【完結】運命の宝玉~悪役令嬢にはなりません~

らんか

文字の大きさ
上 下
6 / 66
誕生~幼少期

5.領地③

しおりを挟む
 
 採掘現場では、魔法で周りや道を地固めしながら、少しづつ採掘場所の硬い土を砂状に魔法で変えていきながら、鉱物を傷つけることなく掘り出している。
 ここで勤めている人は全員が土魔法が使える人達だそうだ。土魔法でも砂に変えられないものが鉱石なので、とても分かりやすく見つけやすい。
 魔力は使うが、体力はそれほど使わずに採掘出来るといった、何だか私が想像していた過酷な採掘現場とは程遠い穏やかな現場だった。
 
 
 
 祖父が現場で色々と作業場の人や管理者の人と仕事の話をしている間、私はブラブラと採掘場の入口の横にある近くの森を散歩していた。
 
 
 
「う~ん、マイナスイオンって、こんな感じかなぁ?」
 
 前世で、ネットの中でしか知らないマイナスイオンの森林浴を想像しながら清々しい空気を吸う。
 
 
『マイナスイオンって、何なのニャ』
 
 その時、突然何処からともなく声がしてびっくりした。
 慌てて周りを見回すと、木の枝に何かがいる。
 
「猫?」
 
 それは猫のような生き物で、前世でいうペルシャ猫のようだった。
 
『違う。ケット・シーだニャ』
 
 猫が喋った。
 
 驚いて、口が開いたままその猫を見つめていると、ケット・シーは呆れた様子で話しかけてきた。
 
『全く。ラケシス様から言われて様子を見に来たら、何かアホっぽい娘だニャ』
 
 は、はぁ!?
 なに、この猫! むちゃくちゃ失礼なんですけど!
 
『まぁいい。ラケシス様からの伝言、お前に伝えるニャ』
 
 ケット・シーはそう言って、自分の首輪に付いている宝石を前足でこする。
 すると、目の前に透明な1人の女性が現れた。
 いわゆる前世のホログラフィーだ。
 
『初めまして。私はこの世界を司る女神ラケシスよ。
 予め撮った映像から挨拶することを許してね。
 
 わたくしは女神ディオーネ様から貴女を託されて、この世界に転生させたの』
 
 
 女神ラケシスは、そう語り出した。
 
 
『恵美。この世界ではエマね。
 ディオーネ様から貴女を託されて、私は貴女に素敵な人生を歩めるような、そんな運命の魂を用意していたの』
 
 そう語るラケシス様は、次第に言いにくそうに私の顔をチラチラ見る。
 これって、ホログラフィーなんだよね?
 なんでかチラチラ見られてる気がするのは気のせいなのかしら?
 
『でね、怒らないで聞いて欲しいんだけど……
 ちょっとした手違いでね、貴女の霊魂は本来入るはずだった魂とは違って、別の魂に入ってしまいました』
 
 そう言ってラケシス様は、頭を抱える。
 
『だってね! 本当はこの世界の主人公の女の子の魂を用意してたのよ! ディオーネ様にも大切な霊魂だから頼みましたよって言われたから!
 でも丁度、わたくしの千年に一度の低迷期の日に、よりによって悪役令嬢の魂に入れようと思っていた子の霊魂が届いちゃって!
 とことん落ち込んでいるわたくしに、その子が無理やり主人公の魂に入れろって迫ってきたのよ~!』
 
 
 え~っと、ちょっと待って?
 さっぱり分からないんだけど、さっきから主人公とか悪役令嬢とか、何なの?
 
『ああ、それね、この世界は日本のある小説をなぞって作られた世界なの。わたくし、その小説にハマっちゃって。丁度、前の世界が壊れたし、新しい世界を作らなきゃって思っていたから、その世界観でいいかな~って』
 
 
 はぁ~っ!?
 そんな感じで世界を作っちゃうわけ?
 それで、前の世界は壊れたっていう不穏な単語は何なの!?
 それに主人公と悪役令嬢の話は何処に行ったのよ!
 
 
『もう、そんなにいっぱい質問しないでよ。ちゃんと説明するから。
 あ、でも壊れた前の世界の事は言えないからね』
 
 
 そう返答するラケシス様に疑惑の目を向ける。
 
「私、まだ何にも言ってませんけど」
 
 そう言う私になんて事のないようにラケシス様は言う。
 
『あぁ、わたくしには貴女の思っている事が伝わってくるのよ』
 
 さっき、予め撮った映像からの挨拶で許してねとか言ってたけど、絶対嘘だよね。
 
『予め撮った映像です』
 
「絶対違うでしょ!」
 
 そのやり取りを見ていたケット・シーがため息をついて、ラケシス様に言った。
 
『ラケシス様、諦めるのニャ。もうバレてるのニャ』
 
 ケット・シーから言われて、ラケシス様は、ホログラフィーを解いて、姿を現した。
 
「ちゃんと出てこれるんじゃないですか」
 
 そう言った私に、ラケシス様は拗ねたように言う。
 
『だって、直接話したら絶対怒る内容だから……』
 
 
 もう、何となく察しはついた。
 
「この世界は、日本のある小説をなぞって作られていて、主人公の女の子の魂に入る予定だったのに、違う子がその魂に入っちゃって、私はその悪役令嬢? の魂に入ったって事ですか?」
 
 私がそう言うと、ラケシス様は目を丸くして頷いた。
 
『そう! よく分かったわね! 本来入る魂が入れ替わっちゃって、困ってるのよ! でも、一旦入った魂は霊魂と強く結びついてるから、もう引き剥がせないし、でもエマを悪役令嬢の運命に沿わせると、18歳で処刑される運命にあるのよね~』
 
 
 はぁ~!?
 処刑~!?
 18歳って言ったら、私が前世で死んだ歳。
 また18歳で死ぬって事!?
 
「どういう事ですか!? ちゃんと説明して下さい!」
しおりを挟む
感想 11

あなたにおすすめの小説

そろそろ前世は忘れませんか。旦那様?

氷雨そら
恋愛
 結婚式で私のベールをめくった瞬間、旦那様は固まった。たぶん、旦那様は記憶を取り戻してしまったのだ。前世の私の名前を呼んでしまったのがその証拠。  そしておそらく旦那様は理解した。  私が前世にこっぴどく裏切った旦那様の幼馴染だってこと。  ――――でも、それだって理由はある。  前世、旦那様は15歳のあの日、魔力の才能を開花した。そして私が開花したのは、相手の魔力を奪う魔眼だった。  しかも、その魔眼を今世まで持ち越しで受け継いでしまっている。 「どれだけ俺を弄んだら気が済むの」とか「悪い女」という癖に、旦那様は私を離してくれない。  そして二人で眠った次の朝から、なぜかかつての幼馴染のように、冷酷だった旦那様は豹変した。私を溺愛する人間へと。  お願い旦那様。もう前世のことは忘れてください!  かつての幼馴染は、今度こそ絶対幸せになる。そんな幼馴染推しによる幼馴染推しのための物語。  小説家になろうにも掲載しています。

〈完結〉毒を飲めと言われたので飲みました。

ごろごろみかん。
恋愛
王妃シャリゼは、稀代の毒婦、と呼ばれている。 国中から批判された嫌われ者の王妃が、やっと処刑された。 悪は倒れ、国には平和が戻る……はずだった。

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

お兄様、冷血貴公子じゃなかったんですか?~7歳から始める第二の聖女人生~

みつまめ つぼみ
ファンタジー
 17歳で偽りの聖女として処刑された記憶を持つ7歳の女の子が、今度こそ世界を救うためにエルメーテ公爵家に引き取られて人生をやり直します。  記憶では冷血貴公子と呼ばれていた公爵令息は、義妹である主人公一筋。  そんな義兄に戸惑いながらも甘える日々。 「お兄様? シスコンもほどほどにしてくださいね?」  恋愛ポンコツと冷血貴公子の、コミカルでシリアスな救世物語開幕!

踏み台(王女)にも事情はある

mios
恋愛
戒律の厳しい修道院に王女が送られた。 聖女ビアンカに魔物をけしかけた罪で投獄され、処刑を免れた結果のことだ。 王女が居なくなって平和になった筈、なのだがそれから何故か原因不明の不調が蔓延し始めて……原因究明の為、王女の元婚約者が調査に乗り出した。

神のいとし子は追放された私でした〜異母妹を選んだ王太子様、今のお気持ちは如何ですか?〜

星里有乃
恋愛
「アメリアお姉様は、私達の幸せを考えて、自ら身を引いてくださいました」 「オレは……王太子としてではなく、一人の男としてアメリアの妹、聖女レティアへの真実の愛に目覚めたのだ!」 (レティアったら、何を血迷っているの……だって貴女本当は、霊感なんてこれっぽっちも無いじゃない!)  美貌の聖女レティアとは対照的に、とにかく目立たない姉のアメリア。しかし、地味に装っているアメリアこそが、この国の神のいとし子なのだが、悪魔と契約した妹レティアはついに姉を追放してしまう。  やがて、神のいとし子の祈りが届かなくなった国は災いが増え、聖女の力を隠さなくなったアメリアに救いの手を求めるが……。 * 2023年01月15日、連載完結しました。 * ヒロインアメリアの相手役が第1章は精霊ラルド、第2章からは隣国の王子アッシュに切り替わります。最終章に該当する黄昏の章で、それぞれの関係性を決着させています。お読みくださった読者様、ありがとうございました! * 初期投稿ではショートショート作品の予定で始まった本作ですが、途中から長編版に路線を変更して完結させました。 * この作品は小説家になろうさんとアルファポリスさんに投稿しております。 * ブクマ、感想、ありがとうございます。

大好きだった旦那様に離縁され家を追い出されましたが、騎士団長様に拾われ溺愛されました

Karamimi
恋愛
2年前に両親を亡くしたスカーレットは、1年前幼馴染で3つ年上のデビッドと結婚した。両親が亡くなった時もずっと寄り添ってくれていたデビッドの為に、毎日家事や仕事をこなすスカーレット。 そんな中迎えた結婚1年記念の日。この日はデビッドの為に、沢山のご馳走を作って待っていた。そしていつもの様に帰ってくるデビッド。でもデビッドの隣には、美しい女性の姿が。 「俺は彼女の事を心から愛している。悪いがスカーレット、どうか俺と離縁して欲しい。そして今すぐ、この家から出て行ってくれるか?」 そうスカーレットに言い放ったのだ。何とか考え直して欲しいと訴えたが、全く聞く耳を持たないデビッド。それどころか、スカーレットに数々の暴言を吐き、ついにはスカーレットの荷物と共に、彼女を追い出してしまった。 荷物を持ち、泣きながら街を歩くスカーレットに声をかけて来たのは、この街の騎士団長だ。一旦騎士団長の家に保護してもらったスカーレットは、さっき起こった出来事を騎士団長に話した。 「なんてひどい男だ!とにかく落ち着くまで、ここにいるといい」 行く当てもないスカーレットは結局騎士団長の家にお世話になる事に ※他サイトにも投稿しています よろしくお願いします

【完結】聖女にはなりません。平凡に生きます!

暮田呉子
ファンタジー
この世界で、ただ平凡に、自由に、人生を謳歌したい! 政略結婚から三年──。夫に見向きもされず、屋敷の中で虐げられてきたマリアーナは夫の子を身籠ったという女性に水を掛けられて前世を思い出す。そうだ、前世は慎ましくも充実した人生を送った。それなら現世も平凡で幸せな人生を送ろう、と強く決意するのだった。

処理中です...