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ルイジアス殿下の言葉に、「殿下!?」と、デューカスか叫ぶ。
「悪い、デューカス。私はルナリア嬢と共に行く。絶対に無事にルナリア嬢の家族を助け出して国に戻ってくる。
だから信じて待っていて欲しいと陛下に伝えてくれないか」
ルイジアスの真剣な表情に、デューカスは何も言えなかった。
「頼む」
その言葉を最後に、ルイジアスとルナリア2人で頷きあい、魔物の森に入ろうとする。
デューカスは、ルイジアスの固い意思に諦めたかのように
「待ってください」
と、声を掛けた。
デューカスの言葉に振り返ると、
「馬を連れて行って下さい。最低限の旅支度は乗せてあります」
そう言って、2頭の馬を差し出す。
「ありがとう」
ルイジアスは、デューカスの思いに友愛の意を込めて礼を言った。
デューカスらに見守られながら、改めてルナリアとルイジアスは森に入った。
そして、精霊王様に強く願い出る。
「精霊王様! お願いがあります。
わたくしの家族を救うため、すぐにロックウェル王国に行きたいのです。どうかわたくし達に力をお貸しください!」
私の叫びに、精霊たちが光を強めて周りを飛び回る。
すると、精霊王様の声が聞こえた。
『帰ったと思ったら、また入ってきたのか。
まぁ、いい。お前の願いなら聞いてやる。
その男と共にロックウェル王国への入り口まで飛ばせば良いか?』
「感謝申し上げます。精霊王様!」
私の叫びに、ルイジアス殿下も続き礼を言う。
『そこの者。特別に一緒に飛ばしてやるんだから、ルナリアをちゃんと守れよ』
精霊王様の言葉に、
「命にかえても」
と、ルイジアス殿下は真剣に答える。
その瞬間、今まで居た場所から反対側の魔物の入り口、一気にロックウェル王国へと続く道の前へと飛んでいた。
「すごい……。ロックウェル王国まで来るのに、あっという間……。迂回して来れば10日以上はかかるのに……」
と、ルイジアスは呆然としている。
そんなルイジアス殿下を横目に、またこの場所に立っている自分を振り返る。
こんな形で、またロックウェル王国に入ることになるなんて……。
カルステイン帝国側では天候に恵まれ、良い天気で晴れていたのに、今、目の前に広がる光景は、長雨で道はぬかるみ、所々に大きな水溜まりが出来ていて、真っ直ぐに歩くのが困難な状態。
どんよりと暗雲に包まれ、国全体が暗く感じる。
ロックウェル王国は雨続きだということを聞いていたため、森に入る時に雨除け用にマントを羽織っていたが、あっという間にずぶ濡れになってしまった。
国外追放の身だから、このまま入るわけには行かないと思っていたが、この雨で顔を遮る事は出来そう……。
そう考え、マントの帽子を深く被り顔を隠す。そして、ルイジアス殿下を振り返る。
「ルイジアス殿下、行きましょう!」
その言葉に、ハッとしたようにルイジアス殿下は頷く。
「ああ、行こう!」
ルイジアス殿下もマントの帽子を深く被り、私に手を差し出し、馬に乗るのを手伝ってくれた後、自分ももう一頭の馬に乗る。
2人は雨の中、ロックウェル王国の中枢に向かって、馬を走らせた。
一方、一足先にロックウェル王国に入っていたシュナイダーは、元シュナイダー公爵家の屋敷の近くで、現在の状態を見ながら、どう動くか思案していた。
こっそり妻たちをこの国から一緒に連れ出し、カルステイン帝国に亡命するつもりであったのに、何故このような状態になっているのか。
カルステイン帝国からの知らせを受けて、改めてこの国の中枢、ひいては王族は腐っていると怒りを露わにする。
シュナイダーは、捕まっている妻や、ルナリアより3歳年下の長男や、まだ6歳の幼い次男を思い、守りきれなかった自分の不甲斐なさを責める。
何とか無事に助け出す手立てはないか、考えてもいい案が思いつかず、心配と苛立ちでどうにかなりそうだった。
そこに、伝書鳩を通してルイジアス殿下からの手紙が届いた。
「えっ! ルナリアと共にこの国に入って来ただと!?」
そこには、精霊王の力を借りて魔物の森からこの国に入ってきた事、落ち合って一緒に家族を助け出す方法を探そうという内容が書かれていた。
「悪い、デューカス。私はルナリア嬢と共に行く。絶対に無事にルナリア嬢の家族を助け出して国に戻ってくる。
だから信じて待っていて欲しいと陛下に伝えてくれないか」
ルイジアスの真剣な表情に、デューカスは何も言えなかった。
「頼む」
その言葉を最後に、ルイジアスとルナリア2人で頷きあい、魔物の森に入ろうとする。
デューカスは、ルイジアスの固い意思に諦めたかのように
「待ってください」
と、声を掛けた。
デューカスの言葉に振り返ると、
「馬を連れて行って下さい。最低限の旅支度は乗せてあります」
そう言って、2頭の馬を差し出す。
「ありがとう」
ルイジアスは、デューカスの思いに友愛の意を込めて礼を言った。
デューカスらに見守られながら、改めてルナリアとルイジアスは森に入った。
そして、精霊王様に強く願い出る。
「精霊王様! お願いがあります。
わたくしの家族を救うため、すぐにロックウェル王国に行きたいのです。どうかわたくし達に力をお貸しください!」
私の叫びに、精霊たちが光を強めて周りを飛び回る。
すると、精霊王様の声が聞こえた。
『帰ったと思ったら、また入ってきたのか。
まぁ、いい。お前の願いなら聞いてやる。
その男と共にロックウェル王国への入り口まで飛ばせば良いか?』
「感謝申し上げます。精霊王様!」
私の叫びに、ルイジアス殿下も続き礼を言う。
『そこの者。特別に一緒に飛ばしてやるんだから、ルナリアをちゃんと守れよ』
精霊王様の言葉に、
「命にかえても」
と、ルイジアス殿下は真剣に答える。
その瞬間、今まで居た場所から反対側の魔物の入り口、一気にロックウェル王国へと続く道の前へと飛んでいた。
「すごい……。ロックウェル王国まで来るのに、あっという間……。迂回して来れば10日以上はかかるのに……」
と、ルイジアスは呆然としている。
そんなルイジアス殿下を横目に、またこの場所に立っている自分を振り返る。
こんな形で、またロックウェル王国に入ることになるなんて……。
カルステイン帝国側では天候に恵まれ、良い天気で晴れていたのに、今、目の前に広がる光景は、長雨で道はぬかるみ、所々に大きな水溜まりが出来ていて、真っ直ぐに歩くのが困難な状態。
どんよりと暗雲に包まれ、国全体が暗く感じる。
ロックウェル王国は雨続きだということを聞いていたため、森に入る時に雨除け用にマントを羽織っていたが、あっという間にずぶ濡れになってしまった。
国外追放の身だから、このまま入るわけには行かないと思っていたが、この雨で顔を遮る事は出来そう……。
そう考え、マントの帽子を深く被り顔を隠す。そして、ルイジアス殿下を振り返る。
「ルイジアス殿下、行きましょう!」
その言葉に、ハッとしたようにルイジアス殿下は頷く。
「ああ、行こう!」
ルイジアス殿下もマントの帽子を深く被り、私に手を差し出し、馬に乗るのを手伝ってくれた後、自分ももう一頭の馬に乗る。
2人は雨の中、ロックウェル王国の中枢に向かって、馬を走らせた。
一方、一足先にロックウェル王国に入っていたシュナイダーは、元シュナイダー公爵家の屋敷の近くで、現在の状態を見ながら、どう動くか思案していた。
こっそり妻たちをこの国から一緒に連れ出し、カルステイン帝国に亡命するつもりであったのに、何故このような状態になっているのか。
カルステイン帝国からの知らせを受けて、改めてこの国の中枢、ひいては王族は腐っていると怒りを露わにする。
シュナイダーは、捕まっている妻や、ルナリアより3歳年下の長男や、まだ6歳の幼い次男を思い、守りきれなかった自分の不甲斐なさを責める。
何とか無事に助け出す手立てはないか、考えてもいい案が思いつかず、心配と苛立ちでどうにかなりそうだった。
そこに、伝書鳩を通してルイジアス殿下からの手紙が届いた。
「えっ! ルナリアと共にこの国に入って来ただと!?」
そこには、精霊王の力を借りて魔物の森からこの国に入ってきた事、落ち合って一緒に家族を助け出す方法を探そうという内容が書かれていた。
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