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馬車に乗って殿下に、帝都内を案内してもらう。
アーガスト領の街しか見たことがなかったので、帝都の街中は、とても見応えがあった。
キョロキョロと周りを見ながら歩く私を見て、殿下はクスリと笑う。
「ルナリア嬢、行ってみたい所はあるかい?」
殿下にそう言われて、私は前々から気になっている所を告げた。
「あります! 最近流行りの舞台があるとか。ぜひわたくしも見たいと思っておりましたの!」
そう告げると、殿下は笑顔のまま固まった。
「あ、あぁ~……それかぁ。急だから席が取れるかな~?」
「あら? デューカス様に聞きましたけど、その舞台の監修はルイジアス殿下だそうですね? なのでルイジアス殿下は何時でも顔パスで入れるとお聞きしましたが?」
それを聞いたルイジアス殿下が小声で
「あの野郎、シメる」
と、ボソッと言っていたが、聞こえないフリをした。
「それにしても、凄く人気のある舞台の監修をなさるなんて、殿下は多才でいらっしゃいますのね。とても興味がありますわ」
そう言った私に、ルイジアス殿下は
「また! また今度! ちゃんと説明してからで! それより、この後、美味しいと評判の店を予約してあるんだ!
そろそろ時間だから、そこに行こう!」
そう言って、私の肩を押して向きを変えさせる。
「そうなのですか? 予約してあるなら仕方ありませんわよね。また今度、別の日に舞台は見に行ってみますわ」
「いや! 舞台は私が案内するまで行かないでくれ! 頼む!」
必死にそう言う殿下に吹き出しそうになる。
舞台の事をデューカス様に聞いた時、ルイジアス殿下が、私のこの国での基盤を築く為に、私の事情に寄せて貴婦人が好みそうな物語に作らせた舞台である事を聞いた。
冤罪で国外追放された1人の女性が、森で精霊に出会い、精霊王の愛し子として精霊たちに助けられながら、隣国で運命の人と出会う。その人と共に試練を乗り越え、そして2人は結ばれ幸せになる……。
大体の話の流れは聞いていたが、ちゃんと観たくてつい殿下を困らせてしまったようだ。
本当に殿下には、感謝の気持ちでいっぱいだ。そこに隠れている殿下の気持ちにも本当は気付いている。
殿下は、私の気持ちを聞いたらどう思うだろう。
臆病な私は、まだ殿下に自分の気持ちを表せないでいた。
食事も終わり、楽しい街巡りもそろそろ終わりの時間が近づいてきた。
「ルナリア嬢、この後もう少しだけ私に時間をくれないか?」
少し寂しい気持ちになっていた私に、ルイジアス殿下は、そう伝えてきたので、もちろん了承する。
ルイジアス殿下が最後に連れてきてくれた場所は、帝都が一望出来る小高い丘の上だった。
そこは山茶花に似た花が咲き乱れており、精霊達が楽しそうに飛び回っている。
『あ! ルナだ!』
『やっほーい、ルナ~』
『ルナ、ここに来るの初めてだね~』
私に気づいた精霊達が、近寄ってきて私に挨拶をしてくれた。
「こんにちは。ここは貴方達のお気に入りの場所なのかな?」
精霊達に問うと、一斉に
『『『『『『そうだよ~!』』』』』』
と、返事が返ってくる。
「やっぱり。ここは精霊達がいっぱいいるんだね」
その様子を見ていたルイジアス殿下がそう聞いてきたから頷いた。
「昔からよくここで、小さな光を見かけていたんだ。でも、他の人には見えていないみたいだったから、私だけの秘密の場所として、ここを管理している」
「ここは、殿下の土地だったのですね」
「あぁ、この光を守らないといけない気がしてね。何かあるとここに来て気持ちを慰めてもらっていた場所なんだ」
そう言って、光を眩しそうに見ている。
そんな大切な場所に連れて来てくれたんだ。
そう感じると、どうしようもなく気持ちが溢れる。
「殿下……あの、わたくし……」
そう言いかけた私を制し、ルイジアス殿下は真剣な眼差しで私を見つめた。
「ルナリア・シュナイダー侯爵令嬢。
私は貴方のことを出会った時から今までずっと想っていました。
貴方が他の人と婚約しても諦められなかった。
どうかお願いです。私とこれからの人生を一生、共に歩んではもらえませんか」
そう言って、私の前で跪き手を差し伸べる。
その姿に私は自然と涙を零していた。
「はい。わたくしも貴方様を想っております。どうか、わたくしを貴方の生涯のパートナーにしてくださいませ」
そう言って私は殿下の手を取る。
殿下は立ち上がって、そっと私の涙をぬぐってくれた。
「ありがとう。一生大切にすると誓う」
そう言って、ゆっくりと私を殿下の腕の中に閉じ込める。
周りを飛んでいた精霊達が祝福するように、私達を包んで花びらが舞った。
アーガスト領の街しか見たことがなかったので、帝都の街中は、とても見応えがあった。
キョロキョロと周りを見ながら歩く私を見て、殿下はクスリと笑う。
「ルナリア嬢、行ってみたい所はあるかい?」
殿下にそう言われて、私は前々から気になっている所を告げた。
「あります! 最近流行りの舞台があるとか。ぜひわたくしも見たいと思っておりましたの!」
そう告げると、殿下は笑顔のまま固まった。
「あ、あぁ~……それかぁ。急だから席が取れるかな~?」
「あら? デューカス様に聞きましたけど、その舞台の監修はルイジアス殿下だそうですね? なのでルイジアス殿下は何時でも顔パスで入れるとお聞きしましたが?」
それを聞いたルイジアス殿下が小声で
「あの野郎、シメる」
と、ボソッと言っていたが、聞こえないフリをした。
「それにしても、凄く人気のある舞台の監修をなさるなんて、殿下は多才でいらっしゃいますのね。とても興味がありますわ」
そう言った私に、ルイジアス殿下は
「また! また今度! ちゃんと説明してからで! それより、この後、美味しいと評判の店を予約してあるんだ!
そろそろ時間だから、そこに行こう!」
そう言って、私の肩を押して向きを変えさせる。
「そうなのですか? 予約してあるなら仕方ありませんわよね。また今度、別の日に舞台は見に行ってみますわ」
「いや! 舞台は私が案内するまで行かないでくれ! 頼む!」
必死にそう言う殿下に吹き出しそうになる。
舞台の事をデューカス様に聞いた時、ルイジアス殿下が、私のこの国での基盤を築く為に、私の事情に寄せて貴婦人が好みそうな物語に作らせた舞台である事を聞いた。
冤罪で国外追放された1人の女性が、森で精霊に出会い、精霊王の愛し子として精霊たちに助けられながら、隣国で運命の人と出会う。その人と共に試練を乗り越え、そして2人は結ばれ幸せになる……。
大体の話の流れは聞いていたが、ちゃんと観たくてつい殿下を困らせてしまったようだ。
本当に殿下には、感謝の気持ちでいっぱいだ。そこに隠れている殿下の気持ちにも本当は気付いている。
殿下は、私の気持ちを聞いたらどう思うだろう。
臆病な私は、まだ殿下に自分の気持ちを表せないでいた。
食事も終わり、楽しい街巡りもそろそろ終わりの時間が近づいてきた。
「ルナリア嬢、この後もう少しだけ私に時間をくれないか?」
少し寂しい気持ちになっていた私に、ルイジアス殿下は、そう伝えてきたので、もちろん了承する。
ルイジアス殿下が最後に連れてきてくれた場所は、帝都が一望出来る小高い丘の上だった。
そこは山茶花に似た花が咲き乱れており、精霊達が楽しそうに飛び回っている。
『あ! ルナだ!』
『やっほーい、ルナ~』
『ルナ、ここに来るの初めてだね~』
私に気づいた精霊達が、近寄ってきて私に挨拶をしてくれた。
「こんにちは。ここは貴方達のお気に入りの場所なのかな?」
精霊達に問うと、一斉に
『『『『『『そうだよ~!』』』』』』
と、返事が返ってくる。
「やっぱり。ここは精霊達がいっぱいいるんだね」
その様子を見ていたルイジアス殿下がそう聞いてきたから頷いた。
「昔からよくここで、小さな光を見かけていたんだ。でも、他の人には見えていないみたいだったから、私だけの秘密の場所として、ここを管理している」
「ここは、殿下の土地だったのですね」
「あぁ、この光を守らないといけない気がしてね。何かあるとここに来て気持ちを慰めてもらっていた場所なんだ」
そう言って、光を眩しそうに見ている。
そんな大切な場所に連れて来てくれたんだ。
そう感じると、どうしようもなく気持ちが溢れる。
「殿下……あの、わたくし……」
そう言いかけた私を制し、ルイジアス殿下は真剣な眼差しで私を見つめた。
「ルナリア・シュナイダー侯爵令嬢。
私は貴方のことを出会った時から今までずっと想っていました。
貴方が他の人と婚約しても諦められなかった。
どうかお願いです。私とこれからの人生を一生、共に歩んではもらえませんか」
そう言って、私の前で跪き手を差し伸べる。
その姿に私は自然と涙を零していた。
「はい。わたくしも貴方様を想っております。どうか、わたくしを貴方の生涯のパートナーにしてくださいませ」
そう言って私は殿下の手を取る。
殿下は立ち上がって、そっと私の涙をぬぐってくれた。
「ありがとう。一生大切にすると誓う」
そう言って、ゆっくりと私を殿下の腕の中に閉じ込める。
周りを飛んでいた精霊達が祝福するように、私達を包んで花びらが舞った。
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