41 / 43
40.事件の終結②
しおりを挟む「前世の私は君に酷い事をした。
婚約者の君をぞんざいに扱い、義妹のマリーナと浮気をし、君を冤罪にかけて処罰した。
マリーナに唆されたにしても、あの頃の私はマリーナの嘘を信じたかったんだ。
私はずっと君に好意を持ちながらも嫉妬していたから……」
「嫉妬?」
私の一言にライアン様は頷く。
「そう。常に成績は一位で、何をやらせても完璧にこなす君に、劣等感を持っていた。
だからマリーナといると楽だった。
君を罰する時も、マリーナの嘘だと分かっていた。
だけど君を罰する事で、君から、こんな気持ちから解放されると思っていたんだ」
私からの解放……。
ライアン様は、そんなふうに思っていたなんて……。
「でも、君が死んだと聞いて激しい虚無感に襲われた。そして、君の死がマリーナの仕業だと知った時には、後悔してもしきれなかった」
「え!? マリーナの仕業!?」
私はビックリして思わず叫んだ。
「そう。マリーナが事故に見せかけて君を殺すように仕向けていた。
マリーナは他にも色々な余罪が明らかになって、結局は処刑されたんだ。
でも、今世のマリーナには君の死後の記憶がなかったから、今世でもまた君を害そうとしたんだと思う」
知らなかった……。
マリーナは、そこまで私を憎んでいたの?
私はショックを隠しきれないでいた。
「私は廃太子され、離宮への生涯幽閉を言い渡された。
そこで生きた何十年間は、ひどく寂しいものだったよ。
孤独のなかで考えるのは、いつも君への罪悪感だった。
私は君に謝りたいと思いながら、そこで生涯を終えたんだ。
今世で初めて君に会った時には、まだ前世の記憶がなかったんだよ。
でも、断片的に頭の中に記憶が浮かんできていた。
マリーナが社交界デビューで着ていたドレスを見て、やっと全部思い出したんだ」
ライアン様は、寂しそうな笑顔を私に向けてそう話す。
「あのドレスは私が君を思って選んだ最初で最後のドレスだったから」
知っていたわ。
婚約者になってからの誕生日プレゼントやパーティドレスは、従者に適当に準備させていた事を。
社交界デビューの時だけ、自ら選んでプレゼントしてくれてエスコートしてくれた事を……。
「今更許して欲しいだなんて、言うつもりなない。許さなくていいんだ。むしろ、許さないでほしい。
ただ、前世の記憶が戻ったのは、君に謝るチャンスを神が与えてくれたんだと思っている」
そう言って、再びライアン様は頭を深く下げた。
「ルーシー・ヘルツェビナ公爵令嬢。
本当に申し訳ありませんでした」
ライアン様は本当に変わられた。
前世の、離宮での孤独な人生が彼をここまで変えたのかも知れない。
「ライアン第一王子殿下。
謝罪を受け入れます」
まだ許しは出来ないけど、ライアン様の謝罪の気持ちは受け止めたい。
その気持ちで、そう答えた。
「ありがとう」
ライアン様はホッとしたような笑顔になる。
「あと、ケジメとして私は王位継承権を放棄しようと思っている。
前世でも廃太子後、第二王子が立太子して、国王に即位後、立派に国を回していたから安心して任せられるしね」
「ライアン王子殿下は、それで本当によろしいのですか?」
私の問いに、ライアン様は微笑みながら頷いた。
「弟の方が適任だということは、私が一番知っているからね」
そう言ったライアン様は、晴れやかな表情をしていた。
3,057
お気に入りに追加
4,172
あなたにおすすめの小説
愛を求めることはやめましたので、ご安心いただけますと幸いです!
風見ゆうみ
恋愛
わたしの婚約者はレンジロード・ブロフコス侯爵令息。彼に愛されたくて、自分なりに努力してきたつもりだった。でも、彼には昔から好きな人がいた。
結婚式当日、レンジロード様から「君も知っていると思うが、私には愛する女性がいる。君と結婚しても、彼女のことを忘れたくないから忘れない。そして、私と君の結婚式を彼女に見られたくない」と言われ、結婚式を中止にするためにと階段から突き落とされてしまう。
レンジロード様に突き落とされたと訴えても、信じてくれる人は少数だけ。レンジロード様はわたしが階段を踏み外したと言う上に、わたしには話を合わせろと言う。
こんな人のどこが良かったのかしら???
家族に相談し、離婚に向けて動き出すわたしだったが、わたしの変化に気がついたレンジロード様が、なぜかわたしにかまうようになり――
貴方が選んだのは全てを捧げて貴方を愛した私ではありませんでした
ましゅぺちーの
恋愛
王国の名門公爵家の出身であるエレンは幼い頃から婚約者候補である第一王子殿下に全てを捧げて生きてきた。
彼を数々の悪意から守り、彼の敵を排除した。それも全ては愛する彼のため。
しかし、王太子となった彼が最終的には選んだのはエレンではない平民の女だった。
悲しみに暮れたエレンだったが、家族や幼馴染の公爵令息に支えられて元気を取り戻していく。
その一方エレンを捨てた王太子は着々と破滅への道を進んでいた・・・
侯爵家のお飾り妻をやめたら、王太子様からの溺愛が始まりました。
二位関りをん
恋愛
子爵令嬢メアリーが侯爵家当主ウィルソンに嫁いで、はや1年。その間挨拶くらいしか会話は無く、夜の営みも無かった。
そんな中ウィルソンから子供が出来たと語る男爵令嬢アンナを愛人として迎えたいと言われたメアリーはショックを受ける。しかもアンナはウィルソンにメアリーを陥れる嘘を付き、ウィルソンはそれを信じていたのだった。
ある日、色々あって職業案内所へ訪れたメアリーは秒速で王宮の女官に合格。結婚生活は1年を過ぎ、離婚成立の条件も整っていたため、メアリーは思い切ってウィルソンに離婚届をつきつけた。
そして王宮の女官になったメアリーは、王太子レアードからある提案を受けて……?
※世界観などゆるゆるです。温かい目で見てください
後悔だけでしたらどうぞご自由に
風見ゆうみ
恋愛
女好きで有名な国王、アバホカ陛下を婚約者に持つ私、リーシャは陛下から隣国の若き公爵の婚約者の女性と関係をもってしまったと聞かされます。
それだけでなく陛下は私に向かって、その公爵の元に嫁にいけと言いはなったのです。
本来ならば、私がやらなくても良い仕事を寝る間も惜しんで頑張ってきたというのにこの仕打ち。
悔しくてしょうがありませんでしたが、陛下から婚約破棄してもらえるというメリットもあり、隣国の公爵に嫁ぐ事になった私でしたが、公爵家の使用人からは温かく迎えられ、公爵閣下も冷酷というのは噂だけ?
帰ってこいという陛下だけでも面倒ですのに、私や兄を捨てた家族までもが絡んできて…。
※R15は保険です。
※小説家になろうさんでも公開しています。
※名前にちょっと遊び心をくわえています。気になる方はお控え下さい。
※史実とは関係なく、設定もゆるい、ご都合主義です。
※中世ヨーロッパ風で貴族制度はありますが、法律、武器、食べ物などは現代風、もしくはオリジナルです。話を進めるにあたり、都合の良い世界観となっています。
※誤字脱字、見直して気を付けているつもりですが、やはりございます。申し訳ございません。
愛されなかった公爵令嬢のやり直し
ましゅぺちーの
恋愛
オルレリアン王国の公爵令嬢セシリアは、誰からも愛されていなかった。
母は幼い頃に亡くなり、父である公爵には無視され、王宮の使用人達には憐れみの眼差しを向けられる。
婚約者であった王太子と結婚するが夫となった王太子には冷遇されていた。
そんなある日、セシリアは王太子が寵愛する愛妾を害したと疑われてしまう。
どうせ処刑されるならと、セシリアは王宮のバルコニーから身を投げる。
死ぬ寸前のセシリアは思う。
「一度でいいから誰かに愛されたかった。」と。
目が覚めた時、セシリアは12歳の頃に時間が巻き戻っていた。
セシリアは決意する。
「自分の幸せは自分でつかみ取る!」
幸せになるために奔走するセシリア。
だがそれと同時に父である公爵の、婚約者である王太子の、王太子の愛妾であった男爵令嬢の、驚くべき真実が次々と明らかになっていく。
小説家になろう様にも投稿しています。
タイトル変更しました!大幅改稿のため、一部非公開にしております。
婚約破棄された公爵令嬢ですが、どうやら周りの人たちは私の味方のようです。
ましゅぺちーの
恋愛
公爵令嬢のリリーシャは王太子から婚約破棄された。
隣には男爵令嬢を侍らせている。
側近の実兄と宰相子息と騎士団長子息も王太子と男爵令嬢の味方のようだ。
落ち込むリリーシャ。
だが実はリリーシャは本人が知らないだけでその5人以外からは慕われていたのだ。
リリーシャの知らないところで王太子たちはざまぁされていく―
ざまぁがメインの話です。
どうして私にこだわるんですか!?
風見ゆうみ
恋愛
「手柄をたてて君に似合う男になって帰ってくる」そう言って旅立って行った婚約者は三年後、伯爵の爵位をいただくのですが、それと同時に旅先で出会った令嬢との結婚が決まったそうです。
それを知った伯爵令嬢である私、リノア・ブルーミングは悲しい気持ちなんて全くわいてきませんでした。だって、そんな事になるだろうなってわかってましたから!
婚約破棄されて捨てられたという噂が広まり、もう結婚は無理かな、と諦めていたら、なんと辺境伯から結婚の申し出が! その方は冷酷、無口で有名な方。おっとりした私なんて、すぐに捨てられてしまう、そう思ったので、うまーくお断りして田舎でゆっくり過ごそうと思ったら、なぜか結婚のお断りを断られてしまう。
え!? そんな事ってあるんですか? しかもなぜか、元婚約者とその彼女が田舎に引っ越した私を追いかけてきて!?
おっとりマイペースなヒロインとヒロインに恋をしている辺境伯とのラブコメです。ざまぁは後半です。
※独自の世界観ですので、設定はゆるめ、ご都合主義です。
完結 冗談で済ますつもりでしょうが、そうはいきません。
音爽(ネソウ)
恋愛
王子の幼馴染はいつもわがまま放題。それを放置する。
結婚式でもやらかして私の挙式はメチャクチャに
「ほんの冗談さ」と王子は軽くあしらうが、そこに一人の男性が現れて……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる