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42 ルイジアス殿下視点 ③
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──── パーティが終わったあと
私はマークが収容されている地下牢に来た。
私の姿を見ると、マークは大声で叫ぶ。
「おい! 僕は無実だ! 名誉毀損だぞ!
早くここから出せ!」
その様子を見ながら、私は牢の前で椅子に腰かけ、ゆったりとした姿勢で返事をした。
「慌てなくても、すぐに出して帰してやるさ。あぁ、でももう帰る国などないがな」
その言葉に
「は? 何を言っている?」
と、マークの訝しげな表情だ。
そのマークに笑いが出る。
「言葉の通りだよ。ロックウェル王国はなくなった。
民衆が暴動を起こしたんだ。
ただでさえ、崩壊しかけていて民はみんな流行病で苦しんでいたり、飢え死にしそうになっていた。
それなのに、そんな民に見向きもせずに保身に走っていた王族や貴族たちは、軒並みやられたぞ」
暴動を起こすように誘導したのは、我らだけどね。
「嘘だ! そんな事ありえない!
父上がそんな事、許すはずが無い!」
「国王と宰相は、1番に民衆たちから狙われたそうだよ。見るも無惨な状態の亡骸だったそうだ。相当恨まれていたようだね」
暴動を起こした民衆が王宮に攻め込んだ時、国王や宰相のいる政務室に行きやすいように、我が国の影たちが暗躍したからね。
まぁ、腐った国王共は、早々に自分達だけが逃げ出す準備をしていたみたいで、国王達を守る為に必死に戦っていた少数の衛兵達が気の毒に思えたと報告があったっけ。
「そ、そんな! ……あっ! アイーシャ!
アイーシャはどうなってる!?」
「アイーシャ? あぁ、男爵家の養女となった阿婆擦れか。
あの女は、宰相の息子と手を取り合って逃げたそうだが、逃げた先でこの2人も惨たらしく死んだみたいだね。
ルナリア嬢を追いやった原因の女だ。この女も相当恨まれていたようだよ」
マークが出国したと同時に宰相の息子とデキたらしい。所詮はその程度の女にルナリア嬢が追いやられたと考えると、腸が煮えくり返る。
まぁ、結果的に私にとっては僥倖だったが……。
もちろん、こちらも常に監視していたから、それを上手く誘導した結果だけどね。
それを聞いたマークは、目を見開き、相当ショックを受けているようだ。
「そ、そんな……。アイーシャが僕を裏切って、あの男と逃げていたなんて……」
そんなに好きだったら、ちゃんと守らないとね。
まぁ、逃がすつもりは微塵もないけど。
「守る国も無くなったのだから、救援要請も必要ないだろう。
この国にいる理由はなくなった。
直ぐにでも、元の場所に送ってやる。
良かったな。早くここから出たかったんだろう?」
私がそう言うと、マークは身体をビクッとさせ、青ざめた顔はより一層ひどくなる。
「ま、待ってくれ! 今、あの国に帰れば僕はどうなる!?」
「さぁ? 残っている民衆に聞いてくれ」
「そんな! そんな所に行ったら、僕も殺される!
頼む! この国に置いてくれ!」
そう叫ぶマークにどす黒い笑みが零れる。
この顔はルナリア嬢には絶対見せられないな。
「何を言っている? お前はこの国で犯罪を犯したんだ。強制送還は決定事項だよ。
あぁ、この国に戻ってくる事は許さないからね。
お前はルナリア嬢を追い出して、あそこで意気揚々と暮らしてたじゃないか。あの場所がとても好きなんだろう?
良かったな、戻る事が出来て。
お前はあそこで生涯を終えるんだよ」
「い、嫌だ! 僕が悪かった!
だから助けてくれ~!」
その言葉を受けて、マークが泣き叫ぶが知ったことではない。
蔑ろにした自国の民に嬲り殺されるなんて自業自得だ。
これで漸く、すべて片付いた。
ルナリア嬢もこれから安心してこの国で過ごしていけるだろう。
頼むから、二度とルナリア嬢にその姿をみせてくれるなよ。
そう思いながら、私はその場を後にした。
私はマークが収容されている地下牢に来た。
私の姿を見ると、マークは大声で叫ぶ。
「おい! 僕は無実だ! 名誉毀損だぞ!
早くここから出せ!」
その様子を見ながら、私は牢の前で椅子に腰かけ、ゆったりとした姿勢で返事をした。
「慌てなくても、すぐに出して帰してやるさ。あぁ、でももう帰る国などないがな」
その言葉に
「は? 何を言っている?」
と、マークの訝しげな表情だ。
そのマークに笑いが出る。
「言葉の通りだよ。ロックウェル王国はなくなった。
民衆が暴動を起こしたんだ。
ただでさえ、崩壊しかけていて民はみんな流行病で苦しんでいたり、飢え死にしそうになっていた。
それなのに、そんな民に見向きもせずに保身に走っていた王族や貴族たちは、軒並みやられたぞ」
暴動を起こすように誘導したのは、我らだけどね。
「嘘だ! そんな事ありえない!
父上がそんな事、許すはずが無い!」
「国王と宰相は、1番に民衆たちから狙われたそうだよ。見るも無惨な状態の亡骸だったそうだ。相当恨まれていたようだね」
暴動を起こした民衆が王宮に攻め込んだ時、国王や宰相のいる政務室に行きやすいように、我が国の影たちが暗躍したからね。
まぁ、腐った国王共は、早々に自分達だけが逃げ出す準備をしていたみたいで、国王達を守る為に必死に戦っていた少数の衛兵達が気の毒に思えたと報告があったっけ。
「そ、そんな! ……あっ! アイーシャ!
アイーシャはどうなってる!?」
「アイーシャ? あぁ、男爵家の養女となった阿婆擦れか。
あの女は、宰相の息子と手を取り合って逃げたそうだが、逃げた先でこの2人も惨たらしく死んだみたいだね。
ルナリア嬢を追いやった原因の女だ。この女も相当恨まれていたようだよ」
マークが出国したと同時に宰相の息子とデキたらしい。所詮はその程度の女にルナリア嬢が追いやられたと考えると、腸が煮えくり返る。
まぁ、結果的に私にとっては僥倖だったが……。
もちろん、こちらも常に監視していたから、それを上手く誘導した結果だけどね。
それを聞いたマークは、目を見開き、相当ショックを受けているようだ。
「そ、そんな……。アイーシャが僕を裏切って、あの男と逃げていたなんて……」
そんなに好きだったら、ちゃんと守らないとね。
まぁ、逃がすつもりは微塵もないけど。
「守る国も無くなったのだから、救援要請も必要ないだろう。
この国にいる理由はなくなった。
直ぐにでも、元の場所に送ってやる。
良かったな。早くここから出たかったんだろう?」
私がそう言うと、マークは身体をビクッとさせ、青ざめた顔はより一層ひどくなる。
「ま、待ってくれ! 今、あの国に帰れば僕はどうなる!?」
「さぁ? 残っている民衆に聞いてくれ」
「そんな! そんな所に行ったら、僕も殺される!
頼む! この国に置いてくれ!」
そう叫ぶマークにどす黒い笑みが零れる。
この顔はルナリア嬢には絶対見せられないな。
「何を言っている? お前はこの国で犯罪を犯したんだ。強制送還は決定事項だよ。
あぁ、この国に戻ってくる事は許さないからね。
お前はルナリア嬢を追い出して、あそこで意気揚々と暮らしてたじゃないか。あの場所がとても好きなんだろう?
良かったな、戻る事が出来て。
お前はあそこで生涯を終えるんだよ」
「い、嫌だ! 僕が悪かった!
だから助けてくれ~!」
その言葉を受けて、マークが泣き叫ぶが知ったことではない。
蔑ろにした自国の民に嬲り殺されるなんて自業自得だ。
これで漸く、すべて片付いた。
ルナリア嬢もこれから安心してこの国で過ごしていけるだろう。
頼むから、二度とルナリア嬢にその姿をみせてくれるなよ。
そう思いながら、私はその場を後にした。
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