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13.実力テストの結果
しおりを挟む一週間経ち、前期実力テストが行われた。
今日はその結果発表と、前期課程の終業式がある。
そして休みの間に、社交界デビューのパーティが王宮で行われる予定となっていた。
「ルーシー、テストの結果発表が貼りだされたわよ。見に行きましょう!」
モニカに誘われて、結果発表を見に行く。
すでに、大勢の生徒達が集まっており、大変賑やかだ。
「え~っと。
あ、あったわ! 残念! 5位だったかぁ」
モニカは5位の順位に嘆いていたが、女子で5位はとても良い成績だと思う。
通常、ほとんどは、官僚などを狙っている男子生徒で上位を占められているからだ。
「5位って、凄くいいと思うわよ。おめでとう、モニカ」
私は笑顔でモニカを称賛した。
モニカは、はにかみながら
「ありがとう」
と言ってから、成績表を見る。
「え~っと、ルーシーは……。
あ、11位だわ。おかしいわね?
ルーシーは、わたくしより頭が良いのに。
調子でも悪かったの?」
モニカはそう言って、私を見る。
「ふふっ。モニカったら、わたくしを買いかぶりすぎよ。
これがわたくしの実力って事だわ。
真摯に受け止めないとね」
私の言葉に、モニカは首を傾げながら、納得のいかない様子だった。
モニカ、本当にごめんね。
そして、ありがとう。
でも、これくらいを狙っての事だったから、自分では大満足よ。
ライアン様は23位だった。
前の時は、一学年の前期の成績は、わたくしは一位で、ライアン様が32位だったから、ライアン様も今回の人生では、少し頑張ったのかも知れない。
このまま、ライアン様の成績と付かず離れずにし、クラス分けでは上手く離れられるような成績を後期でも取らなければ。
そんなふうに考え込んでいると、隣りでモニカが嫌そうな声で話しかけてきた。
「ちょっと見てルーシー。一位はあの子よ。
マリーナ・ポルシュラス男爵令嬢。
凄く意外だわ。そんなに頭が良く見えなかったのに」
その言葉で周りを見ると、結果発表の前で、より一層賑やかに騒いでいるグループに気付いた。
「マリーナ! さすがだよ!」
「マリーナは、可愛いだけでなく頭まで良かったなんて!」
「どんな勉強の仕方をしたの? ぜひご教授願いたい!」
マリーナを囲んで、令息たちが次々と褒め称えている。
「そんな……わたくしなんて。
たまたま運が良かっただけの事ですわ。
本来、高貴の方々の足元にも及ばない身分ですもの。
男爵家では、大した講師の方もお呼び出来ませんでしたし……
ですから、皆様。これからもわたくしに色々と教えてくださいませね」
マリーナにそう言われて、令息たちは、
「なんて謙虚なんだ」
と、一様に感動している様子だ。
でも私には、何となく分かった気がする。
多分、マリーナは前の人生で受けた実力テストの内容を覚えていたのだろう。
私より一年下だったから、一学年で受けた実力テストの内容も、私より鮮明に覚えていたはずだ。
だから、今回はその内容を重点的に暗記すれば、余程でない限りは良い結果を収められるはず。
「凄いわね。マリーナに心酔している令息たちがあんなにいるなんて。
高位貴族への嫌味を含ませながら、発した言葉も分からない令息たちばかりだけど」
モニカが呆れながら、あの集団を見てそう言っている。
「さぁ、もう行きましょう。こんな所に長居は無用だわ」
私はそう言って、立ち去ろうとした時、後ろからライアン様がやって来て、大声で疑問を投げつけた。
「何故、ルーシー嬢が一位ではないのだ?
一位は誰だって?
マリーナ・ポルシュラス?」
ライアン様の大声に、マリーナ達が振り返って、こちらを見る。
ライアン様の姿を確認すると、マリーナが近づいてきて、ライアンさまに挨拶を始めた。
「ライアン第一王子殿下におかれましては、初めてご挨拶申し上げます。
先程、名前を挙げられたマリーナ・ポルシュラスとは、わたくしの事でございます」
そう言ってカーテシーをする。
それは、男爵令嬢では出来そうにないほどの所作の高度なカーテシーだった。
「ほぅ。そなたが一位を取った者か。
ポルシュラスとは、あまり聞いた事がないが、どのような地位の家格なのだ?」
「継父は男爵を授かっております」
マリーナは、そう言って説明をする。
この二人は今の人生においては、初対面であった事実に、私は驚きを隠せないでいた。
「継父?」
ライアン様の質問に、
「はい。わたくしの実父は子爵でありましたが、不慮の事故にて7年ほど前に亡くなり、縁あって母がポルシュラス男爵と再婚をしましたので、今はポルシュラスの姓を名乗っております」
7年ほど前なら、やはり前の人生と同じ頃に実父を亡くしたようだ。
「なるほど。苦労したのだな。
なのに、勉学において一位であるのは素晴らしい! 所作も低位貴族とは思えないほど綺麗だしな!」
そう言って、手放しでライアン様はマリーナを褒め称える。
そうそう。このまま二人が結ばれればいいと思う。私は絶対に邪魔はしないわ!
そう願っていた私の方を、マリーナは徐に向き、ニッコリと笑って言葉を発した。
「わたくしは、ヘルツェビナ公爵家とは遠縁に当たるのですもの。所作ももちろん公爵家仕込みですので。ね、ルーシーお姉様?」
え?
ちょっと止めて!?
呑気にここで鑑賞している場合じゃなかった!
なんでこちらに話しを振ってくるの!?
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