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23.別室にて①
しおりを挟む両陛下と共に、案内された部屋に入る。
「非公式の場だ。楽にしていい。
そこに座ってくれ。
ああ、ライアンとマリーナ嬢は、そこに立っていなさい」
陛下に促され、父と私はソファを勧められたが、ライアン様とマリーナは立たされたままだ。
居心地がいいとは言えない雰囲気の中、父と私は、そっとソファに腰掛けた。
「さて、ライアンよ。お前に尋ねたい事がある」
陛下は、眼光鋭くライアン様を見据えた。
「お前は我が国の第一王子だ。王族主催の公の場で特定の未婚の令嬢をパートナーとして連れてくる事の意味を分かっているのか?」
そう陛下に聞かれ、ライアン様は頭を下げて、ハッキリと答えた。
「分かっております。
このような軽率な行動を取り、あの場に混乱をきたして、両陛下にはご迷惑をお掛けしました」
ライアン様の言動に、両陛下はもちろん、私もびっくりした。
ライアン様は、このように言い訳もせず、自分の非を潔く認めるような人だった?
急に大人びたようなライアン様の様子に、両陛下も目を丸くして、二の句が告げない。
「また、社交界デビューする男爵令嬢を、両陛下の挨拶前にダンスに誘ったのも私です。
大変申し訳ありませんでした」
続けて言ったライアン様の言葉で、ようやく陛下が我に返ったようだ。
「何故あのような行動を取った?」
「それは……」
陛下の質問に、ライアン様は言いにくそうにした後、チラリと私を見た。
「マリーナ男爵令嬢は、今、ヘルツェビナ公爵家に世話になっているそうです。
今回も、公爵とご令嬢であるルーシー嬢と共に参加していると。
社交界デビューのパーティでは、ルーシー嬢はお父上のエスコートで参加する事をとても楽しみにされていたと聞いています。
しかし、マリーナ男爵令嬢は、家庭の事情からエスコートをしてくれる者がいなかった。
マリーナ男爵令嬢を公爵家が預かっている理由は、陛下もご存知のはず。
なのに、手を差し伸べず、公爵家ばかりに負担をかけているのは、王家として申し訳ないと思い、会場に入る手前で男爵令嬢のエスコートを引き受けました」
そう説明した後、ライアン様はしっかりと両陛下を見て、ハッキリと言った。
「なので、私はマリーナ男爵令嬢とは、婚約する意思はありません。
この事は、ハッキリとこの場で告げさせて頂きたいと思います」
それを聞いたマリーナが、
「そんな! ライアン様! わたくしの事、綺麗だと仰って下さったではありませんか!」
と叫び、ライアン様の腕を掴む。
「マリーナ! 控えなさい!」
父が立ち上がり、慌ててマリーナをライアン様から引き離す。
「申し訳ございません。我が家で預かっている者が大変失礼致しました」
そう言って父が頭を下げたので、私も立ち上がって同様に頭を下げる。
私たちが先にマリーナを抑えた事で、陛下達も気持ちを収めてくれたようだ。
「良い。公爵たちはまだ男爵令嬢を預かってから日が浅い。公爵家に非はない事は分かっている」
陛下はそう言って、父と私に再度腰掛けるよう促した後、マリーナを見据えた。
「先にマリーナ男爵令嬢に言っておこう。
君の境遇は知っている。
しかし、ポルシュラス男爵は真面目な男だ。
君に下卑た行動をしたとは信じられないのが本音だ。
しかし、そう感じた何かがあるのかもしれない、それらは当人でしか分からないと判断して、距離を置く為に君は他家に預けられた。
それは理解してるね?
今の君の行動は、その君を受け入れてくれた公爵家に対し、恩を仇で返す行動だ。
そして、もとより、王家との婚姻は伯爵家以上と決められている。
身分不相応の行動は慎むように」
陛下は厳しくマリーナにそう言った後、部屋に控えていた騎士に命じた。
「マリーナ男爵令嬢を公爵家まで送るように」
「え……」
陛下の言葉に、マリーナはびっくりして何か言おうとするが、父に睨まれて口を噤む。
そして、騎士に連れられて退室した。
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