上 下
38 / 66
王立学園編~後編

37.魔法大会③

しおりを挟む
 
 第一回戦の最終戦が終了したようだ。
 今から第二回戦が始まる。
 
「よし!」
 
 自分に気合いを入れ、場内で名前を呼ばれるのを待つ。
 
 第二回戦での相手は、一回戦の初戦で見た剣に炎を纏う騎士科の2年生の男子生徒だ。
 
 
 両者の名前が呼ばれ、闘技場の中に入る。
 
 
「今から第二回戦を開始する。両者、前に」
 
 
 両者が位置に着いたのを確認し、試合開始の笛が鳴った。
 
 
 相手はすぐに持ち込んでいた剣に炎を纏う。
 
 私もアイテムボックスから槍を出して、光エネルギーを纏わせた。


 ちなみにアイテムボックスから取り出している武器は、全て祖父母に用意してもらった。
 グレイとの修行期間中に祖父母に会いに行き、大会時に使用出来そうな武器を選別しながら自分に合う物を探したのだ。

 祖父母には感謝しかない。
 また落ち着いたらお礼の連絡を入れよう。祖父から貰った魔石通話機で。

 
 そんな事を考えながら、相手が剣で切りかかろうとする前に、槍の先から光エネルギーを凝縮した光球を放つ。
 
 相手は上手に剣で跳ね返しながら避けていた。
 
 うん、やっぱりこの人、強い。
 
 私は対戦経験値なんてない。
 グレイとの付け焼き刃の練習なんて、何年も訓練してきた人には到底敵わない。
 
 だから、私の手段は先手必勝だ。
 
 相手に次の攻撃をさせる間を与えず次の攻撃を繰り出す。
 
 私は右手で持っている槍から光球を出しながら、空に向かって左手をかざす。
 
 そして空から相手目掛けて電撃波を落とした。
 
 目の前から来る攻撃と、空から同時に来る攻撃を避けきれず、相手はもろに電撃波をくらう。
 
 持っていた剣を落とし、そのままその場に倒れた。
 
 審判は相手の状態をみて、意識を失っていることを確認すると叫ぶ。
 
「勝利、エマ・ベルイヤ!」
 
 
 今度も更なる攻撃魔法に呆然としていた見学者達だが、その審判の声に興奮状態で歓声が湧き上がった。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「何やら、違う闘技場から凄い歓声が聞こえてくるが、何処だ?」
 
 
 その歓声が聴こえて不思議に思った第1王子アステルは、傍に控えていた護衛騎士に尋ねた。
 
「他の闘技場の事はまだ報告が入っておりませんが、調べて参りましょうか?」
 
「……いや、まぁいい。どうせ後で分かる事だ」
 
 そう言って、次の自分の出番を待つ。
 
 
 アステルの属性は、光だ。
 主に光のエネルギーを白い矢に変えて攻撃するのを得意としている。
 光魔法と聖属性魔法の攻撃魔法は似ていることから、アリアと二人でよく訓練をしていた。
 
 アリアも今頃、違う闘技場で頑張っているだろうと、アステルは想像しながら、フッと笑顔になる。
 アステルは今回の大会で優勝した暁には、婚約者をアリアに決めて欲しいと陛下に願い出るつもりだった。
 
「あんな冷やかしで出てくるような女に関わりたくもない。どうせあの女は一回戦でボロボロにやられて負けている事だろう」
 
 アリアと同じ聖属性を持つあの女は、入園当初より何かとアリアに嫌がらせをしていると聞いている。
 証拠もないのに決めつけるなと、前にグレイやアストナ先生から指摘され、確かにあの女が嫌がらせをした証拠がない為、一方的に決めつける事はやめたが、それでも疑わしい事に変わりは無い。
 
 よりによってその女がアリアと共に僕の婚約者候補に上がるなど、あってはならない事だ。
 強く陛下に進言したが、陛下は聞き入れては下さらなかった。
 
 このまま、万が一アリアが聖女の条件を満たせない場合、高位貴族であるあの女の家を後ろ盾とするために、あの女が婚約者に決まってしまう。
 
 そう考えると居ても立っても居られなかった。
 
 そんな時に、この大会の事を思い出したのだ。
 
 だから何がなんでもこの大会で優勝し、陛下にアリアの事を願い出る。
 
 そうアステルは決意していた。
 
 
 
 
 
 
 
 奇しくもアステルとエマの願い事がほぼ同じであるとは知らないエマは、着々と第三回戦まで勝ち上がっていた。
 
 
「エマ! お疲れ様! こんなに強いだなんて、本当に信じられないわ! 第三回戦勝利、おめでとう!」
 
 セリーヌが駆け付けて激励してくれる。
 
「おい、攻撃方法が単調だぞ。明日の試合はもっと工夫を凝らせ」
 
 そしてグレイはダメ出しをしてきた。
 
「そこは、お疲れ様、でしょう? これでも初めての対戦だったのよ? 経験値のなさを痛感しているところよ。もう少し労わってほしいわね」
 
 私がグレイに文句を言っていると、グレイは鼻を鳴らして言ってくる。
 
「ふん。三回戦ごときでこのザマじゃ、優勝には程遠いな」
 
 そう言った後、念話で
『あとで対戦の見直しをするぞ。まだまだ訓練が必要だ』
 と言ってくる。
 
 
 (嘘でしょ!?)
 
 念話でそう言ってグレイを見るが、グレイは当然とでも言う様な顔で見てきた。
 
 
「セリーヌ……あなたの優しさが身に染みるわ」
 
 力ない笑顔でセリーヌに抱きついた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

逆行令嬢は聖女を辞退します

仲室日月奈
恋愛
――ああ、神様。もしも生まれ変わるなら、人並みの幸せを。 死ぬ間際に転生後の望みを心の中でつぶやき、倒れた後。目を開けると、三年前の自室にいました。しかも、今日は神殿から一行がやってきて「聖女としてお出迎え」する日ですって? 聖女なんてお断りです!

異世界に転生したら溺愛ロマンスが待っていました!皇太子も騎士もみんなこの世界"好き"のハードル低すぎませんか!?~これサダシリーズ1~

国府知里
恋愛
 歩道橋から落ちてイケメンだらけ異世界へ!  黒髪、黒目というだけで神聖視され、なにもしていないのに愛される、謎の溺愛まみれ! ちょっと待って「好き」のハードル低すぎませんか!?   無自覚主人公×溺愛王子のハピエン異世界ラブロマンス! ※ お知らせしました通り、只今修正作業中です!  シリーズ2からお楽しみください!  便利な「しおり」機能をご利用いただくとより読みやすいです。さらに本作を「お気に入り」登録して頂くと、最新更新のお知らせが届きますので、こちらもご活用ください。

お堅い公爵様に求婚されたら、溺愛生活が始まりました

群青みどり
恋愛
 国に死ぬまで搾取される聖女になるのが嫌で実力を隠していたアイリスは、周囲から無能だと虐げられてきた。  どれだけ酷い目に遭おうが強い精神力で乗り越えてきたアイリスの安らぎの時間は、若き公爵のセピアが神殿に訪れた時だった。  そんなある日、セピアが敵と対峙した時にたまたま近くにいたアイリスは巻き込まれて怪我を負い、気絶してしまう。目が覚めると、顔に傷痕が残ってしまったということで、セピアと婚約を結ばれていた! 「どうか怪我を負わせた責任をとって君と結婚させてほしい」  こんな怪我、聖女の力ですぐ治せるけれど……本物の聖女だとバレたくない!  このまま正体バレして国に搾取される人生を送るか、他の方法を探して婚約破棄をするか。  婚約破棄に向けて悩むアイリスだったが、罪悪感から求婚してきたはずのセピアの溺愛っぷりがすごくて⁉︎ 「ずっと、どうやってこの神殿から君を攫おうかと考えていた」  麗しの公爵様は、今日も聖女にしか見せない笑顔を浮かべる── ※タイトル変更しました

【完結】中継ぎ聖女だとぞんざいに扱われているのですが、守護騎士様の呪いを解いたら聖女ですらなくなりました。

氷雨そら
恋愛
聖女召喚されたのに、100年後まで魔人襲来はないらしい。 聖女として異世界に召喚された私は、中継ぎ聖女としてぞんざいに扱われていた。そんな私をいつも守ってくれる、守護騎士様。 でも、なぜか予言が大幅にずれて、私たちの目の前に、魔人が現れる。私を庇った守護騎士様が、魔神から受けた呪いを解いたら、私は聖女ですらなくなってしまって……。 「婚約してほしい」 「いえ、責任を取らせるわけには」 守護騎士様の誘いを断り、誰にも迷惑をかけないよう、王都から逃げ出した私は、辺境に引きこもる。けれど、私を探し当てた、聖女様と呼んで、私と一定の距離を置いていたはずの守護騎士様の様子は、どこか以前と違っているのだった。 元守護騎士と元聖女の溺愛のち少しヤンデレ物語。 小説家になろう様にも、投稿しています。

転生したらただの女子生徒Aでしたが、何故か攻略対象の王子様から溺愛されています

平山和人
恋愛
平凡なOLの私はある日、事故にあって死んでしまいました。目が覚めるとそこは知らない天井、どうやら私は転生したみたいです。 生前そういう小説を読みまくっていたので、悪役令嬢に転生したと思いましたが、実際はストーリーに関わらないただの女子生徒Aでした。 絶望した私は地味に生きることを決意しましたが、なぜか攻略対象の王子様や悪役令嬢、更にヒロインにまで溺愛される羽目に。 しかも、私が聖女であることも判明し、国を揺るがす一大事に。果たして、私はモブらしく地味に生きていけるのでしょうか!?

無一文で追放される悪女に転生したので特技を活かしてお金儲けを始めたら、聖女様と呼ばれるようになりました

結城芙由奈 
恋愛
スーパームーンの美しい夜。仕事帰り、トラックに撥ねらてしまった私。気づけば草の生えた地面の上に倒れていた。目の前に見える城に入れば、盛大なパーティーの真っ最中。目の前にある豪華な食事を口にしていると見知らぬ男性にいきなり名前を呼ばれて、次期王妃候補の資格を失ったことを聞かされた。理由も分からないまま、家に帰宅すると「お前のような恥さらしは今日限り、出ていけ」と追い出されてしまう。途方に暮れる私についてきてくれたのは、私の専属メイドと御者の青年。そこで私は2人を連れて新天地目指して旅立つことにした。無一文だけど大丈夫。私は前世の特技を活かしてお金を稼ぐことが出来るのだから―― ※ 他サイトでも投稿中

三人の美少女が僕を堕としにくる

猫カレーฅ^•ω•^ฅ
恋愛
人とできるだけ関わらずに静かに暮らしたい主人公高幡くん。 自らを「モブ」と呼んでいた。 そんなある日突然、隣のクラスの人気者の美少女五十嵐さんが 笑顔で手作り弁当を持ってきてくれた。 クラス中は大注目。 それにやきもちを妬いたクラスメイトの美少女二見さんが声をかけてきた。 その流れで、友達を含めて美少女2人と友達、その彼女候補の5人で カラオケに行くことになった。 そこで、クラスの美少女二見さんに告白される。 自分だけではどうしようもできず、相談に行った相手もまた美少女だった。 彼女たちを知っていくことでその意図は明らかになって行く。 そして、彼女たちと仲良くなることでさらに事件に巻き込まれていく。 彼の教育テレビで得た知識と経験で乗り越えていく。 ハイスペックなのに、目立ちたくない彼には秘密があった。 彼の秘密が三人のヒロインとの恋の行方のカギを握っていた。 ■登場人物 高幡流星(たかはたりゅうせい)ある「欠陥」を抱えた高校生。 五十嵐天乃(いがらしあまの)学校の三大美少女の一人。流星の姉。 二見天使(ふたみてんし)学校の三大美少女の一人。ある秘密を持つ同級生。 伊万里姫香(いまりひめか)学校の三大美少女の一人。流星の過去を知る唯一の人。 本村貴行(もとむらたかゆき)イケメン超身長。心もイケメン。流星の友達。 鏡日葵(かがみひまり)最強美少女。無敵。 毎日朝6時更新予定です。

【完結】冷酷眼鏡とウワサされる副騎士団長様が、一直線に溺愛してきますっ!

楠結衣
恋愛
触ると人の心の声が聞こえてしまう聖女リリアンは、冷酷と噂の副騎士団長のアルバート様に触ってしまう。 (リリアン嬢、かわいい……。耳も小さくて、かわいい。リリアン嬢の耳、舐めたら甘そうだな……いや寧ろ齧りたい……) 遠くで見かけるだけだったアルバート様の思わぬ声にリリアンは激しく動揺してしまう。きっと聞き間違えだったと結論付けた筈が、聖女の試験で必須な魔物についてアルバート様から勉強を教わることに──! (かわいい、好きです、愛してます) (誰にも見せたくない。執務室から出さなくてもいいですよね?) 二人きりの勉強会。アルバート様に触らないように気をつけているのに、リリアンのうっかりで毎回触れられてしまう。甘すぎる声にリリアンのドキドキが止まらない! ところが、ある日、リリアンはアルバート様の声にうっかり反応してしまう。 (まさか。もしかして、心の声が聞こえている?) リリアンの秘密を知ったアルバート様はどうなる? 二人の恋の結末はどうなっちゃうの?! 心の声が聞こえる聖女リリアンと変態あまあまな声がダダ漏れなアルバート様の、甘すぎるハッピーエンドラブストーリー。 ✳︎表紙イラストは、さらさらしるな。様の作品です。 ✳︎小説家になろうにも投稿しています♪

処理中です...