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誕生~幼少期
5.領地③
しおりを挟む採掘現場では、魔法で周りや道を地固めしながら、少しづつ採掘場所の硬い土を砂状に魔法で変えていきながら、鉱物を傷つけることなく掘り出している。
ここで勤めている人は全員が土魔法が使える人達だそうだ。土魔法でも砂に変えられないものが鉱石なので、とても分かりやすく見つけやすい。
魔力は使うが、体力はそれほど使わずに採掘出来るといった、何だか私が想像していた過酷な採掘現場とは程遠い穏やかな現場だった。
祖父が現場で色々と作業場の人や管理者の人と仕事の話をしている間、私はブラブラと採掘場の入口の横にある近くの森を散歩していた。
「う~ん、マイナスイオンって、こんな感じかなぁ?」
前世で、ネットの中でしか知らないマイナスイオンの森林浴を想像しながら清々しい空気を吸う。
『マイナスイオンって、何なのニャ』
その時、突然何処からともなく声がしてびっくりした。
慌てて周りを見回すと、木の枝に何かがいる。
「猫?」
それは猫のような生き物で、前世でいうペルシャ猫のようだった。
『違う。ケット・シーだニャ』
猫が喋った。
驚いて、口が開いたままその猫を見つめていると、ケット・シーは呆れた様子で話しかけてきた。
『全く。ラケシス様から言われて様子を見に来たら、何かアホっぽい娘だニャ』
は、はぁ!?
なに、この猫! むちゃくちゃ失礼なんですけど!
『まぁいい。ラケシス様からの伝言、お前に伝えるニャ』
ケット・シーはそう言って、自分の首輪に付いている宝石を前足でこする。
すると、目の前に透明な1人の女性が現れた。
いわゆる前世のホログラフィーだ。
『初めまして。私はこの世界を司る女神ラケシスよ。
予め撮った映像から挨拶することを許してね。
わたくしは女神ディオーネ様から貴女を託されて、この世界に転生させたの』
女神ラケシスは、そう語り出した。
『恵美。この世界ではエマね。
ディオーネ様から貴女を託されて、私は貴女に素敵な人生を歩めるような、そんな運命の魂を用意していたの』
そう語るラケシス様は、次第に言いにくそうに私の顔をチラチラ見る。
これって、ホログラフィーなんだよね?
なんでかチラチラ見られてる気がするのは気のせいなのかしら?
『でね、怒らないで聞いて欲しいんだけど……
ちょっとした手違いでね、貴女の霊魂は本来入るはずだった魂とは違って、別の魂に入ってしまいました』
そう言ってラケシス様は、頭を抱える。
『だってね! 本当はこの世界の主人公の女の子の魂を用意してたのよ! ディオーネ様にも大切な霊魂だから頼みましたよって言われたから!
でも丁度、わたくしの千年に一度の低迷期の日に、よりによって悪役令嬢の魂に入れようと思っていた子の霊魂が届いちゃって!
とことん落ち込んでいるわたくしに、その子が無理やり主人公の魂に入れろって迫ってきたのよ~!』
え~っと、ちょっと待って?
さっぱり分からないんだけど、さっきから主人公とか悪役令嬢とか、何なの?
『ああ、それね、この世界は日本のある小説をなぞって作られた世界なの。わたくし、その小説にハマっちゃって。丁度、前の世界が壊れたし、新しい世界を作らなきゃって思っていたから、その世界観でいいかな~って』
はぁ~っ!?
そんな感じで世界を作っちゃうわけ?
それで、前の世界は壊れたっていう不穏な単語は何なの!?
それに主人公と悪役令嬢の話は何処に行ったのよ!
『もう、そんなにいっぱい質問しないでよ。ちゃんと説明するから。
あ、でも壊れた前の世界の事は言えないからね』
そう返答するラケシス様に疑惑の目を向ける。
「私、まだ何にも言ってませんけど」
そう言う私になんて事のないようにラケシス様は言う。
『あぁ、わたくしには貴女の思っている事が伝わってくるのよ』
さっき、予め撮った映像からの挨拶で許してねとか言ってたけど、絶対嘘だよね。
『予め撮った映像です』
「絶対違うでしょ!」
そのやり取りを見ていたケット・シーがため息をついて、ラケシス様に言った。
『ラケシス様、諦めるのニャ。もうバレてるのニャ』
ケット・シーから言われて、ラケシス様は、ホログラフィーを解いて、姿を現した。
「ちゃんと出てこれるんじゃないですか」
そう言った私に、ラケシス様は拗ねたように言う。
『だって、直接話したら絶対怒る内容だから……』
もう、何となく察しはついた。
「この世界は、日本のある小説をなぞって作られていて、主人公の女の子の魂に入る予定だったのに、違う子がその魂に入っちゃって、私はその悪役令嬢? の魂に入ったって事ですか?」
私がそう言うと、ラケシス様は目を丸くして頷いた。
『そう! よく分かったわね! 本来入る魂が入れ替わっちゃって、困ってるのよ! でも、一旦入った魂は霊魂と強く結びついてるから、もう引き剥がせないし、でもエマを悪役令嬢の運命に沿わせると、18歳で処刑される運命にあるのよね~』
はぁ~!?
処刑~!?
18歳って言ったら、私が前世で死んだ歳。
また18歳で死ぬって事!?
「どういう事ですか!? ちゃんと説明して下さい!」
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