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 後日、正式に皇帝陛下より父上に、婚約の打診が入り、私達は晴れて婚約者となった。

 そして私は今、皇帝陛下と皇后様に拝謁している。
 緊張で、足が震えそうになるが、これでも王太子妃教育も受けたのだ。無様な姿は晒せない。

 ものすごい威圧感に、押しつぶされそうになりながらも、必死で私はカーテシーをして耐えていた。

 
 「顔を上げるが良い」
 
 陛下のお言葉に、ゆっくりと顔を上げる。

 「ルナリア嬢よ。そんなに緊張するでない。我々はむしろルナリア嬢に感謝しておるのだぞ?」

 陛下はフッと表情を和らげ、皇后を見る。

 「皇后もそうだろう?」
 
 「ふふ。もちろんですとも。何をモタモタしてるのかと焦れったく思っていたくらいですのよ。
 しかも王太子妃教育も済んでいると聞いています。
 こちらとしても、大変助かりますわ」
 と、皇后は微笑みをくれた。

 「ルナリアとお呼びしてもよろしいかしら? これからよろしく頼みますね」

 「ありがとうございます。こちらこそ、よろしくお願い致します」

 ようやく緊張が少し解け、安心した私に、申し訳なさそうに皇后が言った。

「あぁ、今まで拗らせていたから、もし暴走したら遠慮なく引っぱたいていいですからね。
 全く、婚約が決まらないうちからドレスを作っていたなどと、我が息子ながら気持ち悪い」

 ん? ドレス?
 そういえば、パーティの時、やたら豪華なドレスを短時間で届けられた事があったな。

 あの時も持ってきてくれたデューカス様がそのような事を言っていたような?

 
 不思議そうにしている私を見て、陛下が慌てて取りなす。

「ま、まぁ、ルイジアスは私から見ても良い男だぞ。少し粘着質だが、それを補ってあまりある才能の持ち主だ。
 多少は目を瞑ってくれると助かる」

 う~ん、フォローになってるのかな?
 2人して随分な言い方のような……


「御二方は、私の味方の筈ですが、随分と酷い言いようですね」

 私がそう思っていた所に、ルイジアス殿下が入ってきて、そう言った。


「これ以上、ルナに余計な事を吹き込まれるのは勘弁願いたいので、私と共に下がらせて頂きますよ」

 ルイジアス殿下がそう言ってくれたので、ホッとしながら、私は改めて最上級のカーテシーを披露して退席した。



「ルナ、大丈夫だった? 両親がすまないね。普段はもう少しちゃんとしてるんだけどね」

 そんな事を言っている殿下は、あの両陛下と対して変わらないことを言っている事に気付いていない。
 親子だな~って、微笑ましい一面が見れた事に嬉しく思った。

 そして、そう!
 婚約を機に、私はルイジアス殿下から「ルナ」と呼ばれている。
 愛称呼びが照れくさくて、いつも頬を染めてしまう私を見て、ルイジアス殿下はひどくご満悦だ。

 ちなみに私はまだ愛称呼びが出来ていない。
 殿下は、「ジア」でも「ルイス」でも何でもいいからと言われているが、まだ私の中でしっくりこないので、自然に任せる事にした。
 いつか、自然に愛称呼びが出来るようになるまで待ってほしいとのお願いに、極上の笑顔で「待ってる」と言われた時は、胸を撃ち抜かれて死ぬかと思った。

 こんなに顔面偏差値の高い男性に、見慣れる時がやって来るのか不安だ……。



 そして、今日は元ロックウェル王国に残っている民達の事について話し合いをする事になっている。
 陛下がルイジアス殿下にこの件を一任した。
 
 帝国の官僚達とも話し合い、今後は精霊の力は使わずに復興に協力するという事になった。
 
 王族や、主要な貴族達はほぼ全滅したとされ、同じく暴動を起こした民達も同時に亡くなったと聞いている。
 残っているのは、その暴動に参加せず、辛抱強くその地で頑張って細々と生きている民達や、民衆の為に頑張っていた少数の貴族達だけだそうだ。

 その中には、私が懇意にしていた友人の家や、シュナイダーの領民達もおり、ホッとした。


 
「ルナ、精霊王様は元ロックウェル王国の事、何も言ってないのかい?」

 ルイジアス殿下が私にそう聞いてくる。

 私は落ち着いてからもう一度、精霊王様に会いに行っていた。
 あの時、助けてくれた御礼を言いに行ったのだ。

 その時に思い出のあるロックウェル王国を無くしてしまって、本当に良かったのか聞いた。

『我はもともと、アリアさえ幸せなら良かったのだ。他の人間にはそんなに執着はない。
 我はこれを機に精霊界に帰ろうと思っている』
と、話されていた。

 そして、それと同時にロックウェル王国とカルステイン帝国の間にあった精霊の森も撤退させるとも……。


「精霊王様は、これを機に精霊界に戻るそうです。魔物の森と呼ばれていた精霊の森もその時に無くすと……。
 そこは、普通の森として、残るそうですが、普通の森になった後は、あの土地を好きに使えと言われました。
 元ロックウェル王国の中でも、特に被害がひどい土地に住んでいた民達を、その森を開拓して呼び寄せる事も出来そうですね」

 私がそう言うと、殿下はビックリしていた。
「あの森が普通の森になるのか? あの動く木々達も普通の木々になるのかな……」

 よほど殿下は、あの自由に動く森の木々達の印象が強烈だったようだ。


 私は精霊王様が精霊界に戻るまでにもう一度、会いに行こうと思った。
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