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アーガスト領の祭りの当日。
「ルナちゃん、本当に1人で大丈夫?」
ポルカさんが心配するも、
「はい! 大丈夫です。ポルカさんは気にせず、親子水入らずで、祭りを楽しんで来てくださいね」
私は笑顔で送り出す。
「お姉ちゃん、行ってくるね!」
アンナちゃんも楽しそうにそう言って、両親に手を繋いでもらいながら、祭りに出掛けた。
「さぁ! 私は、頑張って売らなきゃね!」
ここは、商店街の真ん中に位置するため、祭りの間は、客足も一気に増える。
今まで花屋では、そんなに客は来なかったが、今年は新商品があるのだ。
私は気合いを入れて、店の前に祭り用に作った品々を並べ始めた。
「あら? ちょっと、あそこの花、綺麗」
「あの花籠、可愛い!」
「花のいい匂いがするわ」
祭りを見に来た客が、花屋の前に並んである品々を見て、足を止める。
予想どおり目を引き、特に女性からは好感触の反応だ。
「どうぞ、お手に取って見てください。匂い袋は、持ってるだけでいい香りがするので、香水代わりにもなりますよ」
私はここぞとばかりに、宣伝する。
やはり、見た事のない作りの物ばかりで、かなり注目を浴びている。
どんどん人が集まり、客の対応に追われている時に、男性の声がした。
「ここは、花屋ですね。何やら珍しい物が売っていると、聞きましたが、どのような物があるのです?」
その言葉に追随するように、そばに控えていた従者が、
「こちらは、ここの領主のご子息デューカス様でございます」
と、伝えてきた。
慌てて私はカーテシーをしそうになったが、平民は、カーテシーなどしない。
頭を下げてお辞儀をしたあと、返答した。
「ようこそお越しくださいました。今、こちらで売っているのは、当店で作った、花を使った新商品でございます」
私の返答に、びっくりした様子であったが、商品が気になるらしく、色々見ている。
「この花籠、妹に買っていこうか。気分転換になるだろう」
デューカスが、そう言った時、
『ルナ~、この人の妹、病気だよ』
『あの子の病には、コリン草が効くかも~』
と、精霊たちが教えてくれる。
「ありがとうございます。ご購入の記念として、こちらの匂い袋もお付けしますね」
と、コリン草入りの匂い袋を渡した。
「この匂い袋は、気分を落ち着かせる事が出来ますので、枕元に置いておくと、よく眠れますよ」
そう説明すると、デューカスは笑顔で受け取り、帰って行った。
その後も、客足は途絶えず、忙しい1日を終えたのだった。
「殿下、到着されたのですね」
祭りの視察を終えて、アーガスト領の屋敷に戻ったデューカスは、遅れて到着したルイジアスを見て、無事に着いたことにホッとした。
急にアーガスト領の祭りの視察に参加する事を決めたルイジアスは、陛下の許可を得た後、数日間は王宮を留守にする為に、急ぎの仕事などを終えてから来る事にしたのだ。
間に合わないのではないかと心配したが、明日は祭りに参加出来そうだ。
デューカスは、そう思い、明日の視察の経路や、警護体制などを頭に思い浮かべていると、
「うん? それは何だ?」
と、ルイジアスが、デューカスの持っている花籠と匂い袋に反応した。
「ああ、これは視察の時に、花屋が新商品として売り出していたんです。
妹のリザベラにプレゼントしようと思って」
デューカスがそう返事するも、ルイジアスは、花籠と匂い袋をジッと見ている。
「どうされましたか?」
デューカスの問いに、
「いや、気のせいか……。」
ルイジアスは、しばらく考え込んでいたが、
「明日祭りに行く時に、その花屋に連れて行ってくれ」
と、デューカスに頼んだ。
「もちろん構いませんが、何故です?」
「……ちょっと確かめたくて」
そう言ったきり、黙り込むルイジアスを不思議そうに、デューカスは見ていた。
(あの、花籠と匂い袋……かすかに光っているような? たまに外で光を見掛けるが、物にその光が見えたことはない。
それにあの光……。何処かで見たような懐かしさを感じるのは何故だ?)
ルイジアスは、疑問を感じながら、明日絶対にその花屋に行ってみようと考えた。
「ルナちゃん、本当に1人で大丈夫?」
ポルカさんが心配するも、
「はい! 大丈夫です。ポルカさんは気にせず、親子水入らずで、祭りを楽しんで来てくださいね」
私は笑顔で送り出す。
「お姉ちゃん、行ってくるね!」
アンナちゃんも楽しそうにそう言って、両親に手を繋いでもらいながら、祭りに出掛けた。
「さぁ! 私は、頑張って売らなきゃね!」
ここは、商店街の真ん中に位置するため、祭りの間は、客足も一気に増える。
今まで花屋では、そんなに客は来なかったが、今年は新商品があるのだ。
私は気合いを入れて、店の前に祭り用に作った品々を並べ始めた。
「あら? ちょっと、あそこの花、綺麗」
「あの花籠、可愛い!」
「花のいい匂いがするわ」
祭りを見に来た客が、花屋の前に並んである品々を見て、足を止める。
予想どおり目を引き、特に女性からは好感触の反応だ。
「どうぞ、お手に取って見てください。匂い袋は、持ってるだけでいい香りがするので、香水代わりにもなりますよ」
私はここぞとばかりに、宣伝する。
やはり、見た事のない作りの物ばかりで、かなり注目を浴びている。
どんどん人が集まり、客の対応に追われている時に、男性の声がした。
「ここは、花屋ですね。何やら珍しい物が売っていると、聞きましたが、どのような物があるのです?」
その言葉に追随するように、そばに控えていた従者が、
「こちらは、ここの領主のご子息デューカス様でございます」
と、伝えてきた。
慌てて私はカーテシーをしそうになったが、平民は、カーテシーなどしない。
頭を下げてお辞儀をしたあと、返答した。
「ようこそお越しくださいました。今、こちらで売っているのは、当店で作った、花を使った新商品でございます」
私の返答に、びっくりした様子であったが、商品が気になるらしく、色々見ている。
「この花籠、妹に買っていこうか。気分転換になるだろう」
デューカスが、そう言った時、
『ルナ~、この人の妹、病気だよ』
『あの子の病には、コリン草が効くかも~』
と、精霊たちが教えてくれる。
「ありがとうございます。ご購入の記念として、こちらの匂い袋もお付けしますね」
と、コリン草入りの匂い袋を渡した。
「この匂い袋は、気分を落ち着かせる事が出来ますので、枕元に置いておくと、よく眠れますよ」
そう説明すると、デューカスは笑顔で受け取り、帰って行った。
その後も、客足は途絶えず、忙しい1日を終えたのだった。
「殿下、到着されたのですね」
祭りの視察を終えて、アーガスト領の屋敷に戻ったデューカスは、遅れて到着したルイジアスを見て、無事に着いたことにホッとした。
急にアーガスト領の祭りの視察に参加する事を決めたルイジアスは、陛下の許可を得た後、数日間は王宮を留守にする為に、急ぎの仕事などを終えてから来る事にしたのだ。
間に合わないのではないかと心配したが、明日は祭りに参加出来そうだ。
デューカスは、そう思い、明日の視察の経路や、警護体制などを頭に思い浮かべていると、
「うん? それは何だ?」
と、ルイジアスが、デューカスの持っている花籠と匂い袋に反応した。
「ああ、これは視察の時に、花屋が新商品として売り出していたんです。
妹のリザベラにプレゼントしようと思って」
デューカスがそう返事するも、ルイジアスは、花籠と匂い袋をジッと見ている。
「どうされましたか?」
デューカスの問いに、
「いや、気のせいか……。」
ルイジアスは、しばらく考え込んでいたが、
「明日祭りに行く時に、その花屋に連れて行ってくれ」
と、デューカスに頼んだ。
「もちろん構いませんが、何故です?」
「……ちょっと確かめたくて」
そう言ったきり、黙り込むルイジアスを不思議そうに、デューカスは見ていた。
(あの、花籠と匂い袋……かすかに光っているような? たまに外で光を見掛けるが、物にその光が見えたことはない。
それにあの光……。何処かで見たような懐かしさを感じるのは何故だ?)
ルイジアスは、疑問を感じながら、明日絶対にその花屋に行ってみようと考えた。
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