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31.逆襲②
しおりを挟む「な、なんで……」
クラスメイト達の姿を見たマリーナは、二の句が告げないでいた。
「貴女が、公爵家でどんな扱いを受けているのか、皆様が興味を持っていらしたので、見て頂こうとご招待しましたの。
ありのままを見て頂きたくて、マリーナには内緒にしていたのよ。
ビックリしたかしら? ごめんなさいね?」
そう私が説明すると、顔を真っ赤にして私を睨んでくるも、その瞬間に態度を変えて、クラスメイト達に泣き真似をしながら訴えた。
「み、みなさん! なんて言ってここに連れて来られたのか知りませんが、これはルーシーの……いえ、ルーシー様がわたくしを陥れようとした計画なのですわ!」
マリーナがそう涙ながらに訴えるも、クラスメイト達は冷めた視線をマリーナに送るばかりだ。
「あ……あの……。わたくし、ちょっと調子が悪くて、ついルーシー様に当たるようなマネを……。ルーシー様、申し訳ございません!」
必死になって色々言うマリーナに、呆れたようにクラスメイトの一人が言った。
「マリーナさん、貴女、普段からルーシー様に虐められてこき使われているって言われてましたわよね?
そんな人が、調子が悪いからって、ルーシー様にあんな態度、取れるのかしら?」
一人がそう言った事を皮切りに、次々と皆がマリーナに言い始めた。
「ルーシー様がご祖父様やご両親から馬車を貰ったからって、ずるいってどういう立場でそんな事言えるのかしら?」
「全くだ。今までの態度は嘘だったんだな?
公爵令嬢であるルーシー嬢に、男爵令嬢の君が何故呼び捨てで偉そうにしていたんだ?」
「それに、勝手にルーシー様のドレスを着た上に、自分の方が似合うからちょうだいだなんて、なんて恥知らずな言い分なの!?」
「それ以上に許せないのは、王子妃や王妃になるから、今から態度を改めろだって!?
男爵令嬢のお前が王族と結婚出来るわけないだろ!」
クラスメイト達の攻撃が止まらない。
マリーナの実態を少し見せただけなのに、こんなに皆がマリーナを攻撃するとは思わなかった。
そうよね。
前世でも、今と同じような事をされてきた。
その色々な仕打ちは、やはり誰もが怒って当たり前の事だったんだ。
なんで前世の時は、あんなに我慢して誰にも言わなかったんだろう。
伝え方は色々あったはずなのに。
そこまで考えて、やはり前世では無理だったと思い直す。
自分を信じてくれる存在がいてこそ、心を強く持って行動出来るんだ。
だから、今世では行動出来て、このような結果を手に入れる事が出来た。
今回、クラスメイト達を公爵家に呼ぶ上で、モニカに色々と協力してもらった。
計画した当日に、ほぼ全員のクラスメイトを連れて来てくれたのだから、本当にモニカには頭が下がる。
私一人では今日の計画は無理だった。
公爵家に戻ってすぐに、この計画を相談し、協力してくれたのはメイドのジェシカだ。
前から物欲しそうに見ていた私のドレスを、これみよがしに部屋に出してくれていたのもジェシカ。
目に付いたらすぐに持って行ってしまう事は、もちろん前世からだから私は知っていたけど、ジェシカはマリーナが来た数週間の間に、マリーナのしそうな事を感じ取っていた。
前世では、学園に上がる前に居なくなってしまったジェシカ。
もしかしたら、前世ではマリーナからの横槍が入って、居られなくなってしまったのかもしれない。
だってジェシカは、今世では全くこの屋敷を去る気配さえ見せないのだもの。
幼い頃からの私の味方であるジェシカが屋敷に居てくれるだけで、こんなにも心強いなんて。
今になって、そんな事に気付いた私は、ジェシカやモニカの存在が、本当に有難いと感じていた。
「さて、皆様。それくらいになさって?
マリーナが生き生きとここで暮らしている事は、これで皆様にも分かって頂けたようで、わたくしも安心致しましたわ。
急なお誘いにも関わらず、来て頂けた事、とても感謝しております。
さぁ、お茶の準備が出来た頃でございますので、皆様、どうぞあちらへ」
そう言って私は、クラスメイト達をもてなす。
もちろん、この騒ぎの中、もてなしの準備をしてくれたのは、ジェシカ率いる公爵家のメイド達だ。
(後でジェシカや他のメイド達にも、何かお礼をしなきゃね)
クラスメイト達は、他のメイド達に促され、お茶の準備が出来ている部屋に案内された。
もちろん、行く際、しっかりとマリーナを睨んだり、苦言を呈したりしながら。
その場に残されたマリーナが、再度私に突っかかろうとした時、父付きの執事がマリーナを呼びに来た。
「マリーナ様、旦那様がお呼びです。執務室までご一緒に来てください。
あと、ルーシーお嬢様も、お客様がお帰りになった後で、旦那様の元に来て頂けますようお願いします」
執事にそう言われて、マリーナはまたしても憎々しげに私を睨む。
「分かりましたわ」
と、私が返答した後にマリーナも頷いて、執事と共に屋敷内に入って行った。
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