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しおりを挟むルナリア達は、馬を走らせながらも、道中ほぼ人に会わないことに安堵していた。
降り続く雨は、人の足を遠のかせ、街中でも店が閉まっており、閑散としている。
自分がいた頃とは、全く様子が変わっている事に、ルナリアは驚きを隠せないでいた。
こんなにも変わり果てているなんて……
活気に満ち溢れていたあの頃の面影が全くない。
ロックウェル王国の現状は、想像以上であった事を実感する。
そんな私達の元に、ルイジアス殿下が飛ばした伝書鳩が戻ってきた。
一旦、木陰で休憩を取り、そこで手紙を見ると、それは予想通り父からの手紙の返事であった。
「今、シュナイダー殿たちは、元シュナイダー公爵の屋敷近くに潜伏しているようだ。
場所が書いてあるから、そこまで行こう」
ルイジアス殿下の言葉に頷く。
今は小雨になっている。今のうちに急いだ方がいい。
私たちは、父の潜伏先まで先を急いだ。
一方、ロックウェル王国では ……
「まだ、何も解決出来んのか! このままでは国は崩壊するぞ!」
ロックウェル王国の国王が苛立ちながら叫ぶ。
それを受けて宰相ら官僚たちは、戸惑いながらも国王に進言した。
「そもそもシュナイダー公爵家に、この災害の原因や、回避する方法が見つかる保証はないのです。
他に対処する方法となるものを、同時に探さないと……。何かしら早急に対応しないと、また国民の不満は国に、ひいては国王様に向いてしまいますぞ」
宰相の言葉に国王は、更に苛立つ。
「だから、それを考えろ! 何のためにお前たちがいるんだ!」
国王の叫びに、誰もが口をつぐむ。
「何でもいい! 何か案を出せ!」
国王の言葉に、恐る恐る1人の官僚が声を上げる。
「国王陛下。昔、この国は精霊と共に初代国王が作り上げたというのはご存知でしょうか?」
「また、その話か! 精霊などいるわけ無いだろう!」
国王の怒りは収まらない。
「でも、この地は本来、人が住めるような土地ではなかったと記述に残ってます。それを精霊の力を借りて、住めるようにしてもらったと。
なので、祭壇を作り、精霊にお願いしてみてはどうでしょう?」
官僚の言葉に、宰相も頷く。
「確かに、昔の史書にそのように書かれてありました。精霊の恵みに、人間は感謝を表さないといけないと。
陛下、どうでしょう。
祭壇を作り、供物を捧げては?」
宰相の言葉に、国王は顔を歪めながら
「供物? 何を供えるというのだ」
「そうですね……。この国は今、食料も不足していますし……。
……では、こういうのはどうでしょう?
呪いをかけたルナリア嬢の家族を生贄に捧げ、精霊に助けを求める儀式を行うというのは? 国民の怒りを鎮め、精霊にも我々の敬意を示せる」
その発言に、他の官僚たちは絶句する。
もともと、呪いだなんて中枢にいる者は誰も信じていないのに、更にその家族を生贄に捧げるなど……。
「いくらなんでも……」
「生贄なんて非現実的な……」
「シュナイダー公爵が居たら何ておっしゃるか」
少しずつ意見する官僚や、貴族らに対し、
「では、他に何か有効な案でも?」
と、宰相は強気で言葉を放つ。
他の対応策も見つからない今、宰相に意見する事も出来ない。
「シュナイダーは、最早公爵ではない。あの一家はわが王家に背いたのだ。ただの罪人。
公爵位は剥奪する」
追随するように、陛下がそう言った。
それを聞いた官僚たちは、更に絶句する。
国王や宰相の圧政に、官僚たちを取り巻く微妙な雰囲気の中、陛下は決断した。
「今すぐ祭壇を作れ。
この国を助けてくれるよう、精霊に祈りを込めて儀式を行う。
もちろんその供物は、捕らえてあるシュナイダーの妻や子供達だ」
国王陛下のその決定に、官僚達、他の貴族達は戸惑いながらも、度重なる災害にて正常な判断が鈍り、結局は同意した。
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