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王立学園編~後編
42.魔法大会⑦
しおりを挟む第六回戦のトーナメント表が貼りだされた。
私と対戦するのは、あのレスターだった。
レスター。
大司教の息子の割に口が悪い。
しかも、あのメンバーの中で1番の放蕩者だ。
私は小説は読んでいないけど、小説の中では真面だったとグレイが言っていた。
何処かが微妙に違う世界になってきているのだろうが、まさか大司教の息子が1番の放蕩者でいいのだろうか?
「まぁいいわ。私に対する態度も酷いものですもの。思い切り叩きのめせるわね」
次の対戦を密かにワクワクしながら、控え室でモニターを観る。
一組目はマイクと、同じE闘技場から来た水属性の2年の女子生徒だ。
相変わらず、あの女子生徒は上手く魔法を使いこなしている。
何年も上位にくい込んでいる火属性のマイクが苦戦してたあるようだ。
心の中で女子生徒を応援しながら観ていると、いつの間にかアリアが私に近付いてきていた。
「ねぇ」
アリアが私に話しかけてくる。
思えば、2人だけで話した事って、あったっけ?
「はい?」
短くそう返事すると、アリアが私に聞いてきた。
「日本って、知ってる?」
いきなり聞いてくるなんて反則だ。
ビックリしたが、淑女教育のおかげで何とか顔に出さずに済んだ。
「なんですの? それ」
「……」
私の答えに、まだ疑いの目を向けている。
ここで同じ転生者だと名乗るわけにもいかない。
警戒されているのに、名乗れば余計に警戒されるような気がして、何とか知らないフリで押し通す。
「…………まぁ、いいけど」
そう言って私から離れていく。
一体、何故今になって聞いてきたのだろう?
不思議に思ったが、今は対戦に集中だ!
またモニターを見ようする。
すると、ちょうど勝敗が決まったようだ。
「ええ⁉︎ アステル様、マイクが負けましたわよ⁉︎」
アリアが大声でそう叫んでいた。
あら、マイク負けたのね?
心の中でザマァ!と叫んでいたが、もちろん顔には微塵も出さない。
しかし、あの女子生徒なかなかやるわね。
私も頑張らないと!
二組目は、オリバーと火属性の騎士科の男子生徒だ。
お互い騎士科という事で、魔法を纏っての剣の闘いは見応えがある。
オリバーは風属性だ。
上手く風を使って、火の向きを相手の方に変えている。どうやら相手より、剣の腕と風の威力が勝っていたようだ。
「勝者、オリバー・ベオグラード!」
モニター越しにオリバーの勝利が伝えられた。
アステル、アリア、レスターはオリバーの勝利を観て、頷いている。
「当たり前の結果だな」
「オリバーがこんな所で負けるはずかない」
「流石はオリバー様ですね」
その言葉を聞きながら、マイクが落ち込んでいた。
「アステル様、申し訳ありません……」
マイクがそう言うと、アステルはため息を吐いた。
「マイク。相性の悪い相手と当たってしまったとはいえ、残念だ。私の側近ならもっと励め」
「……申し訳ありませんでした」
私はその会話を少し離れた所で聞いていた。
アステルは完璧主義だ。
側近の今までの功労を労う事はせず、負けた事に重きを置いている。
案外、あのメンバーの絆は脆いものかも知れないな。
そう感じながら、あの集団を眺めていた。
次は三組目。
私の番だ。
出場選手として名前が呼ばれる。
控え室から出ようとすると、アステルが声を掛けてきた。
「お手並み拝見だな。会場で直にお前の戦い方を見てやろう」
「ええ、もちろん! どんな不正も見逃しはしませんよ!」
「エマさん、正々堂々と戦って下さいね」
マイクやアリアまでもがそう言ってくる。
私はにっこりと笑いながら、笑顔で答えた。
「ええ、ぜひ間近で見学して下さいませ。不正が見つかるといいですね」
私の言葉にマイクがいきり立っているが、無視して会場に足を踏み入れた。
目の前にはレスターが既に立っている。
「両者、前へ」
審判の言葉に前に出ると、試合開始の笛が鳴った。
レスターは木属性だ。
すぐに地面に草木や木を生やし、植物の蔓を私の手足に絡ませ動きを封じてきた。
「ハハハッ! 呆気ないものだな! このまま枝で突き刺してもいいんだぞ?」
優越感に浸りながら、そう言ってくる。
無言で光魔法を展開し、指先から光レーザーを出して蔓を焼きちぎる。
そして、天空より電撃を呼び寄せ、雷の閃光を地に降らせて、地面から生えている草木諸共、焼き尽くした。
「なっ!?」
レスターが驚いている隙に今度はこちらから攻撃を仕掛ける。
先程集めた雷エネルギーを今度はレスターに向けて放った。
「うわっ!!」
レスターが間一髪で避けるが、すぐさま今度は光の刃を放つ。
レスターの腕に直撃したが、そこからレスターは体勢を整えて、葉の刃を放った。
すぐにシールドを展開し、アイテムボックスから槍を取り出す。
光魔法を纏わせて、光球を連続で複数放つと、レスターに直撃し、ようやく倒れた。
そのまま審判がテンカウントするも起き上がらない事を確認し、勝敗が決まった。
「勝者、エマ・ベルイヤ!」
少し手間取った事で、息切れする。
体力が持たない為、長期戦は無理である事は、グレイとの練習で確認したことだ。
この弱点を見破られないよう、今度はもっと最短で勝利出来るように考えて行動しなければ。
こちらを驚いた顔で見ている攻略対象者達とアリアを見ながら、そう思った。
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