【完結】運命の宝玉~悪役令嬢にはなりません~

らんか

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宝玉編~

50.何者!?

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 アリアを見ながらそう言う教皇様。
 
 確かにアリアもラケシス様からの祝福は受けている。それがとても微弱であることも当たっている。
 
 
 え? この教皇様、何者!?
 
 何でそんな事分かるのかな!?
 
 
 そう思っている私に、教皇様は優しく微笑む。
 
「不思議に思っていらっしゃるみたいですね。
 これは私の能力なのです。
 私は透視という特殊属性を持っています。
 別名は真実の目とも言われております」
 
 
 透視!?
 
 
「透視能力は、隠された物はもちろん、その人の持つ能力や、嘘を見抜く力、時には近しい未来をも見える事もある能力です」
 
 
 凄い……そんな能力があるなんて……。
 
 
 教皇様の言葉を受けて、陛下も付け足す。
 
 
「先程そなたが言っていた、この国一番の魔力保持者でもあるぞ」
 
「え!? 魔力84の!? あっ……」
 
 
「魔力200越えのあなたにそんなに驚かれるのは少し心外ですね。
 あぁ、でも84は少し古い情報です。今は96に上がりましたので」
 
 
 そう、にこやかに話す教皇様は、グレイのほうをもう一度見た。
 
 
「でも、流石に幻獣様の事は見通せないですね。本来の姿のみ分かる程度です」
 
 
 
 この人、なんか怖い。
 絶対に隠し事なんか出来ないやつだ。
 
 大司教様は、ある意味怖いもの知らずだな。
 こんな教皇様を怒らせるなんて……。
 
 さすがはレスターの父親だわ。
 
 
 
『お前は人間にしては、鋭い洞察力を持っているにゃ。よくぞ我を見分けられたものだにゃ』
 
 
 そこに突如としてグレイがケット・シーの姿で皆の前に姿を現わし、言葉を発した。
 
 しかもいつもの猫サイズではなく、今は2、3メートルはある、かなりの巨大サイズで。
 
 突如として現れた幻獣に、その場に居た人達は驚いていたが、やはり神の遣いである事が本能で分かるのか、恐怖で逃げる人は1人もいない。
 
「なんて神々しいお姿なんだ……」
「お目にかかれるなんて思ってもみなかった」
「お言葉も聞けるなんて我らは幸せ者だ……」
 
 そんな風に皆、グレイの姿に惚けたように見蕩れている。
 
 
「な、なんでそんなに巨大サイズなの!?」
 
 
 そんな中、そのような反応をした私にグレイは嫌な顔をして、そっぽ向く。
 
 するとグレイから念話が送られてきた。
 
 
『もともとの本来の大きさになっただけだ。今まではお前に合わせて小さくなっていたんだ。これが本来の我の姿だ』
 
 
 えー。ずっと一緒にいたのに1度もそのサイズを見せてくれなかったのは何でなのよ……。

 
 ブツブツ文句を言っている私を無視してグレイは陛下や教皇に向かって話し始めた。
 
 
『我はこの世界の創造主、ラケシス様の遣いの者だにゃ。訳あってこの世界に留まり、ラケシス様の愛し子であるエマと共にいるのにゃ。
 お前が真実を見抜く力を持っているなら、もう分かっていることなのではないかにゃ?
 ここで皆の前で話していいのかにゃ?』
 
 
 グレイの言葉に、教皇様は真剣な表情で頷き、陛下に進言する。
 
 
「陛下、私が帰国を急いだのも、この幻獣様の仰るある事を知らせる為にございます。
 つきましては場所をかえ、内密にお話したい事がございます」
 
 
 教皇様の真剣な言葉に、陛下も表情を引き締めた。
 
 
 
「皆の者、エマ嬢が女神様の愛し子である事がこれで証明された。
 能力や魔力が嘘偽りないものだと言う事も、ここに居る幻獣様や真実の目を持つ教皇のおかげで証明されたのだ。
 今後の対応など、これからの事は追って指示を出す。
 本日はこれで解散とする」
 
 
 陛下のお言葉で、この場は解散となった。
 
 
 そしてグレイと教皇様が言いかけた事を話し合う為の少人数の席が改めて設けられた。
 
 
 
 
 この場に居るのは、陛下を始め、王妃様、教皇様、宰相様、騎士団長、アステル、アリア、グレイ、そして私だ。
 
 
「まず。何故アリア嬢をこの場に呼んだのだ?」
 
 
 陛下は教皇様にそう質問する。
 
 
「それは今から、エマ嬢か幻獣様がご説明下さるかと」
 
 
 教皇様はしれっとこちらに振ってくる。
 
 
「お前!? この期に及んでアリアに何を言うつもりだ!」
 
 
 アステルが私に食ってかかってきた。
 
 こいつは私が女神様の愛し子だと知った上でのこの態度なのか?
 
 うん。もう絶対こんな奴の婚約者候補は下ろさせてもらおう!
 
 
「アステル。女神様の御加護を頂いている愛し子であるエマ嬢になんて事を言っているのです?
 お前はいつもそんな態度をエマ嬢に取っていたのですか?」
 
 王妃様が冷ややかな視線を向けながら、アステルにそう言った。
 
 
「あ……いえ……。申し訳ございません」
 
 
 アステルは、表情を固くしながら王妃様に謝っている。
 
 
『謝る相手が違うだろうがニャ』
 
 
 その様子を見ていたグレイが、しれっとそう言った。
 
 
 幻獣様にそう言われた事がとてもまずいと感じたのだろう。
 アステルが慌てて私の方を向き、頭を下げる。
 
「エマ嬢、大変申し訳なかった!」
 
 
 驚いた。
 
 エマ嬢だなんて、初めてそう呼ばれたわ。
 
 それにしてもグレイが幻獣の姿で言うと、こんなにも態度を改めるのね。
 人間の姿の時に同じ事をアステルに言った時は、グレイに食ってかかる勢いで反論していたのにね。
 
 
 グレイの人間の姿もここでお披露目すれは、もっと皆、驚くだろうな。
 主にアステルとアリアは。
 
 そんな事を考えながら、アステルに返答する。
 
 
「初めてエマ嬢だなんて呼ばれましたね。いつも、おい! とか、お前呼びだったので驚きましたわ」
 
 
 そう返答した私をアステルは俯きながらも、悔しそうに手を握りしめている。
 
 
 その様子を見た陛下がため息を吐いて、王妃様に相談していた。
 
 
「やはりエマ嬢は婚約者候補から外した方がいいのではないか? こんなにも険悪だったなんて知らなかったぞ」
 
 
「そうでございますね……2人の相性は最悪な様な気が致します」
 
 
 コソコソと2人で話しているのを、耳をダンボにして聞いている。
 
 
 ふふふ。
 これは候補から外れる予感?
 
 
 運命の強制力から逃げ出せそうな事に、ついこんな場であるにもかかわらず笑みがもれそうになった。
 
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