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王立学園編~前編

21.クラス分け

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 ここ王立学園は13歳の年から5年もの間、学生として学園に通う。
 魔力が15以上の者なら平民でも入園出来るが、魔力が高い者の殆どが貴族にて、ほぼ平民はいないのが現状だ。
 逆に貴族で魔力が14以下だと、王立学園には通えない為、今後の人生に大きく影響する。
 男なら、出世コースから外れる事は当たり前、女なら望ましい結婚が出来ないなど……。
 
 
 今年の新入生も平民が12名程いるが、殆どが貴族だ。
 クラス分けも、貴族位と魔力の大きさで組み分けされている。
 魔力、貴族位共に高いクラスを特Aクラスとなり、そこから順にA、B、Cの4クラスだ。
 もちろん攻略対象者は特Aクラスにいる。
 そして男爵令嬢と言えども、聖女候補であるヒロインも当然このクラスだ。
 
 そして……
 
 残念ながら……私も特Aクラスだ……。
 
 唯一の救いはグレイが一緒だということだろう。
 
「ん? そういえば、グレイって、どういう設定なの?」
 
「何だ? 設定とは」
 
 私の質問に、バカにしたような目で見るのはやめて欲しい。
 
 
「だって、グレイって貴族じゃないでしょ?」
 
「ああ、それな」
 
 納得したかのようにグレイが頷く。
 
 
「お前の爺さんに協力してもらった。
 隣国からの留学生として入園する」
 
 
「お祖父様に!?」
 
「ああ」
 
 
 なんて事。
 お祖父様なら、幻獣のグレイの頼み事ならすぐ聞くでしょうね。
 
 
「あれ? でも人間の姿に変えて会いに行ったのなら、ケット・シーだって分からないんじゃない? よく協力してくれたわね」
 
 
「目の前でケット・シーから人間の姿に変わったら、流石に信じるだろ?」
 
 
 グレイは自慢げにそう話す。
 
 うん、グレイ。
 大事な事を小出しに言うのはやめて。
 
 
「じゃ、自由に姿を変えられるの?」
 
「一応決まりはあるがな」
 
 そう言って、一緒に特Aクラスに入る。
 すると、視線が一気にグレイに集まった。
 
 
 
「誰? あの人。見たことない」
「でも、ステキな人だわ」
「どこのご令息なのかしら?」
 主にご令嬢方が頬を染めながら、ヒソヒソと話している。
 令息達は、見た事のない人物にやや警戒しているようだ。
 
 そんな視線をものともせず、グレイは後方席で空いているところに座り、私に視線で横に座れと指示する。
 
 私はグレイに、にっこりと微笑むと、グレイから離れた適当な席に座った。
 
 冗談じゃない。
 こんなに注目されているグレイの隣りに座る勇気など持ち合わせてはいない。
 
『おい。何故そこに座る?』
 
 グレイから念話が飛んできた。
 
『グレイが目立っているからよ』
 
『気にしなければいい』
 
『私は気にするの』
 
 そんな念話を続けていると、担任がやって来た。
 
 定番の自己紹介にて、第1王子の挨拶から始まり、各々の挨拶が続く。
 
「最後に隣国のティエス帝国からの留学生に自己紹介をしてもらおう」
 
 担任の言葉で、クラスのみんなの視線が一気にグレイに集まる。
 
 グレイは静かに立ち上がった。
 
「ティエス帝国から来ましたグレイ・フィリスです。父とこの国のベルイヤ前侯爵が懇意にしており、ベルイヤ前侯爵よりこちらの国の素晴らしさをよくお聞きしていたので、こちらの国で学びたく思い、やって来ました。どうぞよろしく」
 
 そう挨拶した後、優雅に一礼をする。
 
 その仕草にほぅっと令嬢達は惚けるように溜息を吐いた。
 
 
「幸いベルイヤ前侯爵の孫であるエマ・ベルイヤさんもこのクラスにいます。ベルイヤさん、フィリス君に色々手伝ってあげて下さいね」
 
 担任の言葉と同時に私に視線が向く。
 その視線は主に妬みと羨望、好奇の目。
 
 終わった。私の静かな学生生活。
 
「ベルイヤさん、よろしく」
 
 そう言ったグレイのいい笑顔に、思わず睨みそうになる私であった。
 
 
 
 
 
 
 入園式から数週間が経ち、新入生もようやく少し学園生活に慣れて来た頃────
 
 
「エマ。今日はようやく初めての魔法学の授業ですわね。ドキドキしますわ」
 
 以前お茶会で友達になったセリーヌが話しかけてきた。
 
 セリーヌは魔力21で、魔法は水属性なのだそうだ。
 もちろん特Aクラスにいる。
 入園式の時は、ヒロインや攻略対象者、そしてグレイに気を取られていてセリーヌがいた事に全く気付いていなかった。
 セリーヌから話しかけてくれたので、本当に有難い。
 その後は一緒に行動してくれるので、グレイの事も自然に受け入れてくれる。
 今ではセリーヌとグレイの3人でよく行動していた。
 
「初めての魔法学は、まだ属性に関係なく魔法の一般知識なんでしょ? 一般魔法学の先生は誰なのかしら?」
 
 私の質問に、セリーヌは目を輝かして言ってくる。
 
「アストナ先生らしいですわよ! あの方、大人の魅力があって、とても素敵ですわよね」
 
 なるほど。
 さっきのドキドキ発言は、そういう意味なのね。
 
「セリーヌはアストナ先生が気に入っているのね」
 
「やだ! そういうんじゃないですわよ!? あくまで先生として尊敬しているだけですわ!」
 
 真っ赤な顔で私の言葉に過剰反応を示すセリーヌが、とても分かりやすくて可愛い。
 
 
「はいはい、そういう事にしておきましょうね」
 
 
 笑いながらセリーヌと会話を楽しんでいると、授業が始まる知らせの鐘がなった。
 
 
 教室に入ってきたアストナ先生は、クラス全体を見回した後、一瞬私に視線をとめる。
 軽く微笑んでから、みんなの前で挨拶をした。
 
「今日からこのクラスの一般魔法学を教えるジャック・アストナだ。専攻は聖属性。
 一般魔法学では魔法の基礎知識を学び、その後それぞれの属性魔法学を受ける流れとなる。
 このクラスの者は殆どが入園前に事前学習を行なってきたと思うが、もう一度振り返りながら、しっかりとした基礎知識を身に付けてほしい」
 
 そう言ってまた、私に視線をよこす。
 
 私も小さく会釈をして応じた。
 
 ヒロインはアストナ先生に対してまだ興味を持ってない様子。
 強制力が働いて、今後アストナ先生はヒロインに惹かれていくのだろうか。

 出来ればアストナ先生にはヒロインと関わらずに、今のままのアストナ先生でいて欲しいな……。


 私は、一抹の不安を感じながら授業を受けていた。
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