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周りの視線に気付いたマーク王子は、小さく舌打ちをし、態度を変えてくる。
「大袈裟だな。ちょっとした行き違いがあっただけだ。
その誤解を解くためにも、2人でゆっくり話がしたいと思ったのだよ」
そう言って、また私に近付こうとする。
「お話があるのなら、ここでお願い致します。貴方様と2人だけで話す事など何もありませんわ」
私はマーク王子の目をしっかりと見据えながら告げた。
マーク王子は、その言葉を受けて一瞬睨みながら私を見るが、周囲の目を気にして、すぐに笑顔で話しかける。
「ここでは話しにくいのだ。自国の事なのでね。そなた達も元はロックウェル王国の民だ。そこのところを配慮してくれないか」
引きつった笑顔で話すマーク王子に、周囲の人々は、訝しげに見る。
この国に来てから、自国を心配する素振りも見せず、悠々自適に過ごしていた事は、貴族達にも伝わっていた。
そこに来て、執拗にルナリア嬢に絡むマーク王子の言動と、先程ルイジアス殿下が言っていた事を合わせて考えると、今流行っている舞台や小説と酷似している。
周りのマーク王子への不信感を感じ取ったルイジアス殿下は、ここぞとばかりに攻め込んだ。
「誤解や行き違いと、現在のロックウェル王国と、何か関係あるのか? 何故自分から追い出したルナリア嬢に固執する?」
「……貴殿には関係ない事だ」
「ここはお前の庭ではないぞ。好きなように振る舞うのはやめてくれないか。
2人きりでの話し合いは当たり前の事だが認められない。
それに今日は貴殿の歓迎パーティなのに、こんな雰囲気にしてもらっては困るんだがね」
┄┄┄┄ここはお前の庭ではないぞ
以前ロックウェル王国での騒動時に、マーク王子と出くわした時に言われたセリフ……
何気に根に持ってたのね……。
「マーク・ド・ロックウェル第一王子殿下。
改めてお伝え致します。
わたくし達シュナイダー侯爵家は、このカルステイン帝国の民として受け入れて頂き、この地にて、生きていく所存にございます。
わたくし一個人として、貴方様とお話する事などなく、ましてや、ロックウェル王国での出来事を今更誤解などと言われましても、もうどうでもいい事です」
私の発言に、ルイジアス殿下は満足気な笑顔で頷く。
「そうだ。ルナリア嬢は、この帝国の者となったのだ。そして、今日はこのパーティで私のパートナーとして参列している。
私のパートナーに執拗に誘いをかけるのはマナー違反だよ」
そう言って、ルイジアス殿下は私の肩を持って、自身に引き寄せる。
それを見ていた令嬢達が、
「「「キャー!」」」
と、騒ぐがルイジアス殿下は動じないで笑顔のままだ。
「くっ! ルイジアス殿の顔を立てて今日のところは引き下がろう。
ルナリア。またな」
そう言って、マーク王子はこの場を離れた。
前世の記憶が蘇ってから、前世の性格に引っ張られて客観的に見れるんだけど、マーク王子って、何であんなに小物感が強いんだろう。
ドラマのような、あんな捨て台詞、直に聞くなんて!
〈くっ!〉なんて、本当に言うんだ~
そんな感想を持ってボーッとしていた私にルイジアス殿下が気を遣ってくれる。
「ルナリア嬢、大丈夫か? あの男との対峙は疲れただろう?」
「全然大丈夫ですわ。むしろ、何故わたくしは今まであの王子の為に頑張っていたのか、
過去のわたくしを殴りたい気分ですもの」
私がそう言うと、ルイジアス殿下は吹き出す。
「昔から芯の強いところがあったけど、ますます逞しくなった感じがするよ。負けてられないな。私ももっと強くならなければ」
「まさか! ルイジアス殿下はとてもお強いし、頼りになりますわ。
あ、でも……ルイジアス殿下はか弱いご令嬢の方がお好みでしたら、パートナーがわたくしで申し訳ないですわね」
そういった私を見て、ルイジアス殿下はやや複雑そうな表情で、
「う~ん、やはり私はまだまだ伝えきれてないようだな……」
など、ブツブツ言っていた。
その後のパーティは滞りなく進行し、マーク王子は持ち前の王子スマイルを発揮している。
先程の様子など微塵も感じさせず、令嬢たちにも優しく微笑んで、令嬢達に囲まれて楽しんでいるようだ。
「なんて言うか……。あの王子様スマイルに騙される令嬢方がやっぱりいらっしゃるのですね」
呆れたように言葉をこぼしてしまった私を見て、ルイジアス殿下も「そうだねぇ」と、乾いた笑顔で頷く。
でも、これ以上マーク王子がこちらに来そうにない事に安心した。
「ルナリア嬢、少し休憩しようか。夜風にでも当たりに行くかい?」
ルイジアス殿下の誘いでバルコニーに出る。
夜風が心地よく、ホッと一息ついた。
「何か飲み物を取ってくるよ。すぐに戻るからここに居て?」
そう言われてお願いする事にした。
今日はやっぱり疲れたな。
ルイジアス殿下とのパートナーとして、この国で社交デビューするのは、やはり緊張した。
初めは刺すような視線ばかりで怖気付きそうになったけど、リザベラ様や公爵様達に救われて。
マーク王子の行動は予想してたけど、やはり今までの事を思うと気持ちのコントロールが効かなくなりそうだったし。
怒りに任せて精霊達の力をこんな所で使っちゃったら、大変なことになってしまうものね。
そんな事を考えていた時、ふいに後ろに人影を感じた。
ルイジアス殿下かな?
そう思って振り返ると……。
「大袈裟だな。ちょっとした行き違いがあっただけだ。
その誤解を解くためにも、2人でゆっくり話がしたいと思ったのだよ」
そう言って、また私に近付こうとする。
「お話があるのなら、ここでお願い致します。貴方様と2人だけで話す事など何もありませんわ」
私はマーク王子の目をしっかりと見据えながら告げた。
マーク王子は、その言葉を受けて一瞬睨みながら私を見るが、周囲の目を気にして、すぐに笑顔で話しかける。
「ここでは話しにくいのだ。自国の事なのでね。そなた達も元はロックウェル王国の民だ。そこのところを配慮してくれないか」
引きつった笑顔で話すマーク王子に、周囲の人々は、訝しげに見る。
この国に来てから、自国を心配する素振りも見せず、悠々自適に過ごしていた事は、貴族達にも伝わっていた。
そこに来て、執拗にルナリア嬢に絡むマーク王子の言動と、先程ルイジアス殿下が言っていた事を合わせて考えると、今流行っている舞台や小説と酷似している。
周りのマーク王子への不信感を感じ取ったルイジアス殿下は、ここぞとばかりに攻め込んだ。
「誤解や行き違いと、現在のロックウェル王国と、何か関係あるのか? 何故自分から追い出したルナリア嬢に固執する?」
「……貴殿には関係ない事だ」
「ここはお前の庭ではないぞ。好きなように振る舞うのはやめてくれないか。
2人きりでの話し合いは当たり前の事だが認められない。
それに今日は貴殿の歓迎パーティなのに、こんな雰囲気にしてもらっては困るんだがね」
┄┄┄┄ここはお前の庭ではないぞ
以前ロックウェル王国での騒動時に、マーク王子と出くわした時に言われたセリフ……
何気に根に持ってたのね……。
「マーク・ド・ロックウェル第一王子殿下。
改めてお伝え致します。
わたくし達シュナイダー侯爵家は、このカルステイン帝国の民として受け入れて頂き、この地にて、生きていく所存にございます。
わたくし一個人として、貴方様とお話する事などなく、ましてや、ロックウェル王国での出来事を今更誤解などと言われましても、もうどうでもいい事です」
私の発言に、ルイジアス殿下は満足気な笑顔で頷く。
「そうだ。ルナリア嬢は、この帝国の者となったのだ。そして、今日はこのパーティで私のパートナーとして参列している。
私のパートナーに執拗に誘いをかけるのはマナー違反だよ」
そう言って、ルイジアス殿下は私の肩を持って、自身に引き寄せる。
それを見ていた令嬢達が、
「「「キャー!」」」
と、騒ぐがルイジアス殿下は動じないで笑顔のままだ。
「くっ! ルイジアス殿の顔を立てて今日のところは引き下がろう。
ルナリア。またな」
そう言って、マーク王子はこの場を離れた。
前世の記憶が蘇ってから、前世の性格に引っ張られて客観的に見れるんだけど、マーク王子って、何であんなに小物感が強いんだろう。
ドラマのような、あんな捨て台詞、直に聞くなんて!
〈くっ!〉なんて、本当に言うんだ~
そんな感想を持ってボーッとしていた私にルイジアス殿下が気を遣ってくれる。
「ルナリア嬢、大丈夫か? あの男との対峙は疲れただろう?」
「全然大丈夫ですわ。むしろ、何故わたくしは今まであの王子の為に頑張っていたのか、
過去のわたくしを殴りたい気分ですもの」
私がそう言うと、ルイジアス殿下は吹き出す。
「昔から芯の強いところがあったけど、ますます逞しくなった感じがするよ。負けてられないな。私ももっと強くならなければ」
「まさか! ルイジアス殿下はとてもお強いし、頼りになりますわ。
あ、でも……ルイジアス殿下はか弱いご令嬢の方がお好みでしたら、パートナーがわたくしで申し訳ないですわね」
そういった私を見て、ルイジアス殿下はやや複雑そうな表情で、
「う~ん、やはり私はまだまだ伝えきれてないようだな……」
など、ブツブツ言っていた。
その後のパーティは滞りなく進行し、マーク王子は持ち前の王子スマイルを発揮している。
先程の様子など微塵も感じさせず、令嬢たちにも優しく微笑んで、令嬢達に囲まれて楽しんでいるようだ。
「なんて言うか……。あの王子様スマイルに騙される令嬢方がやっぱりいらっしゃるのですね」
呆れたように言葉をこぼしてしまった私を見て、ルイジアス殿下も「そうだねぇ」と、乾いた笑顔で頷く。
でも、これ以上マーク王子がこちらに来そうにない事に安心した。
「ルナリア嬢、少し休憩しようか。夜風にでも当たりに行くかい?」
ルイジアス殿下の誘いでバルコニーに出る。
夜風が心地よく、ホッと一息ついた。
「何か飲み物を取ってくるよ。すぐに戻るからここに居て?」
そう言われてお願いする事にした。
今日はやっぱり疲れたな。
ルイジアス殿下とのパートナーとして、この国で社交デビューするのは、やはり緊張した。
初めは刺すような視線ばかりで怖気付きそうになったけど、リザベラ様や公爵様達に救われて。
マーク王子の行動は予想してたけど、やはり今までの事を思うと気持ちのコントロールが効かなくなりそうだったし。
怒りに任せて精霊達の力をこんな所で使っちゃったら、大変なことになってしまうものね。
そんな事を考えていた時、ふいに後ろに人影を感じた。
ルイジアス殿下かな?
そう思って振り返ると……。
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