかったよね?
いつも侯爵令嬢と一緒に、嫌味の1つくらい言ってこなかったっけ?
その後も同じような場面に遭遇し、首を傾げるような事が続いた。
その数週間後、フェリス侯爵令嬢は退学したことを聞いた。
そして、なんと驚いた事に、フェリス侯爵家自体も没落したとか。
一体何が起きれば侯爵家が没落するのか。
全く謎のまま、日は過ぎていった。
そして、私はいつもの日常に戻っている。
今日も恒例の婚約者とのお茶会だ。
ただ最近は、気の抜けたお茶会とは行かなくなった。
何故ならば、私がアルベルト様を意識し始めたから。
テンプレートの褒め言葉でさえ、嬉しくて照れてしまう。
おかしい。私の好みでは無いはずなのに。
そして、そのアルベルト様は、いつも機嫌は良かったが、更に最近は上機嫌だ。
そして、とにかく甘い。甘すぎる。
私は調子が崩されっぱなしで、何だか悔しい。
でも、アルベルト様が嬉しそうだから、まぁいいか。
そんな感じで、いつものお茶会を楽しんでいた。
と言っても、別に病気でもないし、顔の腫れも大分ひいている。
明日にでも学園にいけそうなのだが、アルベルト様がまだ許可を出してくれないのだ。
そしてアルベルト様は、毎日うちに見舞いに来てくれる。
「ジル。お見舞いに来たよ。調子はどうかな?」
「アルベルト様、ありがとうございます。
お陰様ですっかり良くなりましたのよ。明日にでも学園に戻れそうですわ」
私がそう言うも、なかなか首を縦に振らない。
「もう少し安静にした方がいいよ。脳震盪を起こしたんだから、油断は禁物だよ」
この会話も数日は繰り返している。
「犯人は捕まえたのですよね? 目的は何だったのです?」
ずっと気になっていたので、聞いてみた。
アルベルト様はニッコリ笑って、
「ジルは気にしなくていいよ。もうこんな事は起きないからね」
と、教えてくれない。
犯人の事を聞いても同じだった。
暫くして、ようやくアルベルト様から学園に行く許可がおりて、久しぶりに学園に通うと、いつもと少し雰囲気が変わっていた。
何だろう? やけに静かだわ
そう思っていた時に気付いた。
あ、いつも絡んでくるフェリス侯爵令嬢がいないんだ。
どうしたんだろうと思っていた時に、前方からフェリス侯爵令嬢の取り巻きをしていた令嬢の1人が、こちらに向かって歩いてきた。
「ごきげんよう。あの、少しお伺いしたいのですが、フェリス侯爵令嬢はどちらにいらっしゃるのか、ご存知?」
私に気付き、質問を聞いた途端、身体を震わせながら、
「ご、ごめんなさい。わたくし知りません。申し訳ございません!」
そう言って、慌てて去っていく。
何? その反応。
今までそんな反応してなかったよね?
いつも侯爵令嬢と一緒に、嫌味の1つくらい言ってこなかったっけ?
その後も同じような場面に遭遇し、首を傾げるような事が続いた。
その数週間後、フェリス侯爵令嬢は退学したことを聞いた。
そして、なんと驚いた事に、フェリス侯爵家自体も没落したとか。
一体何が起きれば侯爵家が没落するのか。
全く謎のまま、日は過ぎていった。
そして、私はいつもの日常に戻っている。
今日も恒例の婚約者とのお茶会だ。
ただ最近は、気の抜けたお茶会とは行かなくなった。
何故ならば、私がアルベルト様を意識し始めたから。
テンプレートの褒め言葉でさえ、嬉しくて照れてしまう。
おかしい。私の好みでは無いはずなのに。
そして、そのアルベルト様は、いつも機嫌は良かったが、更に最近は上機嫌だ。
そして、とにかく甘い。甘すぎる。
私は調子が崩されっぱなしで、何だか悔しい。
でも、アルベルト様が嬉しそうだから、まぁいいか。
そんな感じで、いつものお茶会を楽しんでいた。
310
お気に入りに追加
542
あなたにおすすめの小説

婚約破棄された令嬢のささやかな幸福
香木陽灯
恋愛
田舎の伯爵令嬢アリシア・ローデンには婚約者がいた。
しかし婚約者とアリシアの妹が不貞を働き、子を身ごもったのだという。
「結婚は家同士の繋がり。二人が結ばれるなら私は身を引きましょう。どうぞお幸せに」
婚約破棄されたアリシアは潔く身を引くことにした。
婚約破棄という烙印が押された以上、もう結婚は出来ない。
ならば一人で生きていくだけ。
アリシアは王都の外れにある小さな家を買い、そこで暮らし始める。
「あぁ、最高……ここなら一人で自由に暮らせるわ!」
初めての一人暮らしを満喫するアリシア。
趣味だった刺繍で生計が立てられるようになった頃……。
「アリシア、頼むから戻って来てくれ! 俺と結婚してくれ……!」
何故か元婚約者がやってきて頭を下げたのだ。
しかし丁重にお断りした翌日、
「お姉様、お願いだから戻ってきてください! あいつの相手はお姉様じゃなきゃ無理です……!」
妹までもがやってくる始末。
しかしアリシアは微笑んで首を横に振るばかり。
「私はもう結婚する気も家に戻る気もありませんの。どうぞお幸せに」
家族や婚約者は知らないことだったが、実はアリシアは幸せな生活を送っていたのだった。

【完結】あなたから、言われるくらいなら。
たまこ
恋愛
侯爵令嬢アマンダの婚約者ジェレミーは、三か月前編入してきた平民出身のクララとばかり逢瀬を重ねている。アマンダはいつ婚約破棄を言い渡されるのか、恐々していたが、ジェレミーから言われた言葉とは……。
2023.4.25
HOTランキング36位/24hランキング30位
ありがとうございました!

結婚したけど夫の不倫が発覚して兄に相談した。相手は親友で2児の母に慰謝料を請求した。
window
恋愛
伯爵令嬢のアメリアは幼馴染のジェームズと結婚して公爵夫人になった。
結婚して半年が経過したよく晴れたある日、アメリアはジェームズとのすれ違いの生活に悩んでいた。そんな時、机の脇に置き忘れたような手紙を発見して中身を確かめた。
アメリアは手紙を読んで衝撃を受けた。夫のジェームズは不倫をしていた。しかも相手はアメリアの親しい友人のエリー。彼女は既婚者で2児の母でもある。ジェームズの不倫相手は他にもいました。
アメリアは信頼する兄のニコラスの元を訪ね相談して意見を求めた。



あなたを愛するつもりはない、と言われたので自由にしたら旦那様が嬉しそうです
あなはにす
恋愛
「あなたを愛するつもりはない」
伯爵令嬢のセリアは、結婚適齢期。家族から、縁談を次から次へと用意されるが、家族のメガネに合わず家族が破談にするような日々を送っている。そんな中で、ずっと続けているピアノ教室で、かつて慕ってくれていたノウェに出会う。ノウェはセリアの変化を感じ取ると、何か考えたようなそぶりをして去っていき、次の日には親から公爵位のノウェから縁談が入ったと言われる。縁談はとんとん拍子で決まるがノウェには「あなたを愛するつもりはない」と言われる。自分が認められる手段であった結婚がうまくいかない中でセリアは自由に過ごすようになっていく。ノウェはそれを喜んでいるようで……?

それでも好きだった。
下菊みこと
恋愛
諦めたはずなのに、少し情が残ってたお話。
主人公は婚約者と上手くいっていない。いつも彼の幼馴染が邪魔をしてくる。主人公は、婚約解消を決意する。しかしその後元婚約者となった彼から手紙が来て、さらにメイドから彼のその後を聞いてしまった。その時に感じた思いとは。
小説家になろう様でも投稿しています。

貧乏男爵家の末っ子が眠り姫になるまでとその後
空月
恋愛
貧乏男爵家の末っ子・アルティアの婚約者は、何故か公爵家嫡男で非の打ち所のない男・キースである。
魔術学院の二年生に進学して少し経った頃、「君と俺とでは釣り合わないと思わないか」と言われる。
そのときは曖昧な笑みで流したアルティアだったが、その数日後、倒れて眠ったままの状態になってしまう。
すると、キースの態度が豹変して……?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる