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44 デューカス視点
しおりを挟むある日、ルイジアス殿下の執務室で仕事をしていると、皇城にロックウェル元王国の件で呼ばれていたルナリア様が、私を訪ねてきた。
私を訪ねてくるなんて、珍しい。
何だろう?
「デューカス様、お仕事中にお時間をお取りしてしまい、申し訳ありません。
どうしてもお尋ねしたい事がありまして。
以前、この国に流行っている小説や舞台があると教えて下さいましたよね?
その内容がわたくしをモデルにしたものだと最近お聞きしたもので……
どういった経緯で私をモデルとした小説や舞台が出来たのか、一体どんな内容なのかお聞きしたいのです。
殿下に直接聞くのは、なんか気が引けてしまって……」
そう言われて、大体の内容を伝える。
精霊の存在を信じない者にもよく伝わるように、ルナリア様の存在がとても貴重なものだと知らしめる為だと説明した。
「まぁ、そんな事されなくて良かったのに。
ルイジアス殿下は、心配性なのですね」
そう言ってルナリア様は笑っている。
……が、本当は笑い事じゃない。
あの小説やら舞台を作り、短期間で広める為に、どれだけ周りの者が振り回されたか。
「全く、今まで初恋を拗らせていた男の行動は怖い」
そんな事を考えていた僕は口に出してしまったのだろう。
ルナリア様が聞いてきた。
「あ、それ。そういえばデューカス様。それもお聞きしたかったのですが、ルイジアス殿下は前に初恋を拗らせていると話されてましたわよね?
わたくしにばかり時間を割いて頂いてる気がいたしますけど、その方に誤解されませんでしょうか?
気になっておりましたのよ?」
そう話すルナリア様の後ろに、いつの間にかルイジアス殿下が立っている。
そして凄い顔で殿下が僕を睨んでる……。
いやいや、後ろ! 気付いてルナリア様!
慌てている僕に、
「デューカス? どうしたんだ?
何を慌てている?」
殿下がもの凄くいい笑顔で僕を追い詰める。
どう言い訳しようかと考えていると、
「あら? ルイジアス殿下、ごきげんよう。
お仕事中に申し訳ありません。
今日は、デューカス様に伺いたい事があって。
すぐに退室させて頂きますわね」
「ほぉ~? デューカスに?」
満面の笑みで殿下が僕を見る。
こんな時に、私に聞きたい事があったなど言わないで!
初恋拗らせ男は嫉妬深いんだから!
それに大丈夫ですよ! ルナリア様は、その初恋の相手が全然自分の事だと気付いていませんから!
しかし、ルナリア様は、天然なんですかね!? 今までの情報で、ご自分の事だと気づかないんですか!?
「デューカスにどんな用事だったのかな?
良ければ、私が聞こうか」
そう言ったルイジアス殿下に、流石に直接聞くのはマズいと感じたのか、
「い、いえ。もう用事は済みましたわ。
本当にお仕事中に申し訳ありません」
と、退室するルナリア様を追いかけて
「送っていこう」
と、また殿下が出て行く。
殿下……。仕事して……。
戻って来た時に、色々とネチネチと聞かれるだろうな。
本当に粘着質拗らせ男は面倒くさい。
そしてその拗らせ男と天然娘……。
これから、この2人に挟まれて苦労する自分の姿を想像して、頭を抱えた。
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