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しおりを挟む精霊王様の力で一瞬で違う場所に飛ばされた私とルイジアス殿下は、目の前で満身創痍で呆然と座り込んでいる父達にすぐに気付いた。
「お父様!」
私はすぐに父に駆け寄り、抱きついた。
「ルナリア!?」
突然現れたルナリアとルイジアス殿下に、シュナイダー公爵一行は驚き、目を疑った。
しかし、髪色は違うが、見まごうことの無い翡翠色の眼が、今まで探していたルナリア本人だと気づき、更に驚いたようだ。
「お父様! ご無事で良かった! ごめんなさい、わたくしのせいで、こんな目に合わせてしまって!」
泣きながらそういうルナリアを、公爵は信じられない思いで何度も聞いた。
「ルナリア、本当にルナリアなのか?
私は魔物に騙されてないだろうか? ルナリア、本物のルナリアなのか?」
まだ呆然としながらもシュナイダー公爵は泣きながら、ルナリアを抱きしめる。
「本物ですよ、お父様。この森の主である精霊王様に助けて頂いたのです」
ルナリアはそう言うも、精霊王の存在を皆は信じられないようだ。
でも、この森で体験した不可思議な出来事を思い出し、どう受け止めればいいのか分からない様子であった。
「本来、この森は人間は侵入不可だそうです。この度は特別に精霊王様に助けて頂きました。
この森から帝国までの1本道を作って下さるそうです。その道を辿って進むと半日くらいで森を抜けられます」
私がそう説明した途端、森の木々たちが一斉に左右に動き出し、帝国の方角に向かって、一直線の道が出来た。
全員が呆気に取られたが、そこに精霊たちが色んな木の実や、飲み水を持ってきてくれる。
『精霊王様が持って行ってやれって~』
『みんな、何も食べてないから~』
『力が入らないね~』
私は精霊たちの話が聴こえるが、他の人はそうではない。
急に木の実や、飲み水が目の前に現れた事に更に驚き、それらが光に包まれながらフワフワと浮かんでくる様は、まさに信じられない光景であった。
「精霊王様たちからの差し入れだそうです。
帝国まで、1本道とはいえ半日は歩かなければならないそうですから」
そう説明すると、初めは恐る恐るといったように手を伸ばしたが、それを、口に入れた途端、
「美味しい!」
と、一行が口々に叫びながら食べ始めた。
「ありがとう、精霊さんたち」
私がそう言うと、
『どういたしまして~』
『ルナが喜ぶから~』
と、嬉しそうに私の周りを飛び回る。
私の周りに光が集まり、光が飛び回っている様子を見て、皆は精霊たちの存在を信じた様子だ。
「お嬢様の周りを光がいっぱい飛び回っている……」
「この光が精霊なのか?」
「とても信じ難いが、この光景は現実なんだよな?」
その光景を見ながら、口々に私設騎士団の面々は呟く。
まるでその姿は女神を彷彿させ、神々しさに頭を垂れる思いだ。
改めて自分達は救われたのだと実感した。
満身創痍であった公爵一行らは、お腹も満たされ、ようやく余裕が出たようだ。
公爵はルナリアと共に現れたルイジアスに声を掛けた。
「ルイジアス殿下。貴方がルナリアと共に現れたので驚きましたぞ。手紙を見て、来て下さったのだろうか。ご迷惑おかけして申し訳ない」
「あ……いや、その……」
そう言われてルイジアス殿下は、バツが悪そうに言葉に詰まる。
そんなルイジアス殿下を見て、少し笑ってしまった。
そうよね、ルイジアス殿下は耳が痛いわよね。
暫くは気まずい思いをしてもらいましょう。
父が助かったから良かったものの、間に合わなかったら、とても許せそうになかったもの。
「お父様、詳しくは帝国に着いた後でお話しましょう。先に戻らなくては日が暮れますわ」
「ああ、そうだな。せっかく迎えに来てくれたんだ。早くここを出なければならないな」
公爵はそう言って頷く。
その言葉に更に殿下は、気まずそうだ。
取り敢えず、父達を連れて早くこの森から出なければ。
父達が、無事に帝国に着いてから、もう一度、今度は私一人でこの森を、精霊王様を訪ねてみよう。
先程、木の枝が突然斧に変形した力は何だったのか、前世の事も知っているようだったし、色々と尋ねたいことがある。
精霊王様も、話したい事があると言われていたものね。
そう考えた私は、改めて父やルイジアス殿下の方を見た。
「では、参りましょう」
私がそう言うと、1本道の遠く先にある帝国に向かって、一行は歩き出した。
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