52 / 66
宝玉編~
51.宝玉を巡って①
しおりを挟む「では、さっそく本題に入りましょう。
エマ嬢、もしくは幻獣様からお話頂けるのでしょうか?」
教皇様がそう言って、私とグレイに視線を向けた。
『我から話すにゃ。
我は女神様より、この世界を壊そうする要因を取り除き、女神様にその要因となったものをお届けすることが、一番の目的であるにゃ。
しかし、その要因となる物がなかなか手に入れる事が出来ないでいるのにゃ』
「その要因とは、どのような物なのですか?」
話を聞いていた教皇様が尋ねてくる。
「それについては、わたくしからご説明致します」
そう言って私は1歩前に出る。
「その要因となるものは、本来は神界にしか存在しない物。しかし、この世界に産まれる魂と共に、こちらの世界に入ってきてしまったのです」
私はそう言って周りを見回し、誰からも質問がない事を確認した後、さらに説明を続けた。
「ソレは人間の悪意や欲などに耐性がない為、それらに触れる事で悪影響を受けてしまい、その悪意や欲をソレがどんどん吸収してしまっているそうです。
その吸収が限界に達してしまった時、ソレが破裂してこの世界をも巻き込むような大爆発が起きるそうです」
私の説明に、陛下が教皇様を見て本当の事なのかを確認している。
教皇様は陛下の視線に大きく頷いた。
「まさに私が感じ取った事です。
何やらこの国が今にも爆発に巻き込まれそうな予感を感じ取りました」
「して、ソレはどんな物で、何処にあるのか分かっているのだろうか?」
陛下の問いに私は頷き、アリアの方を見る。
「ソレは本来、宝玉と呼ばれる物です。
宝玉はある人が持っております。
そして、その人が多分生まれた時からずっと持っている物で、今も肌身離さず持っているかと。
そうよね? アリア様」
私がアリアの方を見てそう言うと、一斉に皆がアリアに注目する。
「アリア嬢が持っている? 生まれた時から?
どういう事だ?」
陛下の質問はもっともだ。
私はアリアに向き直り、改めてアリアに問う。
「アリア様、貴女がこの世界に転生する時に女神様から祝福を頂いたでしょう?
その後で転生する間際に、女神様の所にあった物を持って転生したわよね?」
私の質問に、アリアは少し動揺しながらも、私を訝しげに見た。
「はぁ? エマさん、何を言っているの? 私はそんな危ない物、持ってないわよ!」
アリアのその言葉を受け、アステルがアリアを庇うようにしながら私を睨む。
「根拠のない言いがかりはやめてくれないかな。アリアはそんな危険な物など持っていない!
しかも、転生とかよく分からない事を言って、アリアを悪者に仕立て上げようとしているのか!?」
そう叫んでいるアステルの事は無視して、アリアに宝玉の特徴を伝える。
「この世界に来て、宝玉は形を変えています。
本来は虹色に輝く小さな玉ですが、この世界に来てその宝玉は、他の人には赤い魔石のように見えているそうです。
でも、私にはちゃんと虹色に輝く玉に見えていました。
アリア様、貴女もそうでしょう?
でも最近は、どんどん黒くなっていき、大きく変化していっている。
心当たり、あるよね? アリア様」
「え……まさか……で、でも……」
私のその言葉に、アリアは動揺している。
アステルもその赤い魔石に心当たりがあったのか、
「赤い魔石? 確かに出会った頃、アリアはずっと持っていた……。
あ、でもあれはペンダントトップに使ったはず。
最近は別の赤黒い大きめの魔石を持ち歩いてるよな? 私はずっと、アリアは魔石が好きなのかとずいぶんと魔石をプレゼントしたし……」
と呟いていた。
その言葉を聞いて、アステルに伝える。
「まさにソレですね。
最初の頃の赤い魔石と最近の物は同一のものです。最近見られた魔石は、年月を経て悪意や人の欲を吸い込んだものだと思われます」
私の言葉にアリアは慌てた様子で否定する。
「あ、あれは私のラッキーアイテムなのよ!
そんな話、信じられるわけないじゃない!」
アリアはそう叫び、部屋から飛び出ようとした。
しかし、部屋のドア前にすかさずグレイが移動し、アリアの動きを止めた。
『何処に行くつもりニャ? 逃げるニャ』
グレイの言葉に、アリアは叫ぶ。
「な、何なのよこれは!? こんなの知らない!
私はただ、ラッキーアイテムに願い事を祈っただけよ!? 何も悪い事などしていないわ!」
そう叫びながら、スカートのポケットの中に入っているものを握りしめていた。
116
お気に入りに追加
466
あなたにおすすめの小説

【完結】赤ちゃんが生まれたら殺されるようです
白崎りか
恋愛
もうすぐ赤ちゃんが生まれる。
ドレスの上から、ふくらんだお腹をなでる。
「はやく出ておいで。私の赤ちゃん」
ある日、アリシアは見てしまう。
夫が、ベッドの上で、メイドと口づけをしているのを!
「どうして、メイドのお腹にも、赤ちゃんがいるの?!」
「赤ちゃんが生まれたら、私は殺されるの?」
夫とメイドは、アリシアの殺害を計画していた。
自分たちの子供を跡継ぎにして、辺境伯家を乗っ取ろうとしているのだ。
ドラゴンの力で、前世の記憶を取り戻したアリシアは、自由を手に入れるために裁判で戦う。
※1話と2話は短編版と内容は同じですが、設定を少し変えています。
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。

そろそろ前世は忘れませんか。旦那様?
氷雨そら
恋愛
結婚式で私のベールをめくった瞬間、旦那様は固まった。たぶん、旦那様は記憶を取り戻してしまったのだ。前世の私の名前を呼んでしまったのがその証拠。
そしておそらく旦那様は理解した。
私が前世にこっぴどく裏切った旦那様の幼馴染だってこと。
――――でも、それだって理由はある。
前世、旦那様は15歳のあの日、魔力の才能を開花した。そして私が開花したのは、相手の魔力を奪う魔眼だった。
しかも、その魔眼を今世まで持ち越しで受け継いでしまっている。
「どれだけ俺を弄んだら気が済むの」とか「悪い女」という癖に、旦那様は私を離してくれない。
そして二人で眠った次の朝から、なぜかかつての幼馴染のように、冷酷だった旦那様は豹変した。私を溺愛する人間へと。
お願い旦那様。もう前世のことは忘れてください!
かつての幼馴染は、今度こそ絶対幸せになる。そんな幼馴染推しによる幼馴染推しのための物語。
小説家になろうにも掲載しています。

〈完結〉毒を飲めと言われたので飲みました。
ごろごろみかん。
恋愛
王妃シャリゼは、稀代の毒婦、と呼ばれている。
国中から批判された嫌われ者の王妃が、やっと処刑された。
悪は倒れ、国には平和が戻る……はずだった。
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。
神のいとし子は追放された私でした〜異母妹を選んだ王太子様、今のお気持ちは如何ですか?〜
星里有乃
恋愛
「アメリアお姉様は、私達の幸せを考えて、自ら身を引いてくださいました」
「オレは……王太子としてではなく、一人の男としてアメリアの妹、聖女レティアへの真実の愛に目覚めたのだ!」
(レティアったら、何を血迷っているの……だって貴女本当は、霊感なんてこれっぽっちも無いじゃない!)
美貌の聖女レティアとは対照的に、とにかく目立たない姉のアメリア。しかし、地味に装っているアメリアこそが、この国の神のいとし子なのだが、悪魔と契約した妹レティアはついに姉を追放してしまう。
やがて、神のいとし子の祈りが届かなくなった国は災いが増え、聖女の力を隠さなくなったアメリアに救いの手を求めるが……。
* 2023年01月15日、連載完結しました。
* ヒロインアメリアの相手役が第1章は精霊ラルド、第2章からは隣国の王子アッシュに切り替わります。最終章に該当する黄昏の章で、それぞれの関係性を決着させています。お読みくださった読者様、ありがとうございました!
* 初期投稿ではショートショート作品の予定で始まった本作ですが、途中から長編版に路線を変更して完結させました。
* この作品は小説家になろうさんとアルファポリスさんに投稿しております。
* ブクマ、感想、ありがとうございます。

【完結】初めて嫁ぎ先に行ってみたら、私と同名の妻と嫡男がいました。さて、どうしましょうか?
との
恋愛
「なんかさぁ、おかしな噂聞いたんだけど」
結婚式の時から一度もあった事のない私の夫には、最近子供が産まれたらしい。
夫のストマック辺境伯から領地には来るなと言われていたアナベルだが、流石に放っておくわけにもいかず訪ねてみると、
えっ? アナベルって奥様がここに住んでる。
どう言う事? しかも私が毎月支援していたお金はどこに?
ーーーーーー
完結、予約投稿済みです。
R15は、今回も念の為

夫の隠し子を見付けたので、溺愛してみた。
辺野夏子
恋愛
セファイア王国王女アリエノールは八歳の時、王命を受けエメレット伯爵家に嫁いだ。それから十年、ずっと仮面夫婦のままだ。アリエノールは先天性の病のため、残りの寿命はあとわずか。日々を穏やかに過ごしているけれど、このままでは生きた証がないまま短い命を散らしてしまう。そんなある日、アリエノールの元に一人の子供が現れた。夫であるカシウスに生き写しな見た目の子供は「この家の子供になりにきた」と宣言する。これは夫の隠し子に間違いないと、アリエノールは継母としてその子を育てることにするのだが……堅物で不器用な夫と、余命わずかで卑屈になっていた妻がお互いの真実に気が付くまでの話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる