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私が花屋を手伝い始めて、少し慣れた頃、
「ルナちゃん、何かいい考えはないかしら? そろそろこの町のお祭りがあるのよ。
お祭りの日は、それぞれの店で、何か売り出すんだけど、うちは、花屋だから、いつも同じような物しか出せなくて……」
と、ポルカさんが相談してきた。
ポルカさんが言うには、お祭りの日に各店が、それぞれの趣向を凝らした物を、店の前に並べ、1番売り上げに貢献した店は、領主様から褒美が貰えるのだとか。
お祭りの日に、花の苗や鉢植えを買う客は、ほとんどいないらしく、売れて花束くらいらしい。
だから、いつもお祭りの日は憂鬱なのだと話していた。
「本当は、売り上げなんか気にせず、店を閉めてアンナをお祭りに連れて行ってあげたいんだけど、ここらの商店街連合に所属しているから、うちだけ閉めるっていうのも気が引けてね……」
「ポルカさん、その日の店番は私がします。
だからポルカさんは、アンナちゃんとお祭りを楽しんできて下さい」
困った表情で話すポルカさんを見て、私はすぐに名乗り出た。
ようやくお世話になってる恩返しが少しは出来るのだ。役にたちたい!
そう思っている私に
「そんなつもりで言ったんじゃないのよ!?
ごめんなさい、さっきの話は気にしないで」
と、ポルカさんは慌てて言った。
「いえ、どうか私に任せて下さい。やっと少しはポルカさん達の役に立てそうで、私も凄く嬉しいんです。
それに、当日売る商品も、私に任せて貰えませんか? ちょっと考えがあるんです」
私がそういうと、「考え?」と、ポルカさんは不思議そうだ。
私の考えとは、前世の知識だ。
私は前世では、ポプリ作りにハマっていた。
アレンジフラワーの教室にも通ったし、趣味でアロマオイルも手作りでやっていたのだ。
その知識をここで使わなくてどうするのだ!
私は心の中で、そう叫びながらポルカさんに伝えた。
「商品を作るために、色んな草花を少し分けて頂きたいんですけど、大丈夫でしょうか?」
「もちろんよ。でも、本当にいいの?
負担に思ってないかしら? 無理はしなくていいんだからね」
優しく言ってくれるポルカさんに大丈夫だと伝え、試作品が出来たら、見てほしいとお願いして、さっそく作るものの構想を練った。
一方、ルナリアが国外追放された後のロックウェル王国では……。
「マーク王太子殿下。一体、うちの娘が何をしたというのです? あまりの仕打ちに言葉も出ませんでしたぞ」
ルナリアの父、シュナイダー公爵は、怒りに震えていた。
陛下と共に、地方での仕事で卒業式には行けなかったが、卒業式後は、結婚に向けて準備をしなければと考えていたのに。
まさか、その婚約相手が、あろう事か男爵家の養女と浮気をし、その相手と結ばれたいが為に、ルナリアに謂れのない冤罪を吹っかけて、陛下に許可もなく国外追放するとは!
しかも、国外追放した先は、隣国のカルステイン帝国を阻む魔物の森。
普通に考えて、生きているはずがない。
自分の怒りの感情が今にも噴き出しそうになるのを、必死で堪えながら、殿下に尋ねる。
「あの女は、アイーシャを虐めていたんだ! アイーシャがそう言っていたから、間違いない。それに、アイーシャを階段からも突き落としたと聞いたんだ!
そんな女、王太子妃になんて出来る訳ないだろう!」
殿下が叫んでいるが、もしそれが本当の事だとしても、その場で国外追放する権限など、殿下にはない。
ましてや、何の調べもせず、証拠もない、ただその男爵令嬢が言ったことだけで、それを鵜呑みするとは……。
あまりに愚鈍な考え方をしている王太子のその発言に、それを聞いている王宮内にいる者たちは、苦々しそうな表情で王太子を見ていた。
「愚かな……とても王太子殿下のなさる事ではありませんな。知っておられますかな?
うちの娘が貴方が本来するはずの仕事を肩代わりして行なっていた事を。
王太子妃教育と合わせて、貴方の仕事までしていたので、娘はとても学園に通う時間がありませんでした。
まぁ、娘は学園に通わずとも、覚えるべき勉強は、すでに修得しておりましたし、学園には、ただ交流目的で通わせるつもりでしたから、私も目を瞑っておりましたが……
あなた方が、学園で好き放題していた時、娘は学園に通わず、ここ王宮内でほぼ1日を過ごしていた。
そんな娘が、どうやって、その男爵家の小娘を虐め、階段から突き落とすことが出来るのか。ぜひ教えてもらいたいものですな」
公爵の言い分に、マークは怯みながらも抵抗した。
「そんなの、誰かにやらせたに違いない!
公爵令嬢に命令されれば、断れないからな!」
「では、その命令されたという者を連れて来て頂こう。本当にうちの娘に命令されたのか、しっかりと問い正さなければ。
だが、もし、そんな者はおらず、全てが偽りであったと分かった時には。
殿下は、どう責任を取って頂けるのでしょうかな」
公爵が鋭く言い放つと、今まで黙って聞いていた陛下が、疲れた様子で言った。
「もうよい。これは明らかに王太子の越権行為だ。お前の浅はかな考えにより、1人の尊い命が犠牲になった。
これは、余りにも重い罪だ。
よって、今、この場より第一王子マークは王太子を廃し、第二王子を王太子とする」
陛下の言葉に、マークは驚き、異を唱えるも、周りの人々は、その決定を粛々と受け入れた。
ただシュナイダー公爵は、それだけではとても許すことが出来なかった。
(ふざけるな! 娘をなんだと思ってるんだ! まだ死んだとは決まっていないのに陛下の言い様も許せるものか! こんな奴らに仕えていたとは!)
シュナイダー公爵は、自ら魔物の森に行き、何かルナリアの痕跡を見つけたいと、固く心に決めたのだった。
「ルナちゃん、何かいい考えはないかしら? そろそろこの町のお祭りがあるのよ。
お祭りの日は、それぞれの店で、何か売り出すんだけど、うちは、花屋だから、いつも同じような物しか出せなくて……」
と、ポルカさんが相談してきた。
ポルカさんが言うには、お祭りの日に各店が、それぞれの趣向を凝らした物を、店の前に並べ、1番売り上げに貢献した店は、領主様から褒美が貰えるのだとか。
お祭りの日に、花の苗や鉢植えを買う客は、ほとんどいないらしく、売れて花束くらいらしい。
だから、いつもお祭りの日は憂鬱なのだと話していた。
「本当は、売り上げなんか気にせず、店を閉めてアンナをお祭りに連れて行ってあげたいんだけど、ここらの商店街連合に所属しているから、うちだけ閉めるっていうのも気が引けてね……」
「ポルカさん、その日の店番は私がします。
だからポルカさんは、アンナちゃんとお祭りを楽しんできて下さい」
困った表情で話すポルカさんを見て、私はすぐに名乗り出た。
ようやくお世話になってる恩返しが少しは出来るのだ。役にたちたい!
そう思っている私に
「そんなつもりで言ったんじゃないのよ!?
ごめんなさい、さっきの話は気にしないで」
と、ポルカさんは慌てて言った。
「いえ、どうか私に任せて下さい。やっと少しはポルカさん達の役に立てそうで、私も凄く嬉しいんです。
それに、当日売る商品も、私に任せて貰えませんか? ちょっと考えがあるんです」
私がそういうと、「考え?」と、ポルカさんは不思議そうだ。
私の考えとは、前世の知識だ。
私は前世では、ポプリ作りにハマっていた。
アレンジフラワーの教室にも通ったし、趣味でアロマオイルも手作りでやっていたのだ。
その知識をここで使わなくてどうするのだ!
私は心の中で、そう叫びながらポルカさんに伝えた。
「商品を作るために、色んな草花を少し分けて頂きたいんですけど、大丈夫でしょうか?」
「もちろんよ。でも、本当にいいの?
負担に思ってないかしら? 無理はしなくていいんだからね」
優しく言ってくれるポルカさんに大丈夫だと伝え、試作品が出来たら、見てほしいとお願いして、さっそく作るものの構想を練った。
一方、ルナリアが国外追放された後のロックウェル王国では……。
「マーク王太子殿下。一体、うちの娘が何をしたというのです? あまりの仕打ちに言葉も出ませんでしたぞ」
ルナリアの父、シュナイダー公爵は、怒りに震えていた。
陛下と共に、地方での仕事で卒業式には行けなかったが、卒業式後は、結婚に向けて準備をしなければと考えていたのに。
まさか、その婚約相手が、あろう事か男爵家の養女と浮気をし、その相手と結ばれたいが為に、ルナリアに謂れのない冤罪を吹っかけて、陛下に許可もなく国外追放するとは!
しかも、国外追放した先は、隣国のカルステイン帝国を阻む魔物の森。
普通に考えて、生きているはずがない。
自分の怒りの感情が今にも噴き出しそうになるのを、必死で堪えながら、殿下に尋ねる。
「あの女は、アイーシャを虐めていたんだ! アイーシャがそう言っていたから、間違いない。それに、アイーシャを階段からも突き落としたと聞いたんだ!
そんな女、王太子妃になんて出来る訳ないだろう!」
殿下が叫んでいるが、もしそれが本当の事だとしても、その場で国外追放する権限など、殿下にはない。
ましてや、何の調べもせず、証拠もない、ただその男爵令嬢が言ったことだけで、それを鵜呑みするとは……。
あまりに愚鈍な考え方をしている王太子のその発言に、それを聞いている王宮内にいる者たちは、苦々しそうな表情で王太子を見ていた。
「愚かな……とても王太子殿下のなさる事ではありませんな。知っておられますかな?
うちの娘が貴方が本来するはずの仕事を肩代わりして行なっていた事を。
王太子妃教育と合わせて、貴方の仕事までしていたので、娘はとても学園に通う時間がありませんでした。
まぁ、娘は学園に通わずとも、覚えるべき勉強は、すでに修得しておりましたし、学園には、ただ交流目的で通わせるつもりでしたから、私も目を瞑っておりましたが……
あなた方が、学園で好き放題していた時、娘は学園に通わず、ここ王宮内でほぼ1日を過ごしていた。
そんな娘が、どうやって、その男爵家の小娘を虐め、階段から突き落とすことが出来るのか。ぜひ教えてもらいたいものですな」
公爵の言い分に、マークは怯みながらも抵抗した。
「そんなの、誰かにやらせたに違いない!
公爵令嬢に命令されれば、断れないからな!」
「では、その命令されたという者を連れて来て頂こう。本当にうちの娘に命令されたのか、しっかりと問い正さなければ。
だが、もし、そんな者はおらず、全てが偽りであったと分かった時には。
殿下は、どう責任を取って頂けるのでしょうかな」
公爵が鋭く言い放つと、今まで黙って聞いていた陛下が、疲れた様子で言った。
「もうよい。これは明らかに王太子の越権行為だ。お前の浅はかな考えにより、1人の尊い命が犠牲になった。
これは、余りにも重い罪だ。
よって、今、この場より第一王子マークは王太子を廃し、第二王子を王太子とする」
陛下の言葉に、マークは驚き、異を唱えるも、周りの人々は、その決定を粛々と受け入れた。
ただシュナイダー公爵は、それだけではとても許すことが出来なかった。
(ふざけるな! 娘をなんだと思ってるんだ! まだ死んだとは決まっていないのに陛下の言い様も許せるものか! こんな奴らに仕えていたとは!)
シュナイダー公爵は、自ら魔物の森に行き、何かルナリアの痕跡を見つけたいと、固く心に決めたのだった。
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