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「ようこそお越しくださいました。お持てなしに至らない点があるかとは存じますが、心より歓迎致します」
シオンライト王子殿下が本日急遽、うちに来られるとのことで、昼休憩時間にタウンハウスに先触れを出しておいたのだ。短時間といえど、家令のショーン始め、メイド達は滞りなく準備してくれていたみたいだ。
ミーシャも学園の授業が終わると同時に帰宅し、持てなし用のドレスに着替える。
準備が整った頃にシオンライト王子は、ユージュラスと共に到着したので、落ち着いて出迎える事が出来た。
二人とも学校帰りなのに、制服からシンプルかつスタイリッシュな私服に着替え、手土産までしっかり持ってくるところは、さすがといえよう。
応接室に二人をお通しし、シオンライト王子がソファに座ると、その後ろにユージュラスが立って控える。
その様子を見て、ミーシャもシオンライト王子の前のソファに座った。
メイドよりお茶とお菓子を出したあと、どう話を切り出せばいいか悩んでいる様子のシオンライト王子に、ミーシャから声をかけた。
「シオンライト第一王子殿下。わたくしに尋ねたい事があるとか。それは一体どのような事なのですか?」
「ああ、ミーシャ嬢。名前で呼んでくれるかな。その呼び名は距離を感じるよ。私はすでにミーシャ嬢とは友人であると思っているんだ。そうだな、出来ればシオンと呼んでほしい」
そして、後ろに控えているユージュラスも
「では、俺のことはユージュと」と、笑顔で言ってくる。
(ん? いつの間に友人になった? 出来れば関わらずにいたいんですけど……)
ミーシャの気持ちとは裏腹に二人は笑顔で圧力をかけてくる。
「シ、シオン様。ユージュ様」
ミーシャがそう呼ぶと、嬉しそうに二人はさらに笑顔になる。
「コホン……。では、改めて何をわたくしに聞きたいのでしょう?」
二人の笑顔に不覚にも顔が真っ赤になってしまったミーシャは、誤魔化すようにもう一度、同じ事を尋ねた。
シオンはメイド達を下げるように告げ、人払いをした後に決心したようにミーシャを見る。
「あの日、私達がラバンティ辺境伯領に訪れた時。見てしまったんだ。
ミーシャ嬢が夜中に屋敷を抜け出し、結界穴を塞いでいるところを……。」
……。
しばらく何を言われたのか分からなかった。
(え……。嘘よね?)
呆然して何も反応しないミーシャに、バツが悪そうにしながらもシオンは話しだした。
「屋敷をこっそり抜け出すところを見かけたのは本当に偶然なんだ。ただ、夜中だったから女性一人で出掛けるのは危ないかと思ったし、不自然だと思って後をつけた。
そしたら結界の穴を簡単に塞ぐじゃないか。もうびっくりして、自分の目がおかしいのかって何度もその後を確認した。
間違いなく、結界穴は修繕されて、どこに開いていたのかも分からないくらい自然に修繕してあって……。
あれって、聖なる力……なのかな? 君は聖属性魔法が使えるの?」
真剣な眼差しでミーシャを見るシオンとユージュは、簡単には誤魔化せそうになかった。
シオンライト王子殿下が本日急遽、うちに来られるとのことで、昼休憩時間にタウンハウスに先触れを出しておいたのだ。短時間といえど、家令のショーン始め、メイド達は滞りなく準備してくれていたみたいだ。
ミーシャも学園の授業が終わると同時に帰宅し、持てなし用のドレスに着替える。
準備が整った頃にシオンライト王子は、ユージュラスと共に到着したので、落ち着いて出迎える事が出来た。
二人とも学校帰りなのに、制服からシンプルかつスタイリッシュな私服に着替え、手土産までしっかり持ってくるところは、さすがといえよう。
応接室に二人をお通しし、シオンライト王子がソファに座ると、その後ろにユージュラスが立って控える。
その様子を見て、ミーシャもシオンライト王子の前のソファに座った。
メイドよりお茶とお菓子を出したあと、どう話を切り出せばいいか悩んでいる様子のシオンライト王子に、ミーシャから声をかけた。
「シオンライト第一王子殿下。わたくしに尋ねたい事があるとか。それは一体どのような事なのですか?」
「ああ、ミーシャ嬢。名前で呼んでくれるかな。その呼び名は距離を感じるよ。私はすでにミーシャ嬢とは友人であると思っているんだ。そうだな、出来ればシオンと呼んでほしい」
そして、後ろに控えているユージュラスも
「では、俺のことはユージュと」と、笑顔で言ってくる。
(ん? いつの間に友人になった? 出来れば関わらずにいたいんですけど……)
ミーシャの気持ちとは裏腹に二人は笑顔で圧力をかけてくる。
「シ、シオン様。ユージュ様」
ミーシャがそう呼ぶと、嬉しそうに二人はさらに笑顔になる。
「コホン……。では、改めて何をわたくしに聞きたいのでしょう?」
二人の笑顔に不覚にも顔が真っ赤になってしまったミーシャは、誤魔化すようにもう一度、同じ事を尋ねた。
シオンはメイド達を下げるように告げ、人払いをした後に決心したようにミーシャを見る。
「あの日、私達がラバンティ辺境伯領に訪れた時。見てしまったんだ。
ミーシャ嬢が夜中に屋敷を抜け出し、結界穴を塞いでいるところを……。」
……。
しばらく何を言われたのか分からなかった。
(え……。嘘よね?)
呆然して何も反応しないミーシャに、バツが悪そうにしながらもシオンは話しだした。
「屋敷をこっそり抜け出すところを見かけたのは本当に偶然なんだ。ただ、夜中だったから女性一人で出掛けるのは危ないかと思ったし、不自然だと思って後をつけた。
そしたら結界の穴を簡単に塞ぐじゃないか。もうびっくりして、自分の目がおかしいのかって何度もその後を確認した。
間違いなく、結界穴は修繕されて、どこに開いていたのかも分からないくらい自然に修繕してあって……。
あれって、聖なる力……なのかな? 君は聖属性魔法が使えるの?」
真剣な眼差しでミーシャを見るシオンとユージュは、簡単には誤魔化せそうになかった。
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