【完結】モブなのに最強?

らんか

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 「それで、探していた植物は見つかりましたの?」
 暗い表情をしている二人を見て、ちょっと心配になって聞いてしまった。案の定、「いや~……結局見つけられなくて……」と頭をがしがし掻きながら、悔しそうにユージュが答えた。
 
 「ちなみになんの植物かお尋ねしても?」
 「……モーニュ草」
 しばらく考え込んでいたが、シオンという名前の男が短い返答をした。

 「モーニュ草……うちの薬草園にありますわね……」
 思い出しながら言葉を発すると、シオンは弾かれたように顔を上げ、信じられないと言った様子で真っ直ぐにミーシャを見つめた。
 「本当ですか⁉︎  お願いします! ぜひ我々に分けていただきたい!」
 ユージュが勢いよく頭を下げ、「ほら! シオンもお願いして!」と固まっているシオンの背中を押すと、ハッとした様子でシオンも頭を下げた。


 モーニュ草。
 どんな毒をも消し去り、一気に身体に不足している栄養素を補ってくれる万能薬を作り出せる薬草だ。魔の森にしか生息しないのは、瘴気を栄養としているからだと言われており、人里で育てるのは不可能だと言われている。
 しかしミーシャは幼い頃、父や兄に連れられて魔の森に入った時、今で思えば日本で見た白いシクラメンのような草が目に留まり、それが幻のモーニュ草であると知ってから、どうにか領地内で育てられないかと数年に亘り研究を重ねて、魔の森の土を持ち帰り、定期的に魔物の中にある魔素を土の中に混ぜ込み、瘴気を維持させる事によって、領地内で育成する方法を編み出した。
 もちろん瘴気がある空間を作り出す為、魔の森でしか生息しない植物のみを育てる温室を作り、関係者以外は立ち入り禁止区域として、厳重に管理している。

 「簡単にお渡し出来るものではない事はご存知ですわよね? 事情を話してもらって納得の出来るちゃんとした理由であるならば家族と相談してから検討しますわ」

 ミーシャの返答にほとんど言葉を発しなかったシオンが、しっかりとミーシャを見つめ
 「挨拶が遅れて申し訳ない。改めて挨拶をさせてほしい。私の名はシオンライト・フォン・アトラン。この国の第一王子だ」と毅然とした態度でミーシャに名を告げた。
 「えっ!」
 今度はミーシャが固まったが、追随するように今度はユージュが「私はユージュラス・アルトリス。アルトリス公爵家の嫡男であり、シオンライト王子の側近です」と物腰柔らかく笑顔で名前を告げられた。

 アトラン王国の第一王子。
 今は亡き前王妃の第一子であり、膨大な魔力を持ちながらも幼き頃より病弱で、長くは生きられないであろうと噂されている方。
 (たしか御年18歳。側妃であった第二王子の母が現王妃になってからは、離宮で療養していたはず。なのに何故冒険者に? いやいや、待って。それよりこの人、あの乙女ゲーム〈ミラクルガール・ラブアタック〉通称ミラアタの攻略対象の隠しキャラじゃなかったっけ? そういえば、この側近のユージュラスってのも同じく隠れ攻略対象!)

 色んな意味でこの二人の重要性に気付き、パニックを起こしそうになるミーシャのところに父と兄がやって来て、王子と公爵令息が改めて挨拶すると、すぐに辺境伯邸に招き歓迎することとなった。
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