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『…………』
『…………』
何だろう? 遠くから何か聴こえる?
『目を覚ましなさい』
『目を覚ますのです。恵美』
ハッ!
意識が覚醒し、飛び起きるとそこは真っ白な何も無い空間が広がっていた。
周りをキョロキョロ見渡すと、先程から聴こえていた綺麗な声がまた私に話しかける。
『恵美、気づきましたか?』
その声は辺り一面から響いており、姿は見えない。しかしその声は優しげな女性の声で、心の奥に響いてくるような、とても安心出来るような声だった。
「ここは何処ですか? あなたは?」
私の声にその声は答える。
「ここは魂の通り道。あの世とこの世の狭間と言った方が分かりやすいかしら?」
その言葉に、何故か納得した。
ああ、私は死んだのね……
長い間、闘病生活で病院に入院していた。
母も私の闘病生活を長い間支えてくれていたが、過労で私より先に逝ってしまった。
他に家族のいなかった私は、ますます生きる気力を失っていたから……。
「やっと死ねたんだ……」
死んだ事を理解して出た言葉がそれだった。
お母さん、ごめんね。
やっとお母さんに謝りに来れたよ。
「……あなたは、神ですか? 神様なら、私の母に会わせて下さい。私、母に謝らないといけないんです!」
私を女手1つで育ててくれた母。
なのに、8歳の頃より難病を発病した私は、そのまま何年も入院を余儀なくされ、母は仕事と病院の往復で何の楽しみもなかったはず。
当時の私は、なんで自分だけがこんな目にって、ずいぶんと母に当たってしまった。
母が過労で亡くなって、その事にようやく気付いたんだ。
『……その貴女の母親からの願いです。貴女に健康な身体を持って、人生を楽しんで欲しい。皆が経験しているような、友達を作って、恋愛をして結婚をして……そんな人生を味わってほしいと』
「えっ?」
『貴女の母は、本来まだ生きられるはずだった。でもこちらの手違いで、死んでしまったので、違う世界ですぐに生き返らせる事が出来ると伝えました。
でも、その時に言ったのです。自分はいいから、その権利を貴女に譲ってくれと。娘は病気で長く生きられないからと』
「そんな!」
『貴女の母は、最期まで貴女のことを心配していたのよ』
涙が溢れてどうしようもなかった。
死んでからもずっと私のことを心配してくれていた母。
どうしたら、その恩に報いる事が出来るのだろう。
母に会いたい。
『では、母はどうなったしまったのですか? その権利を私に譲ったら、母は!?』
必死に聞く私に、その存在は優しく声を掛ける。
『大丈夫です。その尊い霊魂は神々のいる国へと導かれ、そこで霊魂をゆっくり休めてから、また次の転生の準備に入りますから』
次の転生。
良かった。お母さん、ちゃんと天国に行って、ゆっくり休めているんだね。
安心した私にまた、その存在は聞いてきた。
『恵美。貴女は貴女の母の代わりに、すぐに別の世界に転生出来ます。受け入れますか?』
母からの最後の贈り物。
無駄になんか出来ない。
「はい。受け入れます」
『では、その世界に行くのに希望はありますか? 健康な身体というのは、貴女の母からの希望なので、それ以外で』
その言葉に考える。
健康以外かぁ。なんだろ? 賢い頭脳とお金持ちとかかな?
「その世界で困らない程度の能力があればいいかな? あ、お金持ちの家の子供であればもっといいかも!」
ちょっと厚かましかったかしら?
不安になってきた私に、その存在は答える。
『分かりました。その世界で困らない程の能力を授けます。衣食住にも困らない家庭の子供に転生させましょう』
やった! 言ってみるもんだわ。
「ありがとうございます! えと、貴方様の事はどうお呼びしたら?」
『わたしは女神ディオーネ。貴女のこれからを見守っていますよ』
女神ディオーネ様がそう言った途端、私はまた意識が遠のいた。
『…………』
何だろう? 遠くから何か聴こえる?
『目を覚ましなさい』
『目を覚ますのです。恵美』
ハッ!
意識が覚醒し、飛び起きるとそこは真っ白な何も無い空間が広がっていた。
周りをキョロキョロ見渡すと、先程から聴こえていた綺麗な声がまた私に話しかける。
『恵美、気づきましたか?』
その声は辺り一面から響いており、姿は見えない。しかしその声は優しげな女性の声で、心の奥に響いてくるような、とても安心出来るような声だった。
「ここは何処ですか? あなたは?」
私の声にその声は答える。
「ここは魂の通り道。あの世とこの世の狭間と言った方が分かりやすいかしら?」
その言葉に、何故か納得した。
ああ、私は死んだのね……
長い間、闘病生活で病院に入院していた。
母も私の闘病生活を長い間支えてくれていたが、過労で私より先に逝ってしまった。
他に家族のいなかった私は、ますます生きる気力を失っていたから……。
「やっと死ねたんだ……」
死んだ事を理解して出た言葉がそれだった。
お母さん、ごめんね。
やっとお母さんに謝りに来れたよ。
「……あなたは、神ですか? 神様なら、私の母に会わせて下さい。私、母に謝らないといけないんです!」
私を女手1つで育ててくれた母。
なのに、8歳の頃より難病を発病した私は、そのまま何年も入院を余儀なくされ、母は仕事と病院の往復で何の楽しみもなかったはず。
当時の私は、なんで自分だけがこんな目にって、ずいぶんと母に当たってしまった。
母が過労で亡くなって、その事にようやく気付いたんだ。
『……その貴女の母親からの願いです。貴女に健康な身体を持って、人生を楽しんで欲しい。皆が経験しているような、友達を作って、恋愛をして結婚をして……そんな人生を味わってほしいと』
「えっ?」
『貴女の母は、本来まだ生きられるはずだった。でもこちらの手違いで、死んでしまったので、違う世界ですぐに生き返らせる事が出来ると伝えました。
でも、その時に言ったのです。自分はいいから、その権利を貴女に譲ってくれと。娘は病気で長く生きられないからと』
「そんな!」
『貴女の母は、最期まで貴女のことを心配していたのよ』
涙が溢れてどうしようもなかった。
死んでからもずっと私のことを心配してくれていた母。
どうしたら、その恩に報いる事が出来るのだろう。
母に会いたい。
『では、母はどうなったしまったのですか? その権利を私に譲ったら、母は!?』
必死に聞く私に、その存在は優しく声を掛ける。
『大丈夫です。その尊い霊魂は神々のいる国へと導かれ、そこで霊魂をゆっくり休めてから、また次の転生の準備に入りますから』
次の転生。
良かった。お母さん、ちゃんと天国に行って、ゆっくり休めているんだね。
安心した私にまた、その存在は聞いてきた。
『恵美。貴女は貴女の母の代わりに、すぐに別の世界に転生出来ます。受け入れますか?』
母からの最後の贈り物。
無駄になんか出来ない。
「はい。受け入れます」
『では、その世界に行くのに希望はありますか? 健康な身体というのは、貴女の母からの希望なので、それ以外で』
その言葉に考える。
健康以外かぁ。なんだろ? 賢い頭脳とお金持ちとかかな?
「その世界で困らない程度の能力があればいいかな? あ、お金持ちの家の子供であればもっといいかも!」
ちょっと厚かましかったかしら?
不安になってきた私に、その存在は答える。
『分かりました。その世界で困らない程の能力を授けます。衣食住にも困らない家庭の子供に転生させましょう』
やった! 言ってみるもんだわ。
「ありがとうございます! えと、貴方様の事はどうお呼びしたら?」
『わたしは女神ディオーネ。貴女のこれからを見守っていますよ』
女神ディオーネ様がそう言った途端、私はまた意識が遠のいた。
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