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41 ルイジアス殿下視点 ②

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 ロックウェル王国からマーク王子がこの国にやって来る。
 名目は国への救済要請だが、本当の目的はルナリア嬢の奪還だろう。
 どんな手を使ってくるのか分からないが、負ける気はしない。
 

 もともとあの国は閉鎖的で、他国とは交流を持とうとしなかった。
 外交面に力を入れていたのは、ルナリア嬢の父であるシュナイダー殿だけだった。
 それをおかしいと感じないほど、精霊の恩恵にあやかっていたのか。
 
 人は年月と共に、自分達で考え、創意工夫し、自分達の国をより良くする為に努力し続けてこそ、発展を遂げていくものだ。
 その努力を怠り、自然の恩恵を当たり前のように享受し続けた結果が、今の状態を作り上げたのだと思う。

 長雨が続くだけで、あんなに国の機能が働かなくなるか?
 地形的な問題なら、普段より影響を受けやすい部分を強化し、万が一に備えておけば、あそこまで国全体が被害に遭う事もなかっただろう。

 そして困った時だけ、他国に頼ればいいという依存的な考えを国の中心が考えているなんて、そんな国になんの価値がある?


 父である陛下とも相談し、ルナリア嬢の父上にも同席してもらい、今後のロックウェル王国への対処は決定した。
 マーク王子がこちらに来るなら、その間に実行してしまおう。


 それよりも、今度のパーティでルナリア嬢にパートナーになってもらうよう申し込まなければ!
 今まで、ルナリア嬢に着てもらいたいと密かに作り続けてきたドレスがやっと日の目をみる時がきた。

 デューカスには気持ち悪いものを見る様な目で見られたが、知ったことか!



 そしてパーティ当日、私色のドレスを着たルナリア嬢を見た時は、心臓が止まるかと思ったほどの衝撃を受けた。
 

 なんて美しいんだ!
 もともと美しい容姿をしているが、そこに精霊の光がルナリア嬢を包んでいて、更に眩しいのに、更に更に私色に染まったルナリア嬢は、まさに女神そのもの!
 
 手を取るのが恐れ多いとも感じるが、やっと手の届くところに来てくれたのだ。
 この手は絶対に離すものか!


 ルナリア嬢と共にパーティに会場入りすれば、誰もがルナリア嬢に目を奪われている。
 中には嫉妬心から睨んでいる者もいたが、そいつらの顔はしっかりと覚えたからな。


 そして、やはりマーク王子がルナリア嬢に向かって行動した。

 最初は目立つ行動をして、悪手である事に気付いたらしく、一旦引いたように見えたが、やはり密かに影を動かしていたか。

 私はすぐにマーク王子の影をいつでも拘束出来るよう指示を出し、ルナリア嬢をバルコニーに連れ出した。
 前もってどんな手を使うか、大体の予想はしており、対処法として数パターンの準備もしてある。
 しかし、はっきりとどの手でルナリア嬢を連れ去ろうするか掴めなかった。
 少し隙を見せると必ずそこを狙ってくるだろう。
 もちろんルナリア嬢に怖い思いさせず、傷の1つも付けずに守る体制を整えてある。

 そして、やはり1人になったルナリア嬢に向かってマーク王子の影が動いた。

 ルナリア嬢に薬を含ませた布で口を塞ぎ、気絶させようとしたのだ!

 即、現行犯として影を拘束し、影が持っていたメモを確認すると、案の定、マーク王子がルナリア嬢を穢すつもりであった事が分かった。


 ルナリア嬢には、今日何かマーク王子が仕掛けてくるかもしれない事は伝えてあった。
 だから体制が整ったら、少し隙を与える目的でバルコニーに誘って、1人になる時間を持ってもらう事に協力してもらった。
 マーク王子を捕まえるまでは、ルナリア嬢の姿が見られないように、パーティ会場から遠ざけねば……。

 ルナリア嬢には、シュナイダー侯爵に傍についていてもらい、別室で待機してもらおう。

 
 すぐにマーク王子をどん底に突き落としてくるから、それまで待っててくれ。



 マーク王子が来る予定であった休憩室には、予め数人の騎士を潜ませ、ルナリア嬢に見せかけた女性騎士も準備した。

 案の定、マーク王子は入って来てから、ベッドで横たわる女性をルナリア嬢だと思い込んでいる。
 うわっ! 気持ち悪い事を喋りながら女性に近づいて行くぞ。

 女性の肩に手を触れた事を確認し、直ぐにマーク王子を拘束した。

 さぁ、マーク王子。いや、すでに王子ではなかったな。
 これからお前を待ち受けているものが何なのか、その身を持って知ればいい。

 
 マークを地下牢に閉じ込め、私は陛下に報告した後、直ぐにルナリア嬢が待機している部屋に向かった。

 ルナリア嬢はすでにシュナイダー侯爵より、大体の経緯は聞いているようだった。

「ルナリア嬢、すまない。マークの計画を阻止し、決定的な証拠を掴む為とはいえ、貴女にこんな危険な事を協力してもらうはめになってしまった。本当に申し訳なかった」
 
 頭を深く下げて謝る私に、ルナリア嬢はホッと溜息をつく。

「でも、殿下は絶対にわたくしを守って下さるおつもりだったのでしょう? だから、怖くはありませんでしたわよ?」
 
「それでもだ。マークがどの手を使ってくるか掴みきれていなかったからと、ルナリア嬢に余計な負担をかけてしまった自分が不甲斐ない。
 ルナリア嬢には、一生をかけて償うから、どうか許してほしい」

 その言葉にクスっと笑って、ルナリア嬢は私に微笑む。

「一生だなんて大袈裟な。
 マーク王子を無事に拘束したと聞きました。ルイジアス殿下にお怪我がなくて安心致しましたわ」
 
 その笑顔は、本当に眩しくて。
 
 また惚れ直しながら、私はルナリア嬢を誘う。

「歓迎パーティの主役は居なくなってしまったが、まだパーティは続いている。
 一緒に残りの時間を楽しみませんか?」

 そう言って手を差し出した私に、
「喜んでお供させて頂きますわ、パートナー様」
と、手を取って笑顔で応じてくれた。
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