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30 マーク王子視点 ②
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どうなっている。
有り得ない。
精霊王だと!?
しかも、あのルナリアが精霊王の愛し子だと!?
しかし、確かにあの力は人外のものだ。
ルナリアの家族を処刑するタイミングで、あんな暴風雨や雷が落ちるなど確かに不可解。
狙ったように王宮に雷が落ち、祭壇を壊すなど、普通では考えられない。
あの力が精霊の力だとしたら、今回の祭儀は悪手でしかない。
僕は苛立っていた。
国中が、長雨のせいで至る所に被害が出ているのに、あの突発的な異常気象のせいで、さらに状況は悪化している。
さらに他の貴族たちや民衆らも、今回の件で精霊王を見ており、精霊の存在が明らかになった。
その精霊王の口からルナリアが愛し子だと言ったことは周知の事実だ。
そのルナリアを国外追放し、その家族を生贄として処刑しようとした事で、王家に、特に僕に非難が集中している。
あれから陛下には会っていない。
あの時陛下が口にした廃嫡も、今はまだ行使されていないが、このままだと時間の問題だろう。
何か策を考えなければ、僕の地位が危ない。
取り敢えずルナリアの国外追放は取り消して、この国に連れ戻さなければ……。
本当は嫌だが、精霊王の愛し子であるルナリアを、また僕の婚約者に戻せばいいのではないか?
この国は一夫一妻制が基本だが、王族は子に恵まれない時にのみ、側妃が認められる。
アイーシャには何とか待ってもらって、時期がくれば、アイーシャを側妃にすればいいのではないか?
ルナリアも祖国に戻ってこれる事を本当は望んでいるはず! それに僕に惚れていたのだ。僕が迎えに行けばすぐに戻って来るだろう。
そうだ! そのように陛下に申し出よう!
そう考えた僕はさっそく陛下に申し出るべく、陛下に会いに行った。
「何だ。マークよ、お前は廃嫡のはずだが?」
陛下の言葉に、怯みながらも申し出る。
「父上! 僕にしか出来ない事があるのです!」
その言葉に陛下は、胡乱げに僕を見る。
「何だそれは」
「ルナリアをこの国に連れ戻す事です」
それを聞いた陛下が鼻で笑う。
「何を言うかと思えば。
ルナリア嬢が何処に消えたのかも分からないのだぞ。
あの時、一緒にカルステイン帝国のルイジアス皇太子も居たとの報告があったが、カルステイン帝国に問い合わせたが一笑されたわ。この国に現れた前日までカルステイン帝国に居た皇太子が、1日でそちらの国に行くなど不可能だとな」
「それは……。そうだ! 精霊王の力を借りたのでは!?」
「証拠もなしに、それを証明する事は出来まい」
「では父上。この事態をどうするか、何かよいお考えは見つかったのですか?」
僕の言葉に父上はこめかみを押さえながら、溜息をつく。
「見つからんから困っておるのだ!
近隣諸国に助けを求めておるが、余り色良い返事が返って来ない。
外交を任せておったシュナイダー公爵からの要望でないなら、信用出来ないとな!」
以前より周辺諸国にも助けを求めているが、被害が大きすぎて、なかなか支援が追いつかない。
元々、他国とは、そんなに交流を持ってはいなかった。自国で十分資源は賄えていたし、外交は、ほぼシュナイダー公爵に任せきりで、特に必要性を見い出す事が出来なかったのだ。
それがここにきて仇となった。
周辺諸国は、この国で唯一懇意にしていたシュナイダー公爵の家族を、呪いという不確かな理由で処刑しようとした事を知っていたようだ。
しかもルナリアを国外追放した為に、精霊が怒っているなどという噂も周辺諸国まで届いていた。
その為、思いの外、周辺諸国からの助けは少なく、その事に陛下は更に機嫌が悪い。
しかし、何故、周辺諸国はそのような事を知っているのか……。
「父上! 僕がカルステイン帝国に行って、ルナリアを連れ戻します!
ルナリアは絶対にあの国にいるはずです!
僕が迎えに行けば必ずルナリアは戻って来るでしょう!
カルステイン帝国に出向く名目は救済支援の依頼としましょう。そして、ルナリアを探し出し、必ず連れ帰って来ます!」
「お前が?」
「はい! 一国の王子が直接出向いて要望しにいくとなれば無下には出来ないはず!
どうか僕を行かせて下さい!」
僕の訴えに父は驚く。
「公爵ほどではありませんが、僕も何度か他国には行ったことはあります。
あの国に願い出て援助を受ければ、他の諸国もそれに追随するでしょう。
ルナリアも連れ戻す事も出来、一石二鳥ではないでしょうか!」
その言葉に父は「う~む」と、考え込んでいる。
そして、決心したように顔を上げ、僕を真っ直ぐに見て告げた。
「よかろう。お前にその大役を任せようではないか。
カルステイン帝国に行き、ルナリア嬢を連れ戻し、ついでに我が国への支援の約束を取り付けて来い。それが出来たら廃嫡はなかった事にしてやる」
「はい!」
やった!
これで僕がこの任を果たせたら、僕の評価は一気に上がる!
ルナリアを連れ戻し、また婚約者にすれば、廃嫡がなくなるどころか、また王太子にも戻れるかもしれない。
アイーシャ、待っててくれ!
僕達の未来の為に、絶対この任務を遂行してみせるからね!
有り得ない。
精霊王だと!?
しかも、あのルナリアが精霊王の愛し子だと!?
しかし、確かにあの力は人外のものだ。
ルナリアの家族を処刑するタイミングで、あんな暴風雨や雷が落ちるなど確かに不可解。
狙ったように王宮に雷が落ち、祭壇を壊すなど、普通では考えられない。
あの力が精霊の力だとしたら、今回の祭儀は悪手でしかない。
僕は苛立っていた。
国中が、長雨のせいで至る所に被害が出ているのに、あの突発的な異常気象のせいで、さらに状況は悪化している。
さらに他の貴族たちや民衆らも、今回の件で精霊王を見ており、精霊の存在が明らかになった。
その精霊王の口からルナリアが愛し子だと言ったことは周知の事実だ。
そのルナリアを国外追放し、その家族を生贄として処刑しようとした事で、王家に、特に僕に非難が集中している。
あれから陛下には会っていない。
あの時陛下が口にした廃嫡も、今はまだ行使されていないが、このままだと時間の問題だろう。
何か策を考えなければ、僕の地位が危ない。
取り敢えずルナリアの国外追放は取り消して、この国に連れ戻さなければ……。
本当は嫌だが、精霊王の愛し子であるルナリアを、また僕の婚約者に戻せばいいのではないか?
この国は一夫一妻制が基本だが、王族は子に恵まれない時にのみ、側妃が認められる。
アイーシャには何とか待ってもらって、時期がくれば、アイーシャを側妃にすればいいのではないか?
ルナリアも祖国に戻ってこれる事を本当は望んでいるはず! それに僕に惚れていたのだ。僕が迎えに行けばすぐに戻って来るだろう。
そうだ! そのように陛下に申し出よう!
そう考えた僕はさっそく陛下に申し出るべく、陛下に会いに行った。
「何だ。マークよ、お前は廃嫡のはずだが?」
陛下の言葉に、怯みながらも申し出る。
「父上! 僕にしか出来ない事があるのです!」
その言葉に陛下は、胡乱げに僕を見る。
「何だそれは」
「ルナリアをこの国に連れ戻す事です」
それを聞いた陛下が鼻で笑う。
「何を言うかと思えば。
ルナリア嬢が何処に消えたのかも分からないのだぞ。
あの時、一緒にカルステイン帝国のルイジアス皇太子も居たとの報告があったが、カルステイン帝国に問い合わせたが一笑されたわ。この国に現れた前日までカルステイン帝国に居た皇太子が、1日でそちらの国に行くなど不可能だとな」
「それは……。そうだ! 精霊王の力を借りたのでは!?」
「証拠もなしに、それを証明する事は出来まい」
「では父上。この事態をどうするか、何かよいお考えは見つかったのですか?」
僕の言葉に父上はこめかみを押さえながら、溜息をつく。
「見つからんから困っておるのだ!
近隣諸国に助けを求めておるが、余り色良い返事が返って来ない。
外交を任せておったシュナイダー公爵からの要望でないなら、信用出来ないとな!」
以前より周辺諸国にも助けを求めているが、被害が大きすぎて、なかなか支援が追いつかない。
元々、他国とは、そんなに交流を持ってはいなかった。自国で十分資源は賄えていたし、外交は、ほぼシュナイダー公爵に任せきりで、特に必要性を見い出す事が出来なかったのだ。
それがここにきて仇となった。
周辺諸国は、この国で唯一懇意にしていたシュナイダー公爵の家族を、呪いという不確かな理由で処刑しようとした事を知っていたようだ。
しかもルナリアを国外追放した為に、精霊が怒っているなどという噂も周辺諸国まで届いていた。
その為、思いの外、周辺諸国からの助けは少なく、その事に陛下は更に機嫌が悪い。
しかし、何故、周辺諸国はそのような事を知っているのか……。
「父上! 僕がカルステイン帝国に行って、ルナリアを連れ戻します!
ルナリアは絶対にあの国にいるはずです!
僕が迎えに行けば必ずルナリアは戻って来るでしょう!
カルステイン帝国に出向く名目は救済支援の依頼としましょう。そして、ルナリアを探し出し、必ず連れ帰って来ます!」
「お前が?」
「はい! 一国の王子が直接出向いて要望しにいくとなれば無下には出来ないはず!
どうか僕を行かせて下さい!」
僕の訴えに父は驚く。
「公爵ほどではありませんが、僕も何度か他国には行ったことはあります。
あの国に願い出て援助を受ければ、他の諸国もそれに追随するでしょう。
ルナリアも連れ戻す事も出来、一石二鳥ではないでしょうか!」
その言葉に父は「う~む」と、考え込んでいる。
そして、決心したように顔を上げ、僕を真っ直ぐに見て告げた。
「よかろう。お前にその大役を任せようではないか。
カルステイン帝国に行き、ルナリア嬢を連れ戻し、ついでに我が国への支援の約束を取り付けて来い。それが出来たら廃嫡はなかった事にしてやる」
「はい!」
やった!
これで僕がこの任を果たせたら、僕の評価は一気に上がる!
ルナリアを連れ戻し、また婚約者にすれば、廃嫡がなくなるどころか、また王太子にも戻れるかもしれない。
アイーシャ、待っててくれ!
僕達の未来の為に、絶対この任務を遂行してみせるからね!
応援ありがとうございます!
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