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第六章 ————の場合
一 ◯ ————【 12月31日 午後11時50分 】
しおりを挟む二〇一九年最後の日、大晦日。毎年この時期に白熱する恒例の歌合戦、白組の優勝で幕を下ろしたばかりで、人々はそれぞれ残り少ない今年の時間をゆっくりと過ごしていることだろう。
しかし今の自分にそんな団欒の時間は必要無いし、縁も無い。
一人自宅のパソコンの前に座り嘆息し、入れ直した二杯目のコーヒーを飲んだ。ごくりと喉が鳴る。もうこんな時間になっていたのか。計画は完成したが、少し熱くなりすぎていたようだ。
手を抜くわけにはいかなかった。ここで手を抜けば、それ即ち計画の失敗に値する。念には念をいれておくべきだ。そう思い椅子から立ち上がったその時、机の上に置いていた置き時計のアラームが部屋中に響いた。
「午前0時、か」
新年を告げる電子的なその音は、この物語が始まる合図を、俺に伝えているかのようであった。
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