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宝玉編~
54.宝玉を巡って④
しおりを挟む「あの宝玉はね。本来はこの世界を作った女神様が、あの小説を模して作った運命を記録したものなの。でも、転生の時に思わぬ出来事が起こってしまった。
それは本来入るはずの魂が入れ替わった事だった」
「ち、ちょっと待ってよ! そこがおかしいのよ! 私は前世で逆恨みで刺されて死んだのよ!?
それを不憫に思って転生させてくれたはずなのに、何で私が悪役令嬢のほうの魂を勧められなければならないのよ!」
アリアはそう叫ぶ。
刺されて死んだんだ……知らなかった。
「何故かは分からないわ。それは女神様の考えだったのだから。
でも、だからって勝手に魂を選ぶ権利はなかったはず。それに女神様の許可なく宝玉を持っていく権利もね」
「ちゃんと、ちょうだいって言ってから持ってきたのよ! 私は悪くないわ!」
「女神様はあげるなんて一言も言わなかったはず。一方的に言って持ってきたなら、勝手に取ったのと同じだわ」
「じゃあ、ちゃんと女神様がはっきり言えばよかったんじゃない! 女神様は私が言った通りの事をしてくれたのよ! 魂だって、こっちがいいって言ったらすぐに替えてくれたわ! だから、私のせいじゃないわよ!」
あぁ、その点は全く反論の余地はない。
ラケシス様……いくら弱っていたとはいえ、本当に勘弁して……。
「め、女神様にも何か事情があったんでしょう。でも、宝玉の件については止める間もなく転生前に持って行ってしまったとお聞きしたわ。
まさか、宝玉が魂と交じって神界の外に出てしまうとは想定外だったそうよ。
だから、その宝玉は女神様の所へ返して欲しいの」
私の説明に、アリアはやや怯んでいるも、それでもまだ諦めきれない様子。
「それが本当の事かどうか分からないじゃない! 貴女が適当な事を言っているのかも……
願いを叶えてくれるこの玉が、この世界を壊すなんてどうしても思えないわ」
ここまで言っても平行線か……。
確かに爆発するなんて本当かどうかなんて証明は出来ない。
ラケシス様が直接アリアに伝えないと無理なのかな……
「貴女がその宝玉にどれだけお願いをしてきたのかは分からないけど、貴女の欲を叶える度に宝玉は黒く大きくなってきていたのではないの?
貴女が持っていた宝玉は、12歳の時にお茶会で見た時より随分と黒く大きくなって来ているように思えるわ。すでに元の虹色のビー玉様には見えないもの」
私がそう言うとアリアはポケットの中から宝玉を取り出し、こっそりと確認している。
やはりその大きさは元より大きく、この前お風呂場で見た時よりもさらに大きくなって黒ずんでいるように見えた。
「アリア様。もう、元の面影など残っていないわ。その宝玉を渡して? そうすればこの世界は助かるのよ?」
アリアが迷っている様に見えたので、もう一押ししてみる。
しかし、アリアは私を見て探るように言ってきた。
「もしかして、この宝玉がなくなったら運命が変わるのではないの? この宝玉は運命が記録されたものだと言ったわよね? それって、強制力がこの宝玉にはあるけど、返してしまったら小説通りの運命がなくなって、貴女が処刑される未来が無くなる。
もしかしたら貴女がヒロインになれる未来に書き換えられるんじゃない?
だからそんなに必死にこの宝玉を取り返そうとしてるのかも……
危ない! 危うく騙されそうになったわ!」
「ち、違うわ!」
確かに自分の運命を変えたくて取り返そうと頑張ってきた。
でも、爆発の危険性を聞いてからは、大切な人達を守りたいって思ったから、何もかもさらけ出してきたのに……。
この思いをどうしたらアリアに伝わるのか……。
どう言えばいいのか分からなくなって、私は次の句が告げないでいた。
「ちょっとよろしいでしょうか」
そんな時、レイラが口を開く。
あ、そういえばレイラは何かの情報を持っているとか。
この場の打開策があるかもしれないと思い、レイラを見る。
「ええ、レイラ。どうぞ」
「ありがとうございます」
そう言ってレイラは私の隣りに立ち、アリアと対峙した。
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