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後日、ミーシャは学園の放課後に、久しぶりにユーリとガゼボでお茶を楽しんでいた。
「ミーシャ様、前回に引き続き今回も大変でしたのね。わたくし、全く知りませんでしたわ。こっそりとお父様から聞いて吃驚しましたのよ」
先日の第二王子やらかし事件(高位貴族の間でそう呼ばれているらしい)は、水面下で更にダミアンの評価を下げているらしい。
詳しい内容は秘匿されているが、第二王子が無実の人をまたもや証拠もなく、勘違いで、短慮にも連行したと噂されている。
経緯を知るものは少数であり、公爵であるユーリの父もまた真実を知っている者の一人として、ユーリの婚約者のやらかしに憤慨しているそうだ。
「本当に、今回はさすがに頭にきましたわ。スピード解決をして頂いたのが幸いでしたけれど。ユーリ様こそ、大丈夫ですか?
その後、ヒロインや第二王子に何か絡まれてません?」
ミーシャがユーリに尋ねると、
「最近、わたくしは眼中にないみたいで。ミーシャ様には申し訳ないですけれど、どうもあの方達の興味は、ミーシャ様に向いているようですわね」
と、可笑しそうに笑った。
「それでね、前回の件もあるし、お父様がいよいよ本腰を入れて、わたくしとダミアン様との婚約解消に向けて働きかけて下さる事になりましたのよ」
「まぁ! それは良かったですわね」
ユーリの言葉を聞いてミーシャは安心した。
「ええ。上手くいけば、卒業式までに婚約解消になって、卒業式に行われる予定の婚約破棄イベントは回避できそう」
と、ユーリは嬉しそうだ。
あの冤罪事件からミーシャは、やはり第二王子が万が一王太子になっては、この国は駄目になると改めて感じていた。
そして父であるラバンティ辺境伯に、シオンに全面的に協力し、シオンを王太子に担ぎ上げてくれるようお願いしていた。
今回、上手くユーリが婚約解消となれば、ミホーク公爵家も、シオンについてくれる可能性が高い。
風向きがいい方向に流れていると感じ、ミーシャも嬉しくなっていた。
「ミーシャさん! 話があるの!」
二人でお茶を楽しんでいると、そこにヒロインであるリセラが突然やってきた。
突然の訪問者に吃驚していると、
「ちょうどいいわ。ユーリさん、あなたにも聞きたい事があったから!
ねぇ、あなたたち、もしかして転生者なの⁉︎」
リセラが凄い形相で言ってくる。
なんて答えたらいいか、ユーリは戸惑いながらミーシャを見たが、ミーシャは冷静に答えた。
「何ですの? 転生者って」
その答えを聞いたリセラは、
「違うの⁈ じゃ、何でゲームのストーリーと同じように進まないのよ。
そっちの悪役令嬢は全然わたしを虐めてこないし、このモブ女はモブのくせに、やたらと力持ってるし……。
ねぇ! ここは私がヒロインの物語なのよ! ちゃんとストーリー通りに動いてくれなきゃ困るわよ!」
と、叫んできた。
「何をおっしゃっているのか分かりませんが、聖女様、もう少し礼儀を学んではいかが?
いくら聖女様といえど、ユーリ様は公爵令嬢ですし、わたくしも辺境伯家の娘。
そのような呼び方は、あまりにも失礼では?」
ミーシャは、鋭い眼差しでリセラを見据える。
ミーシャに突っ込まれて、リセラは一瞬怯むも、すぐに持ち直して、
「分からなければ、それでいいの。でも、あまり勝手な動きはやめてよね!」
そう言い捨てて、この場を去っていった。
「さすがお花畑脳のヒロイン……」
ミーシャがポソっと呟くと、それを聞いたユーリが吹き出す。
「でも、吃驚しましたわ。ヒロインさんも変だと思っていたのですね。これからは少し行動を気をつけないといけないかしら」
少し不安気にユーリは話すが、ミーシャは
「大丈夫ですよ。すでにストーリーはかなり崩壊してますもの。
それに、やられっぱなしは嫌じゃありませんか? やられたらやり返す。これは我がラバンティ家の家訓です」
と、涼しい顔で微笑む。
「わたくし、ミーシャ様が味方で本当に良かったと思いますわ。あなた、今わたくしより悪役令嬢っぽかったですわよ」
ユーリが言い、2人は顔を見合わせて笑った。
「ミーシャ様、前回に引き続き今回も大変でしたのね。わたくし、全く知りませんでしたわ。こっそりとお父様から聞いて吃驚しましたのよ」
先日の第二王子やらかし事件(高位貴族の間でそう呼ばれているらしい)は、水面下で更にダミアンの評価を下げているらしい。
詳しい内容は秘匿されているが、第二王子が無実の人をまたもや証拠もなく、勘違いで、短慮にも連行したと噂されている。
経緯を知るものは少数であり、公爵であるユーリの父もまた真実を知っている者の一人として、ユーリの婚約者のやらかしに憤慨しているそうだ。
「本当に、今回はさすがに頭にきましたわ。スピード解決をして頂いたのが幸いでしたけれど。ユーリ様こそ、大丈夫ですか?
その後、ヒロインや第二王子に何か絡まれてません?」
ミーシャがユーリに尋ねると、
「最近、わたくしは眼中にないみたいで。ミーシャ様には申し訳ないですけれど、どうもあの方達の興味は、ミーシャ様に向いているようですわね」
と、可笑しそうに笑った。
「それでね、前回の件もあるし、お父様がいよいよ本腰を入れて、わたくしとダミアン様との婚約解消に向けて働きかけて下さる事になりましたのよ」
「まぁ! それは良かったですわね」
ユーリの言葉を聞いてミーシャは安心した。
「ええ。上手くいけば、卒業式までに婚約解消になって、卒業式に行われる予定の婚約破棄イベントは回避できそう」
と、ユーリは嬉しそうだ。
あの冤罪事件からミーシャは、やはり第二王子が万が一王太子になっては、この国は駄目になると改めて感じていた。
そして父であるラバンティ辺境伯に、シオンに全面的に協力し、シオンを王太子に担ぎ上げてくれるようお願いしていた。
今回、上手くユーリが婚約解消となれば、ミホーク公爵家も、シオンについてくれる可能性が高い。
風向きがいい方向に流れていると感じ、ミーシャも嬉しくなっていた。
「ミーシャさん! 話があるの!」
二人でお茶を楽しんでいると、そこにヒロインであるリセラが突然やってきた。
突然の訪問者に吃驚していると、
「ちょうどいいわ。ユーリさん、あなたにも聞きたい事があったから!
ねぇ、あなたたち、もしかして転生者なの⁉︎」
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なんて答えたらいいか、ユーリは戸惑いながらミーシャを見たが、ミーシャは冷静に答えた。
「何ですの? 転生者って」
その答えを聞いたリセラは、
「違うの⁈ じゃ、何でゲームのストーリーと同じように進まないのよ。
そっちの悪役令嬢は全然わたしを虐めてこないし、このモブ女はモブのくせに、やたらと力持ってるし……。
ねぇ! ここは私がヒロインの物語なのよ! ちゃんとストーリー通りに動いてくれなきゃ困るわよ!」
と、叫んできた。
「何をおっしゃっているのか分かりませんが、聖女様、もう少し礼儀を学んではいかが?
いくら聖女様といえど、ユーリ様は公爵令嬢ですし、わたくしも辺境伯家の娘。
そのような呼び方は、あまりにも失礼では?」
ミーシャは、鋭い眼差しでリセラを見据える。
ミーシャに突っ込まれて、リセラは一瞬怯むも、すぐに持ち直して、
「分からなければ、それでいいの。でも、あまり勝手な動きはやめてよね!」
そう言い捨てて、この場を去っていった。
「さすがお花畑脳のヒロイン……」
ミーシャがポソっと呟くと、それを聞いたユーリが吹き出す。
「でも、吃驚しましたわ。ヒロインさんも変だと思っていたのですね。これからは少し行動を気をつけないといけないかしら」
少し不安気にユーリは話すが、ミーシャは
「大丈夫ですよ。すでにストーリーはかなり崩壊してますもの。
それに、やられっぱなしは嫌じゃありませんか? やられたらやり返す。これは我がラバンティ家の家訓です」
と、涼しい顔で微笑む。
「わたくし、ミーシャ様が味方で本当に良かったと思いますわ。あなた、今わたくしより悪役令嬢っぽかったですわよ」
ユーリが言い、2人は顔を見合わせて笑った。
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