【完結】前世の因縁は断ち切ります~二度目の人生は幸せに~

らんか

文字の大きさ
上 下
29 / 43

28.食堂での出来事

しおりを挟む
 
「ルーシー、ライアン王子がいらっしゃるわよ。どうする? 絡まれる前に、違う席に移る?」
 
 
 今はモニカと食堂で昼食を摂っていた。
 
 モニカの言葉に、チラッと食堂の入口を見ると、ライアン様が側近の人達と共に食堂に来たばかりなのが見える。
 
 
「モニカ、気を使ってくれてありがとう。
 でも、食べてる途中に席を移動すると、余計に目立つわ。
 それに、第一王子様が、そうそうわたくしにばかりに構われるはずないもの。大丈夫よ」
 
 そう言って、気にしないで食べすすめる。
 
「ルーシーが、それでいいなら……」
 と、モニカが心配そうにしながらも納得してくれた。
 
 
 その時、ライアン様の後を追うマリーナの姿が目に入った。
 
 
「ライアン様! 昼食をご一緒したくて探しましたわ」
 
 そう言って、マリーナがライアン様に駆け寄る。
 
 
「マリーナ嬢、また君か」
 
 側近のダビデ様が、ライアン様の前に立ちはだかって、マリーナを近寄らせないようにした。
 
 ダビデ様は、近衛騎士団長の息子だ。
 かつて前世においても、ライアン様の側近をしていた人で、自由奔放に過ごすライアン様をいつも諌めていた、数少ない私の味方だった人。
 
 結局、ライアン様が自分を諌めてばかりいるダビデ様を嫌って、わたくしに婚約破棄を言い渡す前に側近から外してしまわれたけど。
 
 今世では、一度も話した事がないけど、忠実に主君を守るお姿を見られて、私は安心した。
 
 
 
「もう! ダビデ様! いつも意地悪ですわね!
 いいじゃありませんか!
 わたくしはライアン様に、この前のパーティで、エスコートをしてもらった仲ですのに!」
 
 
 マリーナのその言葉に、食堂内がザワつく。
 
 
 あの王宮パーティに参加していた学生は結構いる。
 その人達は、ライアン様と共に会場に入ってきて、ダンスを踊ったのを目撃していた。
 
 その時に、ヘルツェビナ公爵家と関わりを持っている事も明かしている為、マリーナはヘルツェビナ公爵家の養子になって、それからライアン様の婚約者になるのではないかという噂が、学園中に広がっていた。
 
 
「ねぇ、まさか本当にあの子、ルーシーのところの養子になる話があるの?」
 
「まさか! そんな事、父からは一切聞いてないわよ。マリーナは一時的に預かっているに過ぎないわ」
 
 
 モニカに聞かれて、私は即効でそう返答した。
 
 何故、そんな噂が広まっているのだろう?
 
 
 私は今日帰ったら父に、いつまでマリーナを預かるつもりなのかを尋ねてみようと考えた。
 
 
 
「マリーナ嬢、あの時は……」
 
 ライアン様がマリーナに何かを話そうとするのを遮って、マリーナは強引にライアン様を誘っている。
 
 
「さぁ、ライアン様! 早く食べないとお昼休憩がなくなってしまいますわよ?
 他の側近の方も、ご一緒しましょう? みんなで食べたら、きっともっと美味しくなりますわね?」
 
 
 マリーナ得意の微笑みに、ライアン様の他の側近達は頬を緩ませる。
 
 
「まぁ、いいではありませんか、ライアン様」
「そうですよ。マリーナ嬢が言っているように、早く食べないと昼休憩もなくなってしまいます」
「ええ、みんなで食べるのも楽しいですよ」
 
 他の側近達はそう言って、マリーナの味方をしながらライアン様を促している。
 
 
 ライアン様はため息を零したあと、無言で空いている席に着いた。
 
 他の側近達が、ライアン様とマリーナの分の食事も取りに行くのを見て、ダビデ様も諦めて席に着く。
 
 その時に、ダビデ様はふいに私とモニカが座っている方に目をやり、私と目が合った。
 ダビデ様がすぐに隣りに座っているライアン様に耳打ちした後、ライアン様がこちらを向くので、ライアン様とも目が合ってしまう。
 
 
 あ、しまった。
 つい、見てしまっていた。
 
 
 そう後悔するが、ライアン様はそのまま目を背け、こちらに何か言ってくる様子はない。
 
「あれ? ライアン王子、ルーシーがいるのに気付いたはずなのに、何も言ってこないね?
 前までなら、ルーシーの姿を見つける度に色々と絡んできたのに。
 マリーナがいるから、もうルーシーには興味無くなったのかな?」
 
 
 モニカも、ライアン様の様子が前と違っていると思ったのか、そう言ってきた。
 
 
「だから、言ったでしょ?
 わたくしばかりに構われる事なんてないって。
 さ、早く食べて、ここを出ましょう?」
 
 
「そうね、また何か巻き込まれる前に、早く出た方がいいわね」
 
 
 そう言って、私たちは素早く昼食を食べ終えて食堂から出た。
 
 出る時に、チラリとライアン様達を見るが、ライアン様は全くこちらを気にする様子はない。
 
 
 良かった。
 取り敢えず、このまま私に関わって来る事が無いことを、これからも祈るばかりだ。
 
 ダビデ様、今世も大変でしょうけど、出来るだけライアン様をいい方向に導いて差し上げて下さい。
 私はもう、その役目を一緒に行う事は出来ないから……。
 
 
 そう思いながら食堂を後にする。
 
  
 
 私の出ていく姿を、ライアン様が目で追っていた事には気付かなかった。
 
 
 
 
しおりを挟む
感想 165

あなたにおすすめの小説

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

もう私、好きなようにさせていただきますね? 〜とりあえず、元婚約者はコテンパン〜

野菜ばたけ@既刊5冊📚好評発売中!
ファンタジー
「婚約破棄ですね、はいどうぞ」 婚約者から、婚約破棄を言い渡されたので、そういう対応を致しました。 もう面倒だし、食い下がる事も辞めたのですが、まぁ家族が許してくれたから全ては大団円ですね。 ……え? いまさら何ですか? 殿下。 そんな虫のいいお話に、まさか私が「はい分かりました」と頷くとは思っていませんよね? もう私の、使い潰されるだけの生活からは解放されたのです。 だって私はもう貴方の婚約者ではありませんから。 これはそうやって、自らが得た自由の為に戦う令嬢の物語。 ※本作はそれぞれ違うタイプのざまぁをお届けする、『野菜の夏休みざまぁ』作品、4作の内の1作です。    他作品は検索画面で『野菜の夏休みざまぁ』と打つとヒット致します。

結婚しても別居して私は楽しくくらしたいので、どうぞ好きな女性を作ってください

シンさん
ファンタジー
サナス伯爵の娘、ニーナは隣国のアルデーテ王国の王太子との婚約が決まる。 国に行ったはいいけど、王都から程遠い別邸に放置され、1度も会いに来る事はない。 溺愛する女性がいるとの噂も! それって最高!好きでもない男の子供をつくらなくていいかもしれないし。 それに私は、最初から別居して楽しく暮らしたかったんだから! そんな別居願望たっぷりの伯爵令嬢と王子の恋愛ストーリー 最後まで書きあがっていますので、随時更新します。 表紙はエブリスタでBeeさんに描いて頂きました!綺麗なイラストが沢山ございます。リンク貼らせていただきました。

婚約破棄されましたが、帝国皇女なので元婚約者は投獄します

けんゆう
ファンタジー
「お前のような下級貴族の養女など、もう不要だ!」  五年間、婚約者として尽くしてきたフィリップに、冷たく告げられたソフィア。  他の貴族たちからも嘲笑と罵倒を浴び、社交界から追放されかける。 だが、彼らは知らなかった――。 ソフィアは、ただの下級貴族の養女ではない。 そんな彼女の元に届いたのは、隣国からお兄様が、貿易利権を手土産にやってくる知らせ。 「フィリップ様、あなたが何を捨てたのかーー思い知らせて差し上げますわ!」 逆襲を決意し、華麗に着飾ってパーティーに乗り込んだソフィア。 「妹を侮辱しただと? 極刑にすべきはお前たちだ!」 ブチギレるお兄様。 貴族たちは青ざめ、王国は崩壊寸前!? 「ざまぁ」どころか 国家存亡の危機 に!? 果たしてソフィアはお兄様の暴走を止め、自由な未来を手に入れられるか? 「私の未来は、私が決めます!」 皇女の誇りをかけた逆転劇、ここに開幕!

遺棄令嬢いけしゃあしゃあと幸せになる☆婚約破棄されたけど私は悪くないので侯爵さまに嫁ぎます!

天田れおぽん
ファンタジー
婚約破棄されましたが私は悪くないので反省しません。いけしゃあしゃあと侯爵家に嫁いで幸せになっちゃいます。  魔法省に勤めるトレーシー・ダウジャン伯爵令嬢は、婿養子の父と義母、義妹と暮らしていたが婚約者を義妹に取られた上に家から追い出されてしまう。  でも優秀な彼女は王城に住み、個性的な人たちに囲まれて楽しく仕事に取り組む。  一方、ダウジャン伯爵家にはトレーシーの親戚が乗り込み、父たち家族は追い出されてしまう。  トレーシーは先輩であるアルバス・メイデン侯爵令息と王族から依頼された仕事をしながら仲を深める。  互いの気持ちに気付いた二人は、幸せを手に入れていく。 。oOo。.:♥:.。oOo。.:♥:.。oOo。.:♥:.。oOo。.:♥:.  他サイトにも連載中 2023/09/06 少し修正したバージョンと入れ替えながら更新を再開します。  よろしくお願いいたします。m(_ _)m

悪役令嬢になるのも面倒なので、冒険にでかけます

綾月百花   
ファンタジー
リリーには幼い頃に決められた王子の婚約者がいたが、その婚約者の誕生日パーティーで婚約者はミーネと入場し挨拶して歩きファーストダンスまで踊る始末。国王と王妃に謝られ、贈り物も準備されていると宥められるが、その贈り物のドレスまでミーネが着ていた。リリーは怒ってワインボトルを持ち、美しいドレスをワイン色に染め上げるが、ミーネもリリーのドレスの裾を踏みつけ、ワインボトルからボトボトと頭から濡らされた。相手は子爵令嬢、リリーは伯爵令嬢、位の違いに国王も黙ってはいられない。婚約者はそれでも、リリーの肩を持たず、リリーは国王に婚約破棄をして欲しいと直訴する。それ受け入れられ、リリーは清々した。婚約破棄が完全に決まった後、リリーは深夜に家を飛び出し笛を吹く。会いたかったビエントに会えた。過ごすうちもっと好きになる。必死で練習した飛行魔法とささやかな攻撃魔法を身につけ、リリーは今度は自分からビエントに会いに行こうと家出をして旅を始めた。旅の途中の魔物の森で魔物に襲われ、リリーは自分の未熟さに気付き、国営の騎士団に入り、魔物狩りを始めた。最終目的はダンジョンの攻略。悪役令嬢と魔物退治、ダンジョン攻略等を混ぜてみました。メインはリリーが王妃になるまでのシンデレラストーリーです。

婚約破棄された公爵令嬢ですが、どうやら周りの人たちは私の味方のようです。

ましゅぺちーの
恋愛
公爵令嬢のリリーシャは王太子から婚約破棄された。 隣には男爵令嬢を侍らせている。 側近の実兄と宰相子息と騎士団長子息も王太子と男爵令嬢の味方のようだ。 落ち込むリリーシャ。 だが実はリリーシャは本人が知らないだけでその5人以外からは慕われていたのだ。 リリーシャの知らないところで王太子たちはざまぁされていく― ざまぁがメインの話です。

どうも、死んだはずの悪役令嬢です。

西藤島 みや
ファンタジー
ある夏の夜。公爵令嬢のアシュレイは王宮殿の舞踏会で、婚約者のルディ皇子にいつも通り罵声を浴びせられていた。 皇子の罵声のせいで、男にだらしなく浪費家と思われて王宮殿の使用人どころか通っている学園でも遠巻きにされているアシュレイ。 アシュレイの誕生日だというのに、エスコートすら放棄して、皇子づきのメイドのミュシャに気を遣うよう求めてくる皇子と取り巻き達に、呆れるばかり。 「幼馴染みだかなんだかしらないけれど、もう限界だわ。あの人達に罰があたればいいのに」 こっそり呟いた瞬間、 《願いを聞き届けてあげるよ!》 何故か全くの別人になってしまっていたアシュレイ。目の前で、アシュレイが倒れて意識不明になるのを見ることになる。 「よくも、義妹にこんなことを!皇子、婚約はなかったことにしてもらいます!」 義父と義兄はアシュレイが状況を理解する前に、アシュレイの体を持ち去ってしまう。 今までミュシャを崇めてアシュレイを冷遇してきた取り巻き達は、次々と不幸に巻き込まれてゆき…ついには、ミュシャや皇子まで… ひたすら一人づつざまあされていくのを、呆然と見守ることになってしまった公爵令嬢と、怒り心頭の義父と義兄の物語。 はたしてアシュレイは元に戻れるのか? 剣と魔法と妖精の住む世界の、まあまあよくあるざまあメインの物語です。 ざまあが書きたかった。それだけです。

処理中です...