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39.事件の終結①

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 あの事件から一週間が経った。
 
 私は両親やケイン様、ジェシカを始めとする使用人達からも過剰な程の心配をされ、あの日から学園を休んで、家で療養していた。
 
 モニカも様子を見に来てくれ、クラスメイト達もお見舞いに来てくれた。
 
 そのおかげで、私はすっかり元気を取り戻したが、あの後、マリーナがどうなったのかが気になって仕方がなかった。
 
 そんなある日、王宮からの呼び出しがあったので、父と共に私は王宮に向かった。
 
 マリーナの罪状が明らかになったそうなので、その説明を聞きに行くためだ。
 
 
 謁見室に通され、そこに陛下とライアン様、宰相様がいらっしゃる事を確認する。
 
 
 陛下やライアン様に挨拶を行なった後、宰相様が、マリーナに出た罪状を伝えてくれた。
 
 
 
 
 
 マリーナは、取り調べ中、色々と不可解な言動が多く、精神が病んでいるのではと判断され、修道院に入れる事も検討されたそうだが、結局は、計画的に公爵令嬢である私の命を狙った罪で、処刑が決まった。
 
 
 
「処刑……」
 
 
 それを聞いた時、これでやっとマリーナから解放されるという気持ちと共に、複雑な気持ちになる。
 
 前世では私が処罰される側だった。
 なのに、今世ではマリーナが……。
 
 
 説明を聞いた父が
「当然の結果ですな。結論が出るのが遅いくらいです」
 と、不機嫌に言った。
 
 
「まぁ、そう言うな。
 あまりに言っている事が、支離滅裂でなかなか事件の全容が掴めなかったのだ。
 結局は、あの娘の妄想からルーシー嬢に危害を加えた単独犯という事が証明されたんでな。
 あの娘の男爵家は、一切関わりがなかったらしいが、それでも娘のした事として、男爵家は爵位剥奪し、領地は君への補償として公爵家に受け取ってもらおうと思う。
 ルーシー嬢、災難であったな。
 もう、大事無いか?」
 
 
「わたくしは大丈夫でございます。
 色々とご配慮頂き、ありがとうございます」
 
 陛下の言葉に、私はそう答えた。
 
 陛下は頷き、マリーナの処刑日は追って知らせるとの事で謁見は終了した。
 
 
 私は父と共に屋敷に戻ろうと、馬車乗り場に向かっていると、
「ヘルツェビナ公爵令嬢、少し話があるんだ。いいだろうか?」
 と、ライアン様から声を掛けられた。
 
 そのライアン様を見ると、何やら真剣な表情をしている。 
 
「先に馬車に乗って待っている。話して来なさい」
 
 ライアン様の気迫に、何かを感じとった父は、そう言って先に馬車乗り場に向かった。
 
 
 
 私はライアン様を見て、少し違和感を持った。
 ライアン様は、こんなに謙虚な態度で私を呼び止めた事があっただろうか?
 
 
 
「お話とはなんでしょう?」
 
 
「ここではちょっと……。すぐそこのバラの庭園で話さないか?」
 
 
 真剣に、でも何処か大人びた感じを受けるライアン様に、恐怖を感じない。
 私は頷き、ライアン様と共に、バラの庭園まで一緒に向かった。
 
 
 
 
 
 
 バラの庭園には、久しぶりに来た。
 今世では、ライアン様と初めての顔合わせの時、バラの庭園に向かう途中で引き返したっきりだから、前世ぶりだ。
 
 前世では、疲れていたり、泣きそうになったりした時に、よく訪れた場所だった。
 
 
 感慨深げに庭園を見ていると、ライアン様が立ち止まって、こちらを振り向く。
 
 
 
「ヘルツェビナ公爵令嬢、体調は本当にもう大丈夫なのか?」
 
 ライアン様の問いに、少し驚く。
 ライアン様に体調を気遣われるなんて、前世合わせて初めてかも。
 
「はい、もう何ともありません。
 お気遣い頂き、ありがとうございます」
 
 私の答えに小さく頷いてから、ライアン様は意を決したような目で真剣な表情で私を見た。
 
 
「ヘルツェビナ公爵令嬢、私は貴女に謝らなければならない」
 
 
「え?」
 
 
「貴女には、初対面の時に失礼な態度をとったにも関わらず、その後も何も気にしないで貴女に傲慢な態度をとってしまった。
 また、久しぶりに学園で貴女と会ったのに、その謝罪もなく馴れ馴れしい態度で何度となく、貴女を誘ったりしていた。
 ……まるで自分の婚約者になる者のように。
 本当に申し訳ない。自分にはそんな態度、許されないのに」
 
 
 ライアン様はそう言って、頭を下げる。
 
「! おやめ下さい! 王族の貴方がわたくし如きに頭を下げてはなりません!」 
 
 私はビックリして、すぐに頭をあげてくれるよう叫んだ。
 ライアン様は、頭を上げてくれるが俯いたままだ。
 
 
「いや、まだ謝ることがあるんだ」 
 
 
 そう言って、私を見る。
 
 
「正直に答えてほしい。
 君には前の記憶があるんだろう?
 ルーシー・・・・
 
 
「え……?」
 
 
「前……前世の記憶とでも言うのかな?
 前世で私と君は婚約者だった。
 知ってるだろう?」
 
 
 そう言うライアン様は真剣そのものだ。
 
 私は小さく頷いた。
 
 そんな私を見て、ライアン様は辛そうに、気持ちを抑えるように一旦目を閉じて、呼吸を整える。
 そして、語り始めた。

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