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王立学園編~後編
37.魔法大会③
しおりを挟む第一回戦の最終戦が終了したようだ。
今から第二回戦が始まる。
「よし!」
自分に気合いを入れ、場内で名前を呼ばれるのを待つ。
第二回戦での相手は、一回戦の初戦で見た剣に炎を纏う騎士科の2年生の男子生徒だ。
両者の名前が呼ばれ、闘技場の中に入る。
「今から第二回戦を開始する。両者、前に」
両者が位置に着いたのを確認し、試合開始の笛が鳴った。
相手はすぐに持ち込んでいた剣に炎を纏う。
私もアイテムボックスから槍を出して、光エネルギーを纏わせた。
ちなみにアイテムボックスから取り出している武器は、全て祖父母に用意してもらった。
グレイとの修行期間中に祖父母に会いに行き、大会時に使用出来そうな武器を選別しながら自分に合う物を探したのだ。
祖父母には感謝しかない。
また落ち着いたらお礼の連絡を入れよう。祖父から貰った魔石通話機で。
そんな事を考えながら、相手が剣で切りかかろうとする前に、槍の先から光エネルギーを凝縮した光球を放つ。
相手は上手に剣で跳ね返しながら避けていた。
うん、やっぱりこの人、強い。
私は対戦経験値なんてない。
グレイとの付け焼き刃の練習なんて、何年も訓練してきた人には到底敵わない。
だから、私の手段は先手必勝だ。
相手に次の攻撃をさせる間を与えず次の攻撃を繰り出す。
私は右手で持っている槍から光球を出しながら、空に向かって左手をかざす。
そして空から相手目掛けて電撃波を落とした。
目の前から来る攻撃と、空から同時に来る攻撃を避けきれず、相手はもろに電撃波をくらう。
持っていた剣を落とし、そのままその場に倒れた。
審判は相手の状態をみて、意識を失っていることを確認すると叫ぶ。
「勝利、エマ・ベルイヤ!」
今度も更なる攻撃魔法に呆然としていた見学者達だが、その審判の声に興奮状態で歓声が湧き上がった。
「何やら、違う闘技場から凄い歓声が聞こえてくるが、何処だ?」
その歓声が聴こえて不思議に思った第1王子アステルは、傍に控えていた護衛騎士に尋ねた。
「他の闘技場の事はまだ報告が入っておりませんが、調べて参りましょうか?」
「……いや、まぁいい。どうせ後で分かる事だ」
そう言って、次の自分の出番を待つ。
アステルの属性は、光だ。
主に光のエネルギーを白い矢に変えて攻撃するのを得意としている。
光魔法と聖属性魔法の攻撃魔法は似ていることから、アリアと二人でよく訓練をしていた。
アリアも今頃、違う闘技場で頑張っているだろうと、アステルは想像しながら、フッと笑顔になる。
アステルは今回の大会で優勝した暁には、婚約者をアリアに決めて欲しいと陛下に願い出るつもりだった。
「あんな冷やかしで出てくるような女に関わりたくもない。どうせあの女は一回戦でボロボロにやられて負けている事だろう」
アリアと同じ聖属性を持つあの女は、入園当初より何かとアリアに嫌がらせをしていると聞いている。
証拠もないのに決めつけるなと、前にグレイやアストナ先生から指摘され、確かにあの女が嫌がらせをした証拠がない為、一方的に決めつける事はやめたが、それでも疑わしい事に変わりは無い。
よりによってその女がアリアと共に僕の婚約者候補に上がるなど、あってはならない事だ。
強く陛下に進言したが、陛下は聞き入れては下さらなかった。
このまま、万が一アリアが聖女の条件を満たせない場合、高位貴族であるあの女の家を後ろ盾とするために、あの女が婚約者に決まってしまう。
そう考えると居ても立っても居られなかった。
そんな時に、この大会の事を思い出したのだ。
だから何がなんでもこの大会で優勝し、陛下にアリアの事を願い出る。
そうアステルは決意していた。
奇しくもアステルとエマの願い事がほぼ同じであるとは知らないエマは、着々と第三回戦まで勝ち上がっていた。
「エマ! お疲れ様! こんなに強いだなんて、本当に信じられないわ! 第三回戦勝利、おめでとう!」
セリーヌが駆け付けて激励してくれる。
「おい、攻撃方法が単調だぞ。明日の試合はもっと工夫を凝らせ」
そしてグレイはダメ出しをしてきた。
「そこは、お疲れ様、でしょう? これでも初めての対戦だったのよ? 経験値のなさを痛感しているところよ。もう少し労わってほしいわね」
私がグレイに文句を言っていると、グレイは鼻を鳴らして言ってくる。
「ふん。三回戦ごときでこのザマじゃ、優勝には程遠いな」
そう言った後、念話で
『あとで対戦の見直しをするぞ。まだまだ訓練が必要だ』
と言ってくる。
(嘘でしょ!?)
念話でそう言ってグレイを見るが、グレイは当然とでも言う様な顔で見てきた。
「セリーヌ……あなたの優しさが身に染みるわ」
力ない笑顔でセリーヌに抱きついた。
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