【完結】断罪後の悪役令嬢は、精霊たちと生きていきます!

らんか

文字の大きさ
上 下
41 / 51

40 マーク王子視点 ③

しおりを挟む
 パーティを楽しんでいる僕のところに、僕が王国から連れてきた影から連絡が入った。

「捕まえた? よし、良くやった」


 連絡のメモを確認し、僕の相手をしてくれていた令嬢達に席を外す断りを入れる。

 そして、影に伝えられたパーティの休憩室に向かった。
 
 
 休憩室に入るとすぐにドアに鍵を閉める。

 このようなパーティでは、休憩室が何室も準備されており、パーティでいい雰囲気になった男女が、暗黙の了解でこのような休憩室を使うことがあるのだ。

 
 部屋の中に入り周りを見回すも、誰もいない。

 ベッドルームか?

 そう考えた僕は、部屋の奥にあるベッドルームに向かった。

 ベッドルームのドアを開けると、ベッドに横になっている人影が見える。
 中はうす暗く、背を向けて横になっているため顔は見えないが、パーティで着ていたあのドレスは、確かにルナリアで間違いないだろう。

 
 そう。
 僕は初めから、ルナリアを僕のものにしてから王国に連れて帰るつもりだった。
 話し合いなど生温い。
 無理に連れ去ろうとすれば、あのルイジアスがきっと邪魔をするだろう。

 だが僕と関係を持ったとなれば、ルナリアもこの帝国に居づらくなる。
 未婚のまま、男と関係を持つふしだらな女のレッテルを貼られては、まともな縁談も来ない。

 関係を持った僕が責任を取る形で、堂々と王国に連れ帰ればいいのだ。

 アイーシャより先にこの女を抱くのは嫌だが仕方ない。


「ルナリア」

 声を掛けるも返事は無い。

 メモに薬で眠らせてあると書いていたな。
 騒がれては面倒だから、好都合だ。
 今のうちに、事を済ませておこう。

「ルナリア、まだ僕の事が本当は好きなんだろう?
 王国にも連れて帰ってやるんだから、僕に感謝しろよ」

 そう言って、上着を脱いでからベッドに手を付ける。
 ルナリアに近づいて、ドレスを脱がそうと肩に手をかけた。







「そこまでだ!」

 突然ベッドルームのドアが開き、数人の騎士達と共にルイジアスが入って来た。


「何だお前ら! 勝手に入ってきて失礼だろう!」

 僕の叫びにルイジアスは言い返してくる。

「無理やり拉致して襲おうとするのは犯罪だろう! 自分が何をやっているか分かっているのか!?」

「ルナリアが酔っていたから、休憩室に誘ったら付いてきたんだ! 同意の上だ!
 お前らこそ、何を根拠にそんな言いがかりをつけてくるのだ! 他国の王子を侮辱するつもりか!」

 僕は強気で叫んだ。
 ルナリアは今、寝ているし、ここに来た経緯などバレるわけが無い。
 万が一無理やりだと言われても、男と2人で密室に居たのだ。
 この時点で既に、ふしだらだとされるからな! ふっ。勝ったぞ!


「その女性がルナリアだと?」

 ルイジアスめ。
 ドレスを見ても信じないつもりか。

「そうだ。僕が酔った彼女を介抱しながら一緒にこの部屋に来たんだ」

 
 そう言った時、薬で眠らされていたはずのルナリアが身体を起こした。

「……えっ?」

 ベッドに座った状態で、僕をしっかり睨んでくるその女性は、僕の知らない女で……。

「えっ? 誰だお前?」

  
 戸惑う僕にルイジアスは、にやりと笑う。


「よくもまぁ、堂々とそんな出鱈目が言えたものだ。お前が使った影は、すでに帝国側で捕まえてある。証拠は上がってるんだ。
 お前は他国で婦女暴行を犯した、愚かな王子として、自国へ強制送還される」

 ルイジアスがそう言うが、理解が追いつかない。

 どういう事だ?
 影からルナリアを捕まえたと聞いていたんだ。
 この部屋に来るまでは順調だったはずなのに……。
 ルナリアは何処だ? 目の前の女は誰なんだ? なんでこんな事になってる?


「僕は何もしていない! こんな女知らないぞ!」
 
 そう叫ぶが、騎士達が僕を拘束する。

「自国に帰りながら、ゆっくり考えるんだな。国に着くまで時間はたっぷりとある」

 ルイジアスはそう言うと、
「一旦、牢に入れとけ」
と、背を向けた。

「待て! 本当にこの女とは何もしてない!
婦女暴行なんて言いがかりだ!」

 必死で叫ぶが、誰も耳を貸さず、そのまま僕は城の地下牢に入れられた。

「こんな所に正式訪問した一国の王子を閉じ込めるなんて! これは明らかに国際問題になるぞ!」

 僕は牢の中からそう叫ぶが、牢番の者がチラリと視線を寄こして鼻で笑うだけで、何も言ってこない。
 
 くそっ! なんでこんな事になった!
 これでは、ルナリアを連れて帰るどころか、支援もしてもらえないではないか!

 このまま国に強制送還されれば、僕の立場がますます悪くなる。
 本当に廃嫡されてしまうではないか!

 そうだ! ルナリア!
 ルナリアに僕を助けるよう言ってもらおう!
 あいつだって、まだこの国に来たばかりで、祖国に未練タラタラのはず!
 嫌だが、ここは僕が折れて謝れば、あのルナリアの事だ。すぐに僕を許して一緒に王国に帰ると言うはずだ。

 始めからそうすれば良かったけど、謝りたくなかったから、まぁ仕方ない。
 アイーシャに酷いことをしたと心から反省していれば、今回ばかりは許すしかないからな。


「おい! 牢番! ここにルナリアを呼んでくれ!」

 僕は牢番にそう叫ぶと、
「とんでもない! そんな事したら、殿下にわしの首が物理的に飛ばされてしまうわぃ!
 静かに入ってろ!」
と、怒鳴り返された。

 他国の王子によくもそんな口が聞けるものだ。
 まぁ、その内僕の事が気になってルナリアの方からここに来るだろう。

 僕がここから出た時は、この牢番は処罰してくれるわ!
しおりを挟む
感想 77

あなたにおすすめの小説

【完結】公爵家の末っ子娘は嘲笑う

たくみ
ファンタジー
 圧倒的な力を持つ公爵家に生まれたアリスには優秀を通り越して天才といわれる6人の兄と姉、ちやほやされる同い年の腹違いの姉がいた。  アリスは彼らと比べられ、蔑まれていた。しかし、彼女は公爵家にふさわしい美貌、頭脳、魔力を持っていた。  ではなぜ周囲は彼女を蔑むのか?                        それは彼女がそう振る舞っていたからに他ならない。そう…彼女は見る目のない人たちを陰で嘲笑うのが趣味だった。  自国の皇太子に婚約破棄され、隣国の王子に嫁ぐことになったアリス。王妃の息子たちは彼女を拒否した為、側室の息子に嫁ぐことになった。  このあつかいに笑みがこぼれるアリス。彼女の行動、趣味は国が変わろうと何も変わらない。  それにしても……なぜ人は見せかけの行動でこうも勘違いできるのだろう。 ※小説家になろうさんで投稿始めました

【完結】公爵令嬢は、婚約破棄をあっさり受け入れる

櫻井みこと
恋愛
突然、婚約破棄を言い渡された。 彼は社交辞令を真に受けて、自分が愛されていて、そのために私が必死に努力をしているのだと勘違いしていたらしい。 だから泣いて縋ると思っていたらしいですが、それはあり得ません。 私が王妃になるのは確定。その相手がたまたま、あなただった。それだけです。 またまた軽率に短編。 一話…マリエ視点 二話…婚約者視点 三話…子爵令嬢視点 四話…第二王子視点 五話…マリエ視点 六話…兄視点 ※全六話で完結しました。馬鹿すぎる王子にご注意ください。 スピンオフ始めました。 「追放された聖女が隣国の腹黒公爵を頼ったら、国がなくなってしまいました」連載中!

【完結保証】ご自慢の聖女がいるのだから、私は失礼しますわ

ネコ
恋愛
伯爵令嬢ユリアは、幼い頃から第二王子アレクサンドルの婚約者。だが、留学から戻ってきたアレクサンドルは「聖女が僕の真実の花嫁だ」と堂々宣言。周囲は“奇跡の力を持つ聖女”と王子の恋を応援し、ユリアを貶める噂まで広まった。婚約者の座を奪われるより先に、ユリアは自分から破棄を申し出る。「お好きにどうぞ。もう私には関係ありません」そう言った途端、王宮では聖女の力が何かとおかしな騒ぎを起こし始めるのだった。

運命の番?棄てたのは貴方です

ひよこ1号
恋愛
竜人族の侯爵令嬢エデュラには愛する番が居た。二人は幼い頃に出会い、婚約していたが、番である第一王子エリンギルは、新たに番と名乗り出たリリアーデと婚約する。邪魔になったエデュラとの婚約を解消し、番を引き裂いた大罪人として追放するが……。一方で幼い頃に出会った侯爵令嬢を忘れられない帝国の皇子は、男爵令息と身分を偽り竜人国へと留学していた。 番との運命の出会いと別離の物語。番でない人々の貫く愛。 ※自己設定満載ですので気を付けてください。 ※性描写はないですが、一線を越える個所もあります ※多少の残酷表現あります。 以上2点からセルフレイティング

前世の記憶が蘇ったので、身を引いてのんびり過ごすことにします

柚木ゆず
恋愛
 ※明日(3月6日)より、もうひとつのエピローグと番外編の投稿を始めさせていただきます。  我が儘で強引で性格が非常に悪い、筆頭侯爵家の嫡男アルノー。そんな彼を伯爵令嬢エレーヌは『ブレずに力強く引っ張ってくださる自信に満ちた方』と狂信的に愛し、アルノーが自ら選んだ5人の婚約者候補の1人として、アルノーに選んでもらえるよう3年間必死に自分を磨き続けていました。  けれどある日無理がたたり、倒れて後頭部を打ったことで前世の記憶が覚醒。それによって冷静に物事を見られるようになり、ようやくアルノーは滅茶苦茶な人間だと気付いたのでした。 「オレの婚約者候補になれと言ってきて、それを光栄に思えだとか……。倒れたのに心配をしてくださらないどころか、異常が残っていたら候補者から脱落させると言い出すとか……。そんな方に夢中になっていただなんて、私はなんて愚かなのかしら」  そのためエレーヌは即座に、候補者を辞退。その出来事が切っ掛けとなって、エレーヌの人生は明るいものへと変化してゆくことになるのでした。

[完結]7回も人生やってたら無双になるって

紅月
恋愛
「またですか」 アリッサは望まないのに7回目の人生の巻き戻りにため息を吐いた。 驚く事に今までの人生で身に付けた技術、知識はそのままだから有能だけど、いつ巻き戻るか分からないから結婚とかはすっかり諦めていた。 だけど今回は違う。 強力な仲間が居る。 アリッサは今度こそ自分の人生をまっとうしようと前を向く事にした。

大好きだった旦那様に離縁され家を追い出されましたが、騎士団長様に拾われ溺愛されました

Karamimi
恋愛
2年前に両親を亡くしたスカーレットは、1年前幼馴染で3つ年上のデビッドと結婚した。両親が亡くなった時もずっと寄り添ってくれていたデビッドの為に、毎日家事や仕事をこなすスカーレット。 そんな中迎えた結婚1年記念の日。この日はデビッドの為に、沢山のご馳走を作って待っていた。そしていつもの様に帰ってくるデビッド。でもデビッドの隣には、美しい女性の姿が。 「俺は彼女の事を心から愛している。悪いがスカーレット、どうか俺と離縁して欲しい。そして今すぐ、この家から出て行ってくれるか?」 そうスカーレットに言い放ったのだ。何とか考え直して欲しいと訴えたが、全く聞く耳を持たないデビッド。それどころか、スカーレットに数々の暴言を吐き、ついにはスカーレットの荷物と共に、彼女を追い出してしまった。 荷物を持ち、泣きながら街を歩くスカーレットに声をかけて来たのは、この街の騎士団長だ。一旦騎士団長の家に保護してもらったスカーレットは、さっき起こった出来事を騎士団長に話した。 「なんてひどい男だ!とにかく落ち着くまで、ここにいるといい」 行く当てもないスカーレットは結局騎士団長の家にお世話になる事に ※他サイトにも投稿しています よろしくお願いします

悪役令嬢になるのも面倒なので、冒険にでかけます

綾月百花   
ファンタジー
リリーには幼い頃に決められた王子の婚約者がいたが、その婚約者の誕生日パーティーで婚約者はミーネと入場し挨拶して歩きファーストダンスまで踊る始末。国王と王妃に謝られ、贈り物も準備されていると宥められるが、その贈り物のドレスまでミーネが着ていた。リリーは怒ってワインボトルを持ち、美しいドレスをワイン色に染め上げるが、ミーネもリリーのドレスの裾を踏みつけ、ワインボトルからボトボトと頭から濡らされた。相手は子爵令嬢、リリーは伯爵令嬢、位の違いに国王も黙ってはいられない。婚約者はそれでも、リリーの肩を持たず、リリーは国王に婚約破棄をして欲しいと直訴する。それ受け入れられ、リリーは清々した。婚約破棄が完全に決まった後、リリーは深夜に家を飛び出し笛を吹く。会いたかったビエントに会えた。過ごすうちもっと好きになる。必死で練習した飛行魔法とささやかな攻撃魔法を身につけ、リリーは今度は自分からビエントに会いに行こうと家出をして旅を始めた。旅の途中の魔物の森で魔物に襲われ、リリーは自分の未熟さに気付き、国営の騎士団に入り、魔物狩りを始めた。最終目的はダンジョンの攻略。悪役令嬢と魔物退治、ダンジョン攻略等を混ぜてみました。メインはリリーが王妃になるまでのシンデレラストーリーです。

処理中です...