【完結】運命の宝玉~悪役令嬢にはなりません~

らんか

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王立学園編~後編

36.魔法大会②

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「今のはどういう事だ?」
「あれは聖属性魔法? 光魔法にも見えたけど……」
「あの槍は、何処から出してきたんですの!?」
「あの巨大ゴーレムが一瞬で倒されるなんて!」
 
 E闘技場の会場はざわめいていた。
 
 それはそうだ。
 戦いに不慣れな令嬢が、ゴーレムで踏み潰されて一瞬で勝敗が決まると思っていた見学者達は、逆に令嬢がゴーレムを素早く倒し、術者をも瞬く間に戦闘不能にして一瞬で勝利を決めるとは思いもよらなかった。
 
 一向に収まらないざわめきで、なかなか次の対戦が始められない。
 
 審判たちが見学者達に注意を促し、少し興奮が収まった頃合いを見計らって、第三戦目が開始された。
 
 私は闘技場の場外に出て一息ついた所で、セリーヌに掴まった。
 
「エマ! さっきのはどういう事ですの!?」
 
 セリーヌは興奮状態が収まってないのか、いつもは大人しく、高位貴族令嬢然として品位を保った振る舞いをしているが、この時ばかりは取り乱しながら、私を揺さぶるように力強く両肩に手を置いて聞いてくる。
 
「せ、セリーヌ!? ちょっと落ち着いて?」
 
 私はセリーヌの横にいるグレイに助けを求めるように視線を向けたが、ニヤニヤしているばかりで全然助けてくれない。
 
 グレイにムカつきながらも、何とかセリーヌを宥める。
 
「ちゃんと説明するから! ね、落ち着いてセリーヌ」
 
 セリーヌはその言葉にようやく少し落ち着き、
「ちゃんと話してね」
 と、真剣な表情で私を見た。
 
 
「ごめんね、セリーヌ。今まで内緒にしてて。
 私、本当は聖属性だけでなくて、多属性持ちなの。まだ詳しくは話せない状態なんだけど、魔力もかなり人より多い。
 でも、これがバレたら色々と面倒だと思って内緒にしてたの。
 でも今回、不本意ながら第1王子の婚約者候補になってしまったから、もう力を隠す事はせず、この大会で優勝して、婚約者候補から外してもらおうと思って出場を決めたの」
 
 



 この大会で優勝すると、優勝者には賞金の他に色んな特典が付いてくる。
 その中に、陛下に1つだけ願い事を叶えてもらうというスペシャル特典が付いていた。
 明らかに非常識な願い事でない限り、陛下の権限で叶えてくれる。
 
 最初は優勝して、その願い事で、アリアの持つ宝玉を譲って貰おうかと考えたけど、他人の物を願い事で貰うというのは倫理に反するやり方だと却下される恐れが高い。
 だから、願い事は取り敢えず、強制力に抗う為に第1王子の婚約者候補から外してもらう事にした。
 
 そして、この後が本番だ。
 多分、この大会で色んな魔法を使いながら戦った私の属性や魔力を疑うだろう。
 
 そして、きっと魔力測定を実施されるはず。
 
 その時に本来の魔力と属性を明らかにし、女神様から受けた使命を陛下達に伝える。
 
 私の力を確認した陛下達なら、私のいう事を無碍に扱わずに信用してくれるかもしれない。
 
 そうすれば、アリアから合法的に宝玉を受け取る事が出来るはず。
 
 
 グレイと話し合って、そう決めたのだ。
 
 
「願い事を利用して婚約者候補から外してもらうの? 陛下はそれをお許しになられるかしら?」
 
 首を傾げながらもセリーヌは、この大会に参加する理由は納得してくれた。
 
「でもエマ! 今まで力を隠してたって言ったけれど、魔力測定の時にバレるのではないの!?」
 
 うん、そうだよね。
 不思議に思うよね。
 
「それはまだ話せないの。でも、時期が来たらそれもちゃんと話すから。それまでは私を信じて見守ってて欲しいの。ダメかな?」
 
 私はそう言いながら、ドキドキしてセリーヌの反応を伺う。
 
 セリーヌは暫く黙って考え込んでいたけど、ふいに顔を上げて隣りにいるグレイを見た。
 
「グレイ様は何もエマに聞かれないのですね。もしかしてエマの事、知ってましたの?」
 
 グレイは正直に頷いた。
 
 それを見てセリーヌは、はぁっと大きくため息を吐いた後、恨めしげに私とグレイを睨む。
 
「2人してわたくしを除け者にしていたのですね」
 
「! ごめんなさい! 事情があったの! 除け者にしたのではなくて、話せなくて!」
 
 必死になって、セリーヌに許しを乞う私に、
「もう……。仕方ないですわね……。話せるようになったらちゃんと話してくれると約束出来ますか?」
 と聞いてくる。
 
「もちろんよ!! 絶対に話すわ!」
 
 必死でそう言う私に、諦めたような視線を向けて
「分かりましたわ。エマを信じます」
 とセリーヌはそう言ってくれた。
 
「ありがとう! セリーヌ、大好きよ!」
 
 セリーヌに抱きついてお礼を言うと、グレイもセリーヌに告げる。
 
「悪かったな。でもお前、サッパリしてて、良い奴だと思うぞ」
 
 
「……それ、令嬢には褒め言葉になりませんわよ」
 
 そう言ってまたセリーヌはグレイを睨んでいた。
 
 
 
 
 セリーヌから一応お許しをもらい、再び闘技場内に戻った。
 
 私に向ける視線は、大会前とは雲泥の差だ。
 
 参加者達は一様に異物を見る様な目で私を見る。
 
 私は気にする事なく、トーナメント表を確認していた。
 もうすぐ一回戦の最終戦が始まる。
 その勝敗が決定すれば、二回戦目の開始となり、私の出番だ。
 
 参加者が多い為、本日は三回戦までで終了となり、四回戦からは明日に持ち越しとなる。
 
 まずは初日の三回戦まで、確実に勝利しなければ!
 
 そう固く決心した。
 
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