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宝玉編~
53.宝玉を巡って③
しおりを挟むアステルが衛兵達によって部屋から出された後、陛下が私に聞いてきた。
「エマ嬢、2人きりで話すには何か訳があるのか? 我々の前では話せない事だろうか?」
私は少し考えてから返答する。
「これからアリア様とお話する事は、とても信じ難い事です。
皆様を困惑させるだけかと思われますので……」
そう言った私にグレイが言ってくる。
『いいんじゃないかニャ? ここで話しても。
皆の前で話し合った方が皆も納得するだろうしニャ。
それに……もう1人、ここに呼びたい者もいるのだニャ』
「それは、誰なのですか?」
教皇様の質問にグレイが答える。
『レイラ・アスティだニャ』
「え!? レイラを呼ぶの?」
グレイがレイラをここに呼ぶとは何故?
不思議に思った私の問いかけにグレイは軽く頷く。
「幻獣様の言う通りにしよう。
レイラ・アスティ伯爵令嬢をここに」
陛下がそう命令すると、騎士団長が頷いて一旦部屋を出る。
「改めて全員揃ったらまた再開するとして、一旦休憩をとろうではないか」
その陛下の提案で、それぞれ休憩を取ることになった。
私とグレイは案内された部屋に入り、私がソファに座るとお茶の準備がなされる。
「あの……幻獣様はどのようなものを食されますか?」
恐る恐る聞いてきたメイドに、私と同じ物をと伝える。
2人分のお茶とお茶菓子を準備して、早々にメイドは下がった。
誰も居なくなった途端、グレイは人間の姿に戻る。
「グレイ、お疲れ様」
「あぁ」
グレイはソファに腰掛け、長い足を無造作に組んでお茶を飲んだ。
「何故レイラまで呼んだの? わざわざ呼ばなくてもこのままアリアを説得すれば……」
そう言った私にグレイは首を横に振る。
「いや、アリアは意地でもこちらの言う事を信じようとしないだろう。認めてしまえば自分の非を認めたも同然なのだから」
「レイラなら説得出来るの?」
「レイラの持つ情報が必要になるだろうな」
レイラの持つ情報とは何だろう?
ラケシス様から何か言付けでもあったのかな?
「まぁそうね。ラケシス様の御使いがもう1人居た方がより一層、説得しやすいかもね」
うんうんと頷きながら、レイラが王宮に来るまでの間、休憩を取りながら今後のアリアへの対応をグレイと共有していた。
「さて、これで全員揃ったな。
改めてエマ嬢、アリア嬢への納得のいく説明を願えるかな。我々は2人の邪魔はせず聞いているだけと約束しよう」
私たちは再び部屋に集められ、話し合いの再開をする事になった。
もちろんこの場にはレイラもいる。
アステルはあの後、必死で陛下に願い出て一切邪魔はしないからアリアの傍に居させてほしいと言ったらしく、アステルもこの場に居る。
陛下、甘いな……。
集まった私たちに、陛下が口火を切った事で、私はアリアに向かって話し始めた。
「アリア様、貴女、魔法大会の時に私に日本って知ってる? って聞いてきたわよね? それは何故? どうして私が日本からの転生者だと思ったの?」
「別に。何となくそう思っただけよ」
私の質問に、アリアは不貞腐れたように話す。
「違うよね? 本来のエマ・ベルイヤの行動とは全く違った行動を取るし、私が聖属性の魔法が使える事も不思議だったはず。
だって小説の中のエマは闇属性だったものね」
「なっ!? やっぱり転生者だったんじゃない!
貴女がちゃんと決められた行動を取らないから、話が上手く進まなかったのよ!
今度こそ私は幸せな人生を歩むために転生したというのに!」
アリアの言葉に私は首を傾げる。
「何故私がその通りに行動しないといけないの? 小説の通りなら、私は18歳で処刑される運命なのに」
私の発言を聞いて、グレイとレイラを除く他の人達はギョッとする。
しかし最初の約束通り、誰も口を挟まず、じっと聞いてくれているのが分かって有難かった。
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