48 / 51
47
しおりを挟む
後日、正式に皇帝陛下より父上に、婚約の打診が入り、私達は晴れて婚約者となった。
そして私は今、皇帝陛下と皇后様に拝謁している。
緊張で、足が震えそうになるが、これでも王太子妃教育も受けたのだ。無様な姿は晒せない。
ものすごい威圧感に、押しつぶされそうになりながらも、必死で私はカーテシーをして耐えていた。
「顔を上げるが良い」
陛下のお言葉に、ゆっくりと顔を上げる。
「ルナリア嬢よ。そんなに緊張するでない。我々はむしろルナリア嬢に感謝しておるのだぞ?」
陛下はフッと表情を和らげ、皇后を見る。
「皇后もそうだろう?」
「ふふ。もちろんですとも。何をモタモタしてるのかと焦れったく思っていたくらいですのよ。
しかも王太子妃教育も済んでいると聞いています。
こちらとしても、大変助かりますわ」
と、皇后は微笑みをくれた。
「ルナリアとお呼びしてもよろしいかしら? これからよろしく頼みますね」
「ありがとうございます。こちらこそ、よろしくお願い致します」
ようやく緊張が少し解け、安心した私に、申し訳なさそうに皇后が言った。
「あぁ、今まで拗らせていたから、もし暴走したら遠慮なく引っぱたいていいですからね。
全く、婚約が決まらないうちからドレスを作っていたなどと、我が息子ながら気持ち悪い」
ん? ドレス?
そういえば、パーティの時、やたら豪華なドレスを短時間で届けられた事があったな。
あの時も持ってきてくれたデューカス様がそのような事を言っていたような?
不思議そうにしている私を見て、陛下が慌てて取りなす。
「ま、まぁ、ルイジアスは私から見ても良い男だぞ。少し粘着質だが、それを補ってあまりある才能の持ち主だ。
多少は目を瞑ってくれると助かる」
う~ん、フォローになってるのかな?
2人して随分な言い方のような……
「御二方は、私の味方の筈ですが、随分と酷い言いようですね」
私がそう思っていた所に、ルイジアス殿下が入ってきて、そう言った。
「これ以上、ルナに余計な事を吹き込まれるのは勘弁願いたいので、私と共に下がらせて頂きますよ」
ルイジアス殿下がそう言ってくれたので、ホッとしながら、私は改めて最上級のカーテシーを披露して退席した。
「ルナ、大丈夫だった? 両親がすまないね。普段はもう少しちゃんとしてるんだけどね」
そんな事を言っている殿下は、あの両陛下と対して変わらないことを言っている事に気付いていない。
親子だな~って、微笑ましい一面が見れた事に嬉しく思った。
そして、そう!
婚約を機に、私はルイジアス殿下から「ルナ」と呼ばれている。
愛称呼びが照れくさくて、いつも頬を染めてしまう私を見て、ルイジアス殿下はひどくご満悦だ。
ちなみに私はまだ愛称呼びが出来ていない。
殿下は、「ジア」でも「ルイス」でも何でもいいからと言われているが、まだ私の中でしっくりこないので、自然に任せる事にした。
いつか、自然に愛称呼びが出来るようになるまで待ってほしいとのお願いに、極上の笑顔で「待ってる」と言われた時は、胸を撃ち抜かれて死ぬかと思った。
こんなに顔面偏差値の高い男性に、見慣れる時がやって来るのか不安だ……。
そして、今日は元ロックウェル王国に残っている民達の事について話し合いをする事になっている。
陛下がルイジアス殿下にこの件を一任した。
帝国の官僚達とも話し合い、今後は精霊の力は使わずに復興に協力するという事になった。
王族や、主要な貴族達はほぼ全滅したとされ、同じく暴動を起こした民達も同時に亡くなったと聞いている。
残っているのは、その暴動に参加せず、辛抱強くその地で頑張って細々と生きている民達や、民衆の為に頑張っていた少数の貴族達だけだそうだ。
その中には、私が懇意にしていた友人の家や、シュナイダーの領民達もおり、ホッとした。
「ルナ、精霊王様は元ロックウェル王国の事、何も言ってないのかい?」
ルイジアス殿下が私にそう聞いてくる。
私は落ち着いてからもう一度、精霊王様に会いに行っていた。
あの時、助けてくれた御礼を言いに行ったのだ。
その時に思い出のあるロックウェル王国を無くしてしまって、本当に良かったのか聞いた。
『我はもともと、アリアさえ幸せなら良かったのだ。他の人間にはそんなに執着はない。
我はこれを機に精霊界に帰ろうと思っている』
と、話されていた。
そして、それと同時にロックウェル王国とカルステイン帝国の間にあった精霊の森も撤退させるとも……。
「精霊王様は、これを機に精霊界に戻るそうです。魔物の森と呼ばれていた精霊の森もその時に無くすと……。
そこは、普通の森として、残るそうですが、普通の森になった後は、あの土地を好きに使えと言われました。
元ロックウェル王国の中でも、特に被害がひどい土地に住んでいた民達を、その森を開拓して呼び寄せる事も出来そうですね」
私がそう言うと、殿下はビックリしていた。
「あの森が普通の森になるのか? あの動く木々達も普通の木々になるのかな……」
よほど殿下は、あの自由に動く森の木々達の印象が強烈だったようだ。
私は精霊王様が精霊界に戻るまでにもう一度、会いに行こうと思った。
そして私は今、皇帝陛下と皇后様に拝謁している。
緊張で、足が震えそうになるが、これでも王太子妃教育も受けたのだ。無様な姿は晒せない。
ものすごい威圧感に、押しつぶされそうになりながらも、必死で私はカーテシーをして耐えていた。
「顔を上げるが良い」
陛下のお言葉に、ゆっくりと顔を上げる。
「ルナリア嬢よ。そんなに緊張するでない。我々はむしろルナリア嬢に感謝しておるのだぞ?」
陛下はフッと表情を和らげ、皇后を見る。
「皇后もそうだろう?」
「ふふ。もちろんですとも。何をモタモタしてるのかと焦れったく思っていたくらいですのよ。
しかも王太子妃教育も済んでいると聞いています。
こちらとしても、大変助かりますわ」
と、皇后は微笑みをくれた。
「ルナリアとお呼びしてもよろしいかしら? これからよろしく頼みますね」
「ありがとうございます。こちらこそ、よろしくお願い致します」
ようやく緊張が少し解け、安心した私に、申し訳なさそうに皇后が言った。
「あぁ、今まで拗らせていたから、もし暴走したら遠慮なく引っぱたいていいですからね。
全く、婚約が決まらないうちからドレスを作っていたなどと、我が息子ながら気持ち悪い」
ん? ドレス?
そういえば、パーティの時、やたら豪華なドレスを短時間で届けられた事があったな。
あの時も持ってきてくれたデューカス様がそのような事を言っていたような?
不思議そうにしている私を見て、陛下が慌てて取りなす。
「ま、まぁ、ルイジアスは私から見ても良い男だぞ。少し粘着質だが、それを補ってあまりある才能の持ち主だ。
多少は目を瞑ってくれると助かる」
う~ん、フォローになってるのかな?
2人して随分な言い方のような……
「御二方は、私の味方の筈ですが、随分と酷い言いようですね」
私がそう思っていた所に、ルイジアス殿下が入ってきて、そう言った。
「これ以上、ルナに余計な事を吹き込まれるのは勘弁願いたいので、私と共に下がらせて頂きますよ」
ルイジアス殿下がそう言ってくれたので、ホッとしながら、私は改めて最上級のカーテシーを披露して退席した。
「ルナ、大丈夫だった? 両親がすまないね。普段はもう少しちゃんとしてるんだけどね」
そんな事を言っている殿下は、あの両陛下と対して変わらないことを言っている事に気付いていない。
親子だな~って、微笑ましい一面が見れた事に嬉しく思った。
そして、そう!
婚約を機に、私はルイジアス殿下から「ルナ」と呼ばれている。
愛称呼びが照れくさくて、いつも頬を染めてしまう私を見て、ルイジアス殿下はひどくご満悦だ。
ちなみに私はまだ愛称呼びが出来ていない。
殿下は、「ジア」でも「ルイス」でも何でもいいからと言われているが、まだ私の中でしっくりこないので、自然に任せる事にした。
いつか、自然に愛称呼びが出来るようになるまで待ってほしいとのお願いに、極上の笑顔で「待ってる」と言われた時は、胸を撃ち抜かれて死ぬかと思った。
こんなに顔面偏差値の高い男性に、見慣れる時がやって来るのか不安だ……。
そして、今日は元ロックウェル王国に残っている民達の事について話し合いをする事になっている。
陛下がルイジアス殿下にこの件を一任した。
帝国の官僚達とも話し合い、今後は精霊の力は使わずに復興に協力するという事になった。
王族や、主要な貴族達はほぼ全滅したとされ、同じく暴動を起こした民達も同時に亡くなったと聞いている。
残っているのは、その暴動に参加せず、辛抱強くその地で頑張って細々と生きている民達や、民衆の為に頑張っていた少数の貴族達だけだそうだ。
その中には、私が懇意にしていた友人の家や、シュナイダーの領民達もおり、ホッとした。
「ルナ、精霊王様は元ロックウェル王国の事、何も言ってないのかい?」
ルイジアス殿下が私にそう聞いてくる。
私は落ち着いてからもう一度、精霊王様に会いに行っていた。
あの時、助けてくれた御礼を言いに行ったのだ。
その時に思い出のあるロックウェル王国を無くしてしまって、本当に良かったのか聞いた。
『我はもともと、アリアさえ幸せなら良かったのだ。他の人間にはそんなに執着はない。
我はこれを機に精霊界に帰ろうと思っている』
と、話されていた。
そして、それと同時にロックウェル王国とカルステイン帝国の間にあった精霊の森も撤退させるとも……。
「精霊王様は、これを機に精霊界に戻るそうです。魔物の森と呼ばれていた精霊の森もその時に無くすと……。
そこは、普通の森として、残るそうですが、普通の森になった後は、あの土地を好きに使えと言われました。
元ロックウェル王国の中でも、特に被害がひどい土地に住んでいた民達を、その森を開拓して呼び寄せる事も出来そうですね」
私がそう言うと、殿下はビックリしていた。
「あの森が普通の森になるのか? あの動く木々達も普通の木々になるのかな……」
よほど殿下は、あの自由に動く森の木々達の印象が強烈だったようだ。
私は精霊王様が精霊界に戻るまでにもう一度、会いに行こうと思った。
204
お気に入りに追加
4,123
あなたにおすすめの小説
《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。
友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」
貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。
「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」
耳を疑いそう聞き返すも、
「君も、その方が良いのだろう?」
苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。
全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。
絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。
だったのですが。
貴方の愛人を屋敷に連れて来られても困ります。それより大事なお話がありますわ。
もふっとしたクリームパン
恋愛
「早速だけど、カレンに子供が出来たんだ」
隣に居る座ったままの栗色の髪と青い眼の女性を示し、ジャンは笑顔で勝手に話しだす。
「離れには子供部屋がないから、こっちの屋敷に移りたいんだ。部屋はたくさん空いてるんだろ? どうせだから、僕もカレンもこれからこの屋敷で暮らすよ」
三年間通った学園を無事に卒業して、辺境に帰ってきたディアナ・モンド。モンド辺境伯の娘である彼女の元に辺境伯の敷地内にある離れに住んでいたジャン・ボクスがやって来る。
ドレスは淑女の鎧、扇子は盾、言葉を剣にして。正々堂々と迎え入れて差し上げましょう。
妊娠した愛人を連れて私に会いに来た、無法者をね。
本編九話+オマケで完結します。*2021/06/30一部内容変更あり。カクヨム様でも投稿しています。
随時、誤字修正と読みやすさを求めて試行錯誤してますので行間など変更する場合があります。
拙い作品ですが、どうぞよろしくお願いします。
【完】前世で種を疑われて処刑されたので、今世では全力で回避します。
112
恋愛
エリザベスは皇太子殿下の子を身籠った。産まれてくる我が子を待ち望んだ。だがある時、殿下に他の男と密通したと疑われ、弁解も虚しく即日処刑された。二十歳の春の事だった。
目覚めると、時を遡っていた。時を遡った以上、自分はやり直しの機会を与えられたのだと思った。皇太子殿下の妃に選ばれ、結ばれ、子を宿したのが運の尽きだった。
死にたくない。あんな最期になりたくない。
そんな未来に決してならないように、生きようと心に決めた。
婚約破棄直前に倒れた悪役令嬢は、愛を抱いたまま退場したい
矢口愛留
恋愛
【全11話】
学園の卒業パーティーで、公爵令嬢クロエは、第一王子スティーブに婚約破棄をされそうになっていた。
しかし、婚約破棄を宣言される前に、クロエは倒れてしまう。
クロエの余命があと一年ということがわかり、スティーブは、自身の感じていた違和感の元を探り始める。
スティーブは真実にたどり着き、クロエに一つの約束を残して、ある選択をするのだった。
※一話あたり短めです。
※ベリーズカフェにも投稿しております。
王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!
gacchi
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ?
王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。
国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから!
12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。
平凡令嬢は婚約者を完璧な妹に譲ることにした
カレイ
恋愛
「平凡なお前ではなくカレンが姉だったらどんなに良かったか」
それが両親の口癖でした。
ええ、ええ、確かに私は容姿も学力も裁縫もダンスも全て人並み程度のただの凡人です。体は弱いが何でも器用にこなす美しい妹と比べるとその差は歴然。
ただ少しばかり先に生まれただけなのに、王太子の婚約者にもなってしまうし。彼も妹の方が良かったといつも嘆いております。
ですから私決めました!
王太子の婚約者という席を妹に譲ることを。
私がいなくなった部屋を見て、あなた様はその心に何を思われるのでしょうね…?
新野乃花(大舟)
恋愛
貴族であるファーラ伯爵との婚約を結んでいたセイラ。しかし伯爵はセイラの事をほったらかしにして、幼馴染であるレリアの方にばかり愛情をかけていた。それは溺愛と呼んでもいいほどのもので、そんな行動の果てにファーラ伯爵は婚約破棄まで持ち出してしまう。しかしそれと時を同じくして、セイラはその姿を伯爵の前からこつぜんと消してしまう。弱気なセイラが自分に逆らう事など絶対に無いと思い上がっていた伯爵は、誰もいなくなってしまったセイラの部屋を見て…。
※カクヨム、小説家になろうにも投稿しています!
大好きな旦那様はどうやら聖女様のことがお好きなようです
古堂すいう
恋愛
祖父から溺愛され我儘に育った公爵令嬢セレーネは、婚約者である皇子から衆目の中、突如婚約破棄を言い渡される。
皇子の横にはセレーネが嫌う男爵令嬢の姿があった。
他人から冷たい視線を浴びたことなどないセレーネに戸惑うばかり、そんな彼女に所有財産没収の命が下されようとしたその時。
救いの手を差し伸べたのは神官長──エルゲンだった。
セレーネは、エルゲンと婚姻を結んだ当初「穏やかで誰にでも微笑むつまらない人」だという印象をもっていたけれど、共に生活する内に徐々に彼の人柄に惹かれていく。
だけれど彼には想い人が出来てしまったようで──…。
「今度はわたくしが恩を返すべきなんですわ!」
今まで自分のことばかりだったセレーネは、初めて人のために何かしたいと思い立ち、大好きな旦那様のために奮闘するのだが──…。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる