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誕生~幼少期
3.領地①
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ベルイヤ侯爵領は、とても広大で緑豊かな土地だった。領地に栄えている町も活気に溢れ、領民達は祖父母をとても尊敬し慕っている。
しかし唯一の息子が、ほぼ領地に寄り付かない状態で、王都に特別な官職もないのに王都に居続けている事だけが領民達にとっての不満であった。
領地に着いてから3日目。
弟と私を連れて領地の町に行った両親は、そんな領民の目を気にする事もなく、行く先々で横柄な態度をとっていた。
7歳の弟にとっては、それが普通の領民への対応だと認識するのに時間はかからなかったようだ。
「父様、ここは何もありません。つまらないです。早く王都に戻りましょう」
弟のエリオットが領民の店を見回しながら大声でそう言って、領民たちがその弟を白い目でみている。
相変わらず周りが見えていない両親は、エリオットのその言葉はすぐに同意した。
「ああ、昔からここは何の面白みもない所だった。やはり領地は来る必要があまりないな。一刻も早く王都に戻ろう」
「それがいいですわ。わたくし、お義父様やお義母様と一緒に過ごすだけで息が詰まりそうなんですもの。ここの空気はわたくし達には合わないようですわ。早く王都に戻りましょう」
一緒に領地の町を見回っていた私は、その両親と弟の行為が心底恥ずかしくて、父母や弟が馬車に乗り込むのを確認した後、領民達に精一杯の謝罪を込めて頭を下げた。
そうして、領地の屋敷に戻ってきた父母は、その事を夕食時に祖父母に申し出た。
「父上、母上。私達はそろそろ王都に戻ろうかと思います。領地の視察も一通り済んだと思いますので」
そう言った父に、祖父は眼光鋭く父を見る。
「領地の視察が一通り済んだだと?」
祖父の言葉にエリオットは平然とした様子で言う。
「お祖父様。ここの領地は見るものが少なくてつまりません。僕は早く王都に帰りたいのです」
堂々と祖父にそう言うエリオットを、母は頼もしいものを見る様な目で見ている。
すごいな。
祖父の、あの今にも怒りそうな雰囲気を、ものともしないあの態度は逆に尊敬するわ。
私はそんな事を考えながら、第三者目線で見ていた。
「エマ。エマはどうだ? ここの領地はつまらんか?」
祖父が私にいきなり話を振ってきたので慌てたが、平然を装いながら答える。
「いいえ。私はとても楽しいです。ここはとても緑豊かで、領民達もみんな楽しそうに暮らしています。ここの鉱山から採れる鉱物にも、とても興味があります」
私の返答に、父母や弟は不満げに睨んでくる。
大方、余計な事は言うなと怒鳴りたいところだろうが、祖父母の手前、我慢しているのがありありと分かるような態度だった。
「ほぅ、エマはここの暮らしが気に入ったか」
祖父は満足気に答える。
父母と弟は不満そうだが気にしない。
「はい。もう王都に帰るのは、とても残念でなりません」
本心からの言葉。
祖父母は優しく、王都にいるよりもとても充実した生活が送れている領地生活が、もっと続けばいいと私は思っていた。
ここの領地は鉱山を有している。
そこからは、希少なブルーダイヤが採れる。他の普通のダイヤモンドも取れるが、その中でごく稀に採れるブルーダイヤモンドは、夜空を閉じ込めたような美しさを放っている。
ここで過去に採れたブルーダイヤで、1番大きな物は王妃様に献上していたが、祖母もそれに匹敵するくらいの大きなブルーダイヤを所持している。
母が羨ましそうにその宝石のついたネックレスを見ており、虎視眈々と狙っているのにも気付いているが、祖母はそんな母に渡すつもりは無さそうだ。
もちろん、鉱山ばかりに頼っていることはなく、他にも領民の生活を支えられるような事業も展開している。
その為ここの領地はすごく潤っており、そのおかげで私達が王都に住んでいて、父が何の官職にも付いていなくても我が家は優雅に過ごせるのだ。
そんな領地経営をしている祖父母は、純粋に尊敬出来る。
前世、病院のベッドの住人であった私にとって、ここでの暮らしはまさに理想であった。
「じゃあ、エマだけここに残るか?」
その祖父の提案に、
「それは素敵だわ! エマ、私達と一緒に暮らしましょう? ルイーズ、いいでしょう?」
と、祖母もその言葉に追随した。
「は? 何を言っているのです? 何故エマが領地に残るのですか?」
突然の申し出に父はびっくりしている。
ちなみに父の名前がルイーズである。
「だって、貴方達はこんな田舎嫌なんでしょう? でも、領地の事をよく知っている者が居ないことには、私達も安心して貴方達に領地の事を託す事は出来ないわ。
でもエマが領地の事をちゃんと勉強して知ってくれるなら、安心だもの」
そういう祖母に、母が噛み付くように言う。
「将来、この侯爵領を継ぐのは嫡男であるエリオットですわよ!」
「じゃあ、エリオット。ここで領地について勉強してみる? 幼い頃から領地に住んでいれば、ここの良さがとても分かるわ。ここの領地が潤っているからこそ、貴方達は優雅に王都で暮らせているのですよ?」
祖母の言葉に、母は怯み、弟は嫌な顔をする。
「エリオットはまだ幼い。母親から離して暮らすのは酷でしょう。
その点、エマはもう10歳だ。親と離れて領地について学ぶ事は、将来跡を継ぐ弟の為にもなるかもな」
何だその理屈は。
普通、貴族の令嬢は他家に嫁ぐから、娘に領地を学ばせても意味は無いと考えるのではないのか?
そう思ったけど、王都の暮らしより領地で暮らす方が何百倍も魅力に感じていた私は、もちろんそんな事言わない。
「はい、お父様。エリオットの将来の為に、私がここで領地について学んでおきますね」
私のその言葉に父母は満足し、弟はニヤニヤと馬鹿にしたような態度で私を見て笑っている。
祖父母はそんな家族と私を見て、改めて言った。
「それでは決まりだな。エマだけ残り、お前達は帰りなさい」
「そうね。エマの事は任せてちょうだいね。領地の事だけでなく、もちろん侯爵令嬢として恥ずかしくないように色んな事を学べるよう、きちんとした講師も用意するわ」
そうして2日後、両親と弟だけ王都に戻っていった。
しかし唯一の息子が、ほぼ領地に寄り付かない状態で、王都に特別な官職もないのに王都に居続けている事だけが領民達にとっての不満であった。
領地に着いてから3日目。
弟と私を連れて領地の町に行った両親は、そんな領民の目を気にする事もなく、行く先々で横柄な態度をとっていた。
7歳の弟にとっては、それが普通の領民への対応だと認識するのに時間はかからなかったようだ。
「父様、ここは何もありません。つまらないです。早く王都に戻りましょう」
弟のエリオットが領民の店を見回しながら大声でそう言って、領民たちがその弟を白い目でみている。
相変わらず周りが見えていない両親は、エリオットのその言葉はすぐに同意した。
「ああ、昔からここは何の面白みもない所だった。やはり領地は来る必要があまりないな。一刻も早く王都に戻ろう」
「それがいいですわ。わたくし、お義父様やお義母様と一緒に過ごすだけで息が詰まりそうなんですもの。ここの空気はわたくし達には合わないようですわ。早く王都に戻りましょう」
一緒に領地の町を見回っていた私は、その両親と弟の行為が心底恥ずかしくて、父母や弟が馬車に乗り込むのを確認した後、領民達に精一杯の謝罪を込めて頭を下げた。
そうして、領地の屋敷に戻ってきた父母は、その事を夕食時に祖父母に申し出た。
「父上、母上。私達はそろそろ王都に戻ろうかと思います。領地の視察も一通り済んだと思いますので」
そう言った父に、祖父は眼光鋭く父を見る。
「領地の視察が一通り済んだだと?」
祖父の言葉にエリオットは平然とした様子で言う。
「お祖父様。ここの領地は見るものが少なくてつまりません。僕は早く王都に帰りたいのです」
堂々と祖父にそう言うエリオットを、母は頼もしいものを見る様な目で見ている。
すごいな。
祖父の、あの今にも怒りそうな雰囲気を、ものともしないあの態度は逆に尊敬するわ。
私はそんな事を考えながら、第三者目線で見ていた。
「エマ。エマはどうだ? ここの領地はつまらんか?」
祖父が私にいきなり話を振ってきたので慌てたが、平然を装いながら答える。
「いいえ。私はとても楽しいです。ここはとても緑豊かで、領民達もみんな楽しそうに暮らしています。ここの鉱山から採れる鉱物にも、とても興味があります」
私の返答に、父母や弟は不満げに睨んでくる。
大方、余計な事は言うなと怒鳴りたいところだろうが、祖父母の手前、我慢しているのがありありと分かるような態度だった。
「ほぅ、エマはここの暮らしが気に入ったか」
祖父は満足気に答える。
父母と弟は不満そうだが気にしない。
「はい。もう王都に帰るのは、とても残念でなりません」
本心からの言葉。
祖父母は優しく、王都にいるよりもとても充実した生活が送れている領地生活が、もっと続けばいいと私は思っていた。
ここの領地は鉱山を有している。
そこからは、希少なブルーダイヤが採れる。他の普通のダイヤモンドも取れるが、その中でごく稀に採れるブルーダイヤモンドは、夜空を閉じ込めたような美しさを放っている。
ここで過去に採れたブルーダイヤで、1番大きな物は王妃様に献上していたが、祖母もそれに匹敵するくらいの大きなブルーダイヤを所持している。
母が羨ましそうにその宝石のついたネックレスを見ており、虎視眈々と狙っているのにも気付いているが、祖母はそんな母に渡すつもりは無さそうだ。
もちろん、鉱山ばかりに頼っていることはなく、他にも領民の生活を支えられるような事業も展開している。
その為ここの領地はすごく潤っており、そのおかげで私達が王都に住んでいて、父が何の官職にも付いていなくても我が家は優雅に過ごせるのだ。
そんな領地経営をしている祖父母は、純粋に尊敬出来る。
前世、病院のベッドの住人であった私にとって、ここでの暮らしはまさに理想であった。
「じゃあ、エマだけここに残るか?」
その祖父の提案に、
「それは素敵だわ! エマ、私達と一緒に暮らしましょう? ルイーズ、いいでしょう?」
と、祖母もその言葉に追随した。
「は? 何を言っているのです? 何故エマが領地に残るのですか?」
突然の申し出に父はびっくりしている。
ちなみに父の名前がルイーズである。
「だって、貴方達はこんな田舎嫌なんでしょう? でも、領地の事をよく知っている者が居ないことには、私達も安心して貴方達に領地の事を託す事は出来ないわ。
でもエマが領地の事をちゃんと勉強して知ってくれるなら、安心だもの」
そういう祖母に、母が噛み付くように言う。
「将来、この侯爵領を継ぐのは嫡男であるエリオットですわよ!」
「じゃあ、エリオット。ここで領地について勉強してみる? 幼い頃から領地に住んでいれば、ここの良さがとても分かるわ。ここの領地が潤っているからこそ、貴方達は優雅に王都で暮らせているのですよ?」
祖母の言葉に、母は怯み、弟は嫌な顔をする。
「エリオットはまだ幼い。母親から離して暮らすのは酷でしょう。
その点、エマはもう10歳だ。親と離れて領地について学ぶ事は、将来跡を継ぐ弟の為にもなるかもな」
何だその理屈は。
普通、貴族の令嬢は他家に嫁ぐから、娘に領地を学ばせても意味は無いと考えるのではないのか?
そう思ったけど、王都の暮らしより領地で暮らす方が何百倍も魅力に感じていた私は、もちろんそんな事言わない。
「はい、お父様。エリオットの将来の為に、私がここで領地について学んでおきますね」
私のその言葉に父母は満足し、弟はニヤニヤと馬鹿にしたような態度で私を見て笑っている。
祖父母はそんな家族と私を見て、改めて言った。
「それでは決まりだな。エマだけ残り、お前達は帰りなさい」
「そうね。エマの事は任せてちょうだいね。領地の事だけでなく、もちろん侯爵令嬢として恥ずかしくないように色んな事を学べるよう、きちんとした講師も用意するわ」
そうして2日後、両親と弟だけ王都に戻っていった。
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